トイレをバリアフリー化する方法や費用とは?介護保険の申請方法も解説!

トイレは介護する側にとってもされる側にとっても、自力でできるかどうかは重要な問題です。なるべく長い期間自力でトイレができるようになるには、トイレのバリアフリー工事が必要。今回はトイレをバリアフリーにする方法や介護保険の申請方法などについて解説していきます。

トイレをバリアフリー化する目的やリフォームポイントとは

住宅の中でもトイレは最もバリアフリー化すべき箇所です。さらには使う人が高齢者か車いす利用者かによっても工事の仕方が異なります。こちらではトイレをバリアフリー化する目的や業者の選び方などもご紹介していきます。

トイレをバリアフリー化する目的とは?

立ったり座ったりという動作が多いトイレは高齢者や体の不自由な方にとって、危険と隣り合わせの場所です。特に使用頻度が高い場所でもあるため、トイレをどうリフォームするかはポイントになります。

また介護する側にとっても、介護度を上げることなく健康寿命を延ばすことや生活の質(QOL)を維持することは、肉体的そして精神的負担を減らす一助になるでしょう。

このような意味でもトイレのバリアフリー工事は、介護の必要な高齢者や自分や家族の将来のために有効です。トイレのバリアフリー工事をすることで、本人や介護する家族にとってもストレスの少ない生活を目指しましょう。

高齢者か車いすかによってリフォームポイントが異なる

トイレを使用する人が高齢者か車いす利用者かによって、リフォーム内容が変わってきます。こちらは使用する人別にリフォームポイントを見ていきましょう。

使用者リフォームポイント
車いす利用者・出入り口の幅は80㎝以上
・出入り口の場所は便座の横か後ろ
・トイレスペースは1坪(180×180㎝)が理想
・車いすのままでも使用できる便座へ変える
車いす・高齢者
共通
・和式トイレは洋式トイレへ
・床の段差をなくする
・床材はクッション性のある素材を使用
・便器付近にL字手すりを設置
・ドアを引き戸に変更
・外からもカギを掛けられるようにする
・温水洗浄や温風乾燥機能付きの便座を採用

多少足腰が弱くても歩いてトイレに行ける高齢者に対して、車いす利用者はトイレスペース確保などの工事が必要となります。なるべく介助する人の手を煩わせることなく、車いすに乗ったまま排泄できるトイレならお互いにとってストレスが軽減するでしょう。

介護リフォームの経験が豊富な業者に依頼する

トイレのバリアフリー工事をはじめとする介護リフォームは、経験が豊富な業者を選ぶようにしましょう。なるべくなら介護と建築の知識を持つ「福祉住環境コーディネーター」が在籍している業者や、介護リフォームの実績が多い業者がおすすめ。

そのような業者は担当のケアマネジャーに紹介してもらうか、インターネットで実績や経験をチェックしたうえで選びましょう。特に予算が限られているような工事では予算内で出来るプランを提案してもらえるような優良業者を探す必要があります。

またトイレ全体をリフォームする場合、自宅のトイレがしばらくの間使えなくなります。仮設トイレを手配してもらうことになるのですが、仮設トイレのレンタルも行っている業者なら、介護リフォームに関する実績があると言えるのではないでしょうか。

実際に使う人に合わせてリフォームする

介護リフォームで重要なのは、実際に使う人に合わせたリフォームをするということ。普段の生活様式や動きなどを細かくチェックして、使う人に合った工事を進めましょう。

特に手すりの位置や高さなどは、使い勝手に大きく左右します。なるべくなら本人が実際に使うシチュエーションで、手すりの種類や高さ、位置などを決めましょう。

また今は杖を使って歩ける高齢者でも、いずれ車いすが必要になることも考えられます。近い将来のことも想像しながら、現在のトイレのバリアフリー工事を進める必要があります。

トイレをバリアフリー化する際の工事箇所や費用相場について

実際にトイレをバリアフリー化する際の相場費用はどの位になるのでしょうか?主な工事内容における費用をご紹介していきます。

便器をリフォームする場合

直接使う便器のリフォームは、トイレのバリアフリー化に最も有効です。和式から洋式への交換や便器のかさ上げ、車いす専用便器への変更について見ていきましょう。

和式から洋式へ

高齢者にとって、しゃがんで使う和式便器は足腰が弱くなるにしたがって利用自体が難しくなってしまいます。そこで洋式便器への交換が有効です。洋式なら腰掛けるだけで使え、使い勝手が格段に向上するためバリアフリーリフォームでは一般的です。

ただし床面に段差がある場合は、一度便器を取り外してから床を新設することになります。その際には床材の張り替えや壁紙交換工事などが発生するため、費用や日数がかかります。

工事内容費用相場
和式から洋式へ20万円~60万円

さらに昔からのくみ取り方式の和式便器だった場合は、便槽を撤去して浄化槽の新設、下水道への接続など設備工事や床下の工事が必要になります。そこで上記の金額からプラス10万円程度費用がアップすることを覚えておきましょう。

車いす専用便器へ変更

専用の車いすがあればそのまま用を足せる車いす専用便器への変更もおすすめです。同時にトイレスペースの拡張工事や手すり設置工事、引き戸変更工事も行うとより使いやすいトイレになります。

工事内容費用相場
車いす専用便器へ変更10万~30万円

洋式便座の設置・便座のかさ上げ

和式便器はそのままで、置くだけで洋式トイレのように座って用が足せる介護用品もおすすめです。こちらは製品を購入して設置するだけなので、工事費はほとんどかかりません。

工事内容費用相場
洋式便座の設置2万円~
便座のかさ上げ1万円~

さらに洋式トイレの便座の高さを変えて、使いやすい高さへかさ上げする方法もあります。

手すり・アームレストの取り付け

手すりやアームレストの取り付けは、比較的費用が掛からず効果的なリフォームです。特に手すりは高齢者や足腰の弱い方が体を支えるのに大切な役割を果たします。そこで用途に合わせた手すりの形を選ぶようにしましょう。

手すりの種類特徴
I型・L型手すりスペースが広く取れ、立ち座りが安定する
跳ね上げ手すり座った姿勢が安定し、跳ね上げれば邪魔にならない
前方アームレスト排泄時の姿勢が安定する
折り畳み式は介助の邪魔にならない

トイレ壁面に手すりを取り付けるバリアフリー工事で大切なのは、手すりに力を掛けても大丈夫なように壁の下地を補強することと、取り付けスペースを確認するということ。またトイレ横の空間に手すりを取り付ける場所があるかを事前に測っておくことも大切です。

工事内容費用相場
I型手すりの設置工事1万~3万円
L字手すりの設置工事2万~5万円

トイレ扉を引き戸へ変更

トイレの扉を開き戸から引き戸へ変更する工事もおすすめです。引き戸はトイレスペースを広く使えるほか、車いすでの出入りも楽なのが特徴。足腰の弱い方や杖を使っている方にとって、開き戸はとても不便で転倒する恐れもあります。

工事内容費用相場
開き戸から引き戸へ変更4万~10万円

トイレの扉交換工事の場合、ドアの交換だけで済む場合は約4万円ほどから加工です。ただしドア枠ごと交換となると、周囲の壁も一部壊す必要があるため10万円程度が相場となります。

床板の張り替え・段差解消

トイレ入り口に段差があると、少しの高さでもつまずいて転倒する危険があります。そのような段差を解消する工事は、敷居を取り除いて床面を平らにするという工程になります。同時に扉を交換する場合は10万円程度かかる場合があります。

工事内容費用相場
段差解消工事1万~10万円
クッションフロア張り替え工事2万~10万円
コルク張り替え工事5万~10万円

また床材を滑らない素材に張り替えるのも転倒防止には効果的。踏むとフカフカするクッションフロアや滑りにくいコルクへの張り替えがおすすめです。トイレのバリアフリー工事におすすめなのはこのような特徴を持つ床材です。

  • スリッパを履き替えなくても不潔感を感じない素材や色
  • 転倒してもけがをしにくい素材
  • 水やアンモニアに強い素材
  • 濡れていても滑りにくい素材

床材によっては一枚一枚手で張っていく材質もあるため、工事期間は種類によって異なります。

トイレスペースの拡張工事

車いすでトイレを使用したり、介助者が一緒に入ることを考えるとトイレスペースの拡張工事が有効です。こちらはトイレの種類ごとの内法寸法となりますので、スペースの拡張工事の参考にしてください。

トイレの種類内法寸法と特徴
標準的な洋式トイレ75×165㎝
介助者は便器正面には立てるが、側面方向には立てない
便器の前方と側面で
介助ができる洋式トイレ
120×165㎝
車いす利用の場合は、便器に移ったら車いすをトイレの外に出す必要がある
車いす対応トイレ165×165㎝
住宅のトイレとしては最大の広さ
重度の介護や車いす利用者にも使いやすい

一般的に便器前と便器の片側にそれぞれ1mほどのスペースを確保すると、介助の動作がスムーズに行えます。またトイレのみでスペースが取れない場合は洗面所や脱衣所と一緒にするという方法もあります。スペース拡張工事の費用相場はこちらです。

工事内容費用相場
スペース拡張工事15万円~35万円

ただし間取り自体を変更する際には建物の構造や隣接する部屋との兼ね合いによって費用が大きく異なります。そのためどの位の広さが必要で、どこまで広げられるかについては担当のケアマネジャーやリフォーム業者に相談することをおすすめします。

洗浄レバー・操作パネル・ペーパーホルダーを変更

洗浄レバーや操作パネルを変更するのもトイレのバリアフリー化工事の一つです。トイレを使った後に洗浄レバーが後方にあると、体の不自由な方や高齢者は振り返って操作するのが大変になります。そこで洗浄レバーや温水洗浄のリモコンを操作しやすい手元に持ってくる工事が有効。

工事内容費用相場
温水洗浄便座取付工事4万~10万円
緊急コールボタン設置工事5千~2万円
ペーパーホルダー交換

大きな文字のパネルや分かりやすい表示、手をかざすだけで水が流れる機能もおすすめです。またいざという時に安心な緊急コールボタンは、ワイヤレス式なら大掛かりな工事が必要ありません。

さらに予備のトイレットペーパーを自動でセットできるものや、力が弱くてもペーパーが楽に切れるペーパーホルダーもありますので、同じタイミングで交換してみてはいかがでしょうか?

介護保険を利用したバリアフリー化工事について

40歳になると誰でも支払うことになる介護保険では、介護リフォームに対する助成制度があります。バリアフリー工事をお得にするには、介護保険をぜひ利用しましょう。

対象となる条件・工事内容とは

介護保険の対象となるには、様々な条件を満たす必要があります。また対象となる工事内容も決まっていますので、事前に確認が必要です。

【対象者】

  • 被保険者が要支援または要介護1~5の認定を受けている
  • 被保険者が所有し居住している家を改修する場合
  • 福祉施設に入所しておらず、病院にも入院していないこと
  • 被保険者証に記されている住所であること

【対象工事】

  • 手すりの設置
  • 段差の解消
  • 滑り防止や移動の円滑化のための床材変更
  • 洋式便器への交換
  • 引き戸への交換

支給までの流れと支給額について

次に支給までの流れと支給額についてご説明していきます。介護保険による住宅改修費が支給されるには、以下のような流れで手続きが必要です。

  1. 自治体から要支援・要介護の認定を受ける
  2. トイレ改修についてケアマネジャーに相談する
  3. 申請書類を提出し、事前申請を行う
  4. 申請の結果が出てから工事を着工する
  5. 工事完了後、業者に工事費を全額支払う
  6. 必要書類を提出し、再度申請をする
  7. 改修費が振り込まれる

先ほどご説明した条件に当てはまった場合は、工事費用の上限を20万円としてその9割が支給されます。この制度は一度の工事だけでなく、改修費用の合計が20万円になるまで複数回にわたっての申請が可能です。

さらに本人が別の住居に引っ越しした場合や、要介護度が3段階上がった時にはさらに20万円が支給限度額としてプラスされます。

介護保険を利用する場合の注意点

介護保険を利用する場合、改修費はいったん業者に全額支払ってから手続きをして振り込まれます。つまり9割給付されるとはいえ、工事費を全額準備する必要があるのです。

また申請の際に必要な「住宅改修理由書」は、下記のようなプロが作成する必要があります。

  • 居宅介護支援事業者などに所属している介護支援専門員
  • 居宅介護支援事業者などに所属している作業療法士
  • 福祉住環境コーディネーター2級以上の有資格者

すなわち担当のケアマネジャーにお願いするか、福祉住環境コーディネーターがいる業者に依頼しなければなりません。

以上が介護保険制度を利用する場合の注意点となります。プロにお任せすべきところはお願いしながら、自分でもある程度勉強しておくとトラブルなく利用できるでしょう。

地方自治体の助成金制度を利用した住宅改修について

お住いの自治体によっては住宅改修の助成金制度が利用できることがあります。こちらは各市区町村によって条件や工事内容が異なります。

支給される条件や対象工事は?

ここでは各地方自治体の助成金制度の中で、条件として多かった項目を挙げていきます。

【支給条件の一例】

  • 介護保険の要介護・要支援の認定を受けている
  • 家族の年齢規定
  • 所得や納税額による制限

自治体の制度は介護保険に比べて支給条件が厳しいのが特徴です。特に納税額や所得などの制限があるのが多く見られます。また対象となる工事は以下のようなものがあります。

【対象となる工事の一例】

  • 手すりの設置
  • 段差の解消
  • トイレを和式から洋式へ変更
  • 床材の張り替え
  • 断熱改修工事
  • 居室の増改築

支給内容や介護保険との併用について

では地方自治体の助成金は介護保険とどのように異なるのでしょうか?介護保険制度では助成金の補助のみでしたが、自治体によっては融資や利子の補給といった形の制度があります。

またその限度額は介護保険の上限である20万円にかなり近い金額から、さらに多い金額まであります。種類によって介護保険と併用して使える制度もありますので、お得にトイレのバリアフリー工事を行いたいなら使わない手はありません。

自分の住んでいる自治体によっては、適用となる工事の範囲が広かったり、介護保険と併用できない場合があります。もし支給内容や適用になる工事が分からないという方は、まずケアマネジャーに相談してみてはいかがでしょうか。

現状や将来のことを考えてトイレをバリアフリー化しよう

トイレは毎日必ず使う場所で人間の尊厳に大きく関わる部分だからこそ、介護する人とされる人の両方にとって利用しやすくリフォームしたいものです。今回ご紹介したバリアフリーリ工事では、高齢者や車いす利用者のQOLを上げるだけでなく介護する側にとってもしやすくなります。

こうした住まいのバリアフリーリフォームは、祖父母や親といった今の高齢者はもちろん、自分たちの老後といった将来の高齢者のことも考えていく必要があります。トイレのバリアフリーリフォームは介護保険などを上手に活用しながら、使いやすく変えていきましょう。