キッチンをリフォームする目的の一つにバリアフリー化があります。そこでキッチンのバリアフリーに重要な5つのポイントと共に、費用の相場もご紹介。全ての人にとって快適なキッチンにする方法や、お得になる制度もありますので参考にしましょう。
キッチンをバリアフリーにする5つのポイントとは?
車いす利用者や長時間の立ち仕事を辛いと感じる人にとって、キッチンのバリアフリー化は必須です。そこでバリアフリー化できる部分と共に、使いやすいキッチンにするためのポイントを見ていきましょう。
使い勝手を考えたレイアウトを設計
高齢者や車いす利用者のみならず、キッチンを効率化すると使い勝手が良くなったり安全性が高まることが大いにあります。特に流し台やコンロ、冷蔵庫や食器棚のレイアウトは使い勝手や安全性を高める上でも特に重要。
さらに座った状態でも使いやすいようワークトップの足元がオープンになったシンクや、自動で昇降できる吊戸棚収納を導入すれば足腰の弱い方や不自由な方でも使いやすくなるでしょう。また上記のようなよく使う設備は、一カ所にまとめて最低限の動作で手が届くようにレイアウトするのが理想です。
特にバリアフリーを目的としたキッチンでは、このような寸法やレイアウトにすると効果的です。
車いす対応の場合 | 使いやすいサイズ |
調理台の高さ | 75~85㎝ |
座った時の目線の高さ | 110㎝前後 |
手が届く範囲 | 60㎝前後 |
シンクの深さ | 12~15㎝ |
キッチンの脇には炊飯器などを乗せて移動できるキャスター付きのワゴンなどもおすすめ。手元の作業が多いキッチンならではの目線や手が届く範囲に考慮したリフォームをすると、より使いやすくなるでしょう。
段差解消や滑りにくい床材にするなどの内装を変更
床材を滑りにく材質に変更したり、床の段差を解消することもキッチンのバリアフリー化におすすめです。特に足の筋肉が衰えた高齢者は足を上げる動作が難しくなるため、ちょっとした段差につまずいて転倒する恐れがあります。
そこで転倒の原因となる段差を解消したり、水にぬれても滑りにくい床材に張り替えることが重要に。さらにクッション性のある床材なら、万が一転倒してもケガをしにくく車いすでも走行しやすいというメリットがあります。
また壁紙は調理中のコンロの火が燃え移らないよう、防火性や難燃性の壁紙を選ぶと良いでしょう。油汚れや水撥ねに強く汚れがふき取りやすい材質なら、掃除がしやすいのでさらにおすすめです。
安全で使いやすい調理器具や給排水設備にする
安全性が高く使いやすい調理器具や給排水設備にすることもバリアフリー化に有効です。特に火災の危険が多いキッチンでは、火の消し忘れやうっかり燃え移るのを防ぐために安全装置の付いたコンロやIHクッキングヒーターを選びましょう。
また給排水設備では、水温の調整が簡単で操作しやすいレバーハンドルの水栓を選ぶと良いでしょう。手の力が弱い高齢者は、握って回す蛇口の操作が難しくなります。レバーの上下で水を出し入れできる混合水栓をベースとして、場合によってはボタン式の設備にすることも考えましょう。
調理時に手元が見える照明やヒートショック予防の暖房を設置
手元がしっかりと見えるように照明を明るくしたり、ヒートショックを予防するための暖房を設置するのもキッチンのバリアフリー化におすすめです。特に視力が悪く視界が狭くなりがちな高齢者にとって、包丁を使って食材を切る時には指先まで明るく照らす必要があります。
また室内に温度差があるとヒートショックの原因になります。秋口から冬場にかけて、暖かいリビングから寒いキッチンに移動すると血管が収縮して血圧が上昇します。その状態で再び暖かい場所に行くと、今度は血管が広がって血圧が急激に低下する原因に。
そのような血圧の乱高下により心筋梗塞や脳卒中が起こりやすくなる「ヒートショック現象」が発生すると言われています。特に高血圧や動脈硬化の持病が多い高齢者は、床暖房を設置したり暖房器具で室温を一定にすることを心掛けましょう。
火災やガス漏れを知らせる安全設備を取り付ける
万が一ガス漏れや火災が発生した時に、いち早く知らせてくれるガス漏れ検知器や火災報知器などの安全設備の設置がおすすめ。さらに消防署に直接通報してくれたり、自動で消火するスプリンクラー等の設備があればさらに安心です。
キッチンをバリアフリー化する工事の費用相場を解説!
ではキッチンをバリアフリーにリフォームするにはどの位の費用がかかるのでしょうか?工事箇所ごとに詳しく見ていきましょう。
バリアフリー対応のシステムキッチンへ変更
足元がオープンになっていて車いすでも使いやすいキッチンやリモコン操作で昇降する吊戸棚など、バリアフリー対応のシステムキッチンへ交換するのは、キッチンのバリアフリー化で最もポイントになります。
さらに腰が曲がって目線が下がりがちな高齢者向けに、ワークトップが低めのキッチンに変更したり、ガスコンロの火の消し忘れを防ぐためにIHクッキングヒーターに変えるのも有効です。
工事内容 | 費用相場 |
電動式吊戸棚に変更 | 40万~60万円 |
ガスコンロからIHクッキングヒーターへ変更 | 30万~40万円 |
バリアフリーキッチンへ変更 | 40万~80万円 |
電動で上下できる吊戸棚への変更工事は40万~60万円前後が相場、IHヒーターへの変更は30万~40万ほどとなります。またキッチン本体をバリアフリーキッチンへ変更する場合は40万~80万円ほど費用がかかります。
さらにスペースの関係やより使いやすいレイアウトにするために、キッチンの場所を変える工事も有効です。ただしキッチンの場所を変えるリフォームでは換気ダクトの位置や給排水管の場所を変更しなければなりません。したがって上記の金額からさらに付随工事にかかる費用がプラスされますのでご注意ください。
キッチン本体のリフォームでは、壁のクロスや床材を一部撤去する必要があります。そこで張り替えにかかる費用もご紹介しておきます。
工事内容 | 費用相場 |
壁クロス貼り工事 | 3,000円~(㎡当たり) |
床材張り工事 | 5,000円~(㎡当たり) |
壁のクロス貼り替え工事では1㎡当たり3,000円前後、床材の張り替え工事では使用する床材の種類にもよりますが5,000円程度が一般的です。
キッチンの段差を解消する
キッチンの段差を解消する工事では、床材を張り替えて下地を調整、再び新しい床材を張りなおす作業が必要です。
工事内容 | 費用相場 |
段差解消工事 | 20万~40万円 |
段差解消にかかる工事費用は20万~40万円が相場です。これは既存の床材を剥がして撤去・処分する費用がかかるため高額になります。
ただし廊下から入る建具の敷居段差が気になる程度なら、段差解消スロープを設置することで済む場合があります。こちらは数万円からリフォームが可能です。
キッチンの内装を変更
キッチンの床材を滑りにくいクッション性のある材質に変更したり、燃えにくい壁紙に張り替えるなどの内装工事にかかる費用はこちらです。
工事内容 | 費用相場 |
床材張り替え工事 | 10万~20万円 |
不燃認定壁紙張り替え工事 | 5万~8万円 |
床材の張り替え工事ではコルクやクッションフロアへの張り替え工事がおすすめで、10万~20万円ほどが相場です。壁紙の貼り替え工事は5万~8万円前後が相場となります。
床暖房の増設
キッチンでヒートショックを予防するには床暖房を設置したり暖房設備を設けるリフォームがおすすめです。床暖房には施工方法の違いから二種類に分けられます。それぞれの特徴はこちらです。
床暖房の種類 | 詳細 |
温水式 | 立ち上がりが早く長時間の仕様に向いている。 床下に配管を這わせる工事が必要となるため費用は高め。 |
電気式 | メンテナンスが容易で初期費用を抑えられる。 ただし長時間使用する時は低温やけどに注意する。 |
さらに既存の床材の上に床暖房を設置する重ね張り工法と、既存の床材を剥がして施工する張り替え工法の二種類があります。電気式の床暖房を設置する場合の、それぞれの工法ごとの費用相場はこちらです。
工事内容 | 費用相場 |
重ね張り工法 | 5万~8万円(1畳当たり) |
張り替え工法 | 8万~12万円(1畳当たり) |
床暖房を温水式にすると、上記の金額からさらに25万~80万円程度高額になります。とはいえ床暖房はキッチンの床一面に施工する必要はありません。人が良く通るキッチン前やダイニングテーブルを置く部分など、床面積の5割から7割程度に施工すると室内が温められます。
動線に手すりを設置する
キッチンまでの壁づたいやキッチンカウンターの手前など動線に沿って手すりを設置すると、車いすでの移動中や高齢者の転倒防止に効果があります。
工事内容 | 費用相場 |
手すり設置工事 | 3万~6万円(1m当たり) |
手すりを設置する費用は1mあたり3万~6万円が相場となります。キッチンの手すりは使う人が手を置きやすい高さに、握りやすい太さを選んで設置するようにしましょう。
既存のキッチンへ昇降機能を付ける
既存のキッチンへ昇降機能付きの収納やカウンターを後付けすることもバリアフリー化におすすめです。特に車いす利用者と立ってキッチンを使う人の両方が使いやすいキッチンの高さが異なるため、どちらの人でも使いやすくすることが重要。
工事内容 | 費用相場 |
電動昇降機・専用収納付き | 6万~8万円 |
取付工事費 | 2万円~ |
電動昇降機本体の価格は6万~8万円、これに取付工事費2万円をプラスした8万~10万円が相場となります。
キッチンをバリアフリー化する際の注意点とは?
キッチンをバリアフリーにリフォームする際にはいくつかの注意点があります。工事途中や工事が終わってからトラブルが発生しないよう、しっかりと覚えておきましょう。
排水管や換気口の位置によっては工事ができないことも
キッチンの向きや場所を変えるリフォームでは、給排水管や換気口の位置によって簡単に工事ができない場合があります。壁に穴を開けている換気口の場所を変えるには、既存の換気口を壁にして新しい換気口を作る必要があります。また給排水管の位置によっては、キッチンの場所を変えること自体が不可能なことも。
もしバリアフリーリフォームでキッチンの移動を伴う工事が発生する場合は、事前に図面などを見てもらって業者に確認することをおすすめします。
マンションでは管理規約を確認する
マンションではたとえ分譲であっても、管理規約によりリフォーム出来ない場合があります。特に給排水管をいじる工事では、部屋の所有者が自由に変えて良い配管と共用部になっている部分とに分かれているため注意が必要です。
また大掛かりな工事となると、騒音による近隣へのトラブルが発生する場合も。上で説明したような問題が起きることが考えられますので、マンションでリフォームをしたい場合は管理組合に相談して、工事をしても問題ないか事前にチェックしましょう。
同居家族で十分に話し合いをする
キッチンに立つ同居家族が居る場合は、リフォームの方法やレイアウトについてあらかじめ話し合っておきましょう。特にキッチンは一人ひとりで使いやすい高さやレイアウトが違うため、それらをどうするか検討する必要があります。
またキッチンリフォームによって使い勝手や生活が不便にならないか?安全性は保たれるか?など、家族全員の要望を踏まえながら十分に話し合っておきましょう。
介護保険を利用する場合はケアマネジャー等に確認を
介護保険を利用してバリアフリーリフォームを行う場合は、あらかじめ担当のケアマネジャーに相談しておきましょう。対象者それぞれの心身機能や認知機能をしっかり把握している専門家の適切なアドバイスを基にして、どうリフォームするか考えることが重要になるため。
時には病院の理学療法士や作業療法士、医師などに相談することもおすすめです。使う人にとって最も良いキッチンにするには、こうしたプロの助言を積極的に取り入れましょう。
キッチンのバリアフリーリフォームを安くするためのポイント
キッチンのみならず住宅内のバリアフリーリフォームをする際には、さまざまな助成金制度や減税制度を活用できます。ここでは業者の選び方や工事をお得にするポイントについて解説していきます。
介護保険や自治体の助成金制度を活用する
「要介護」や「要支援」の認定を受けている方がいれば、介護保険制度や自治体独自の助成金制度を利用してリフォームすることができます。例えば介護保険制度なら、工事費用の上限を20万円として1割の自己負担額を除いた金額を助成してもらえます。
この場合、リフォーム着工前と工事完了後の二度にわたって申請が必要で、一度工事費用の全額を業者に支払うなどの決まりがあります。さらに対象となり工事の種類も決まっていますので、詳しくは介護保険の窓口やお住いの役場の担当窓口までお問い合わせください。
リフォーム減税を利用して税金を安くする
介護保険や自治体の助成金制度とは別に、固定資産税や所得税が減税される制度もあります。所得税の場合は確定申告時にその年に工事が完了した分の資料を持参して手続きを行います。
固定資産税の減税では、前年に工事が完了した分の工事で上限を50万円として一年間減額されます。どちらの場合も条件や工事内容が決められていますので、バリアフリーリフォームを計画している段階で確認するようにしましょう。
介護リフォームの実績がある業者へ相見積もりを依頼
バリアフリーリフォームをはじめとする介護リフォームは通常の住宅リフォームと異なり、車いすや高齢者、介助する人にとって使いやすくなければなりません。そこで住宅の知識だけでなく福祉の観点から見た住宅改修の知識がある、介護リフォームの工事実績が豊富な業者がおすすめ。
そのような業者は専門の知識を持つ従業員が在籍していることが多く、知識と実績に基づいたアドバイスをしてくれます。業者のHPなどでリフォーム実績をチェックして、介護リフォームが得意な数社をピックアップしたら、相見積を依頼しましょう。相見積もりを取ることで金額の相場を知れるだけでなく、工事内容や業者の対応についても分かるようになります。
バリアフリーリフォームで車いすや高齢者でも使いやすいキッチンにしよう!
キッチンはレイアウトや設備の機能によって使い勝手が大きく変わります。高齢者や車いす利用者でも使いやすいキッチンにするには、さらなるレイアウトの工夫や安全性の高い機能が求められます。
毎日の食事を作る場所だからこそ、効率や使いやすさを考えてバリアフリーリフォームをしてみませんか?リフォームを依頼する際は介護リフォームが得意な業者を選ぶと、専門的な観点からアドバイスをもらえたり失敗のない工事を施工してくれるはずです。