洗面所をバリアフリーにする7つの方法&工事費をお得にする3つのポイントをご紹介!

顔を洗ったり歯を磨くのに毎日使う洗面所は家の中で最もバリアフリー化すべき場所の一つです。今回は高齢者や車いす利用者に使いやすい洗面所にするためのアイデアをご紹介。介護保険を利用するお得な方法もありますので、参考にしてください。

洗面所のバリアフリー化におすすめのリフォーム箇所とは?

バリアフリーリフォームとは、足腰の弱い高齢者や車いす利用者が障壁(バリア)となる箇所を取り除く(フリー)改修工事のこと。もちろん洗面所もバリアフリーにする方法がいくつなあります。こちらでは洗面所をバリアフリーにする工事の内容について詳しく見ていきましょう。

バリアフリー対応の洗面台に交換

洗面台をバリアフリー対応のものに交換するだけでも、使い勝手が劇的に良くなります。洗面台メーカーでは車いすに座ったままでも使える洗面台やかがむ動作が困難な高齢者におすすめの洗面台を開発しています。

通常の洗面台は洗面ボウルの下部分は扉が付いた収納になっていることがほとんどです。しかし車いすに座った状態では、ひざやすねなどの部分が扉にぶつかってしまい、使いやすい位置まで足を中に入れることができません。

バリアフリー対応の洗面台ではそうした足元部分の収納をなくし、座った状態でも足を奥に入れられるように設計されています。また洗面台の幅を広めにすることでゆったりと使え、水栓レバーまでの距離を手を伸ばして届きやすい位置に変えています。

足腰が弱くなった高齢者にとっては、洗面台の前で膝をかがめるという動作が辛い場合も。通常の洗面台は70~75㎝ほどの高さに設計されていますが、それよりも高めの洗面台を選ぶことで楽な姿勢で洗面台が使えます。

ただし車いすになった場合は逆に高すぎることになるため、使う人の状況に合わせた洗面台を選ぶことが重要になります。最近では高さを変えられるカウンタータイプの洗面台も登場していますので、後々のことを考えて初めからそのような洗面台にすることも一つの方法です。

洗面台の高さ以外にも付いていると便利な機能や設備があります。バリアフリー対応の洗面台を選ぶ際の参考にしてみましょう。

洗面台の機能詳細
腕置きを設置洗面ボウルの前面を平らに広くすることで腕を置いたまま手洗いが可能。
体が支えやすく転倒の危険を予防できる。
フラットタイプのボウル底面コップをボウル底面に置いたままで水を入れられる設計。
片手でもコップに水を注げる。
タッチスイッチ水栓手のひらや指で軽く押すだけでお湯・水が出せる。
車いすからも見やすい角度で取り付け位置を選べる。
自動止水機能水を止め忘れても30秒ほどで自動で止まる。
可動式の鏡車いすに座ったままでも顔を映せるように角度が調節可能。

同じ車いす利用者でも、体格や身長によって使いやすい高さは違います。バリアフリー対応の洗面台を選ぶ際には使う人が実際に試してみて、使いやすい洗面台を選ぶようにしましょう。

入口ドアを引き戸にする

洗面所ドアが開き戸の場合は、引き戸にすることでもバリアフリーにできます。手前側や奥側に開く開き戸の場合、車いすが邪魔になってドアにつっかえたり、片手で移動する必要があるため危険です。

また足の筋肉が衰えている高齢者にとっては、ドアを開閉するだけでもバランスを崩して転倒する危険が高まります。その点、引き戸は車いす利用者でも開閉しやすく、少ない力で開け閉めできるのでおすすめ。

また開閉にスペースを使わない引き戸にすることで、洗面所のスペースを最大限に活用できるのも大きなメリットです。もし洗面所をリフォームする場合は、扉を引き戸にする工事も忘れずにしましょう。

廊下との段差を解消する

入口ドアを変更する際には一緒に廊下との段差や敷居によるデコボコを解消する工事がおすすめです。車いすで室内を移動する方はもちろん、杖を使って歩く方にとっては少しの段差でも負担となってしまいます。

文字通り障壁となる段差を取り除くということがバリアフリーリフォームの基本となりますので、自室から廊下、洗面所への動線には段差がないようにリフォームしましょう。

つかまって歩ける手すりを設置

洗面所の壁に手すりを設置することで、立ったり座ったりの動作が楽にできます。特に脱衣所を兼ねた洗面所では、服を脱いだり着たりという動作が必要となります。

そのような時にも手すりを使うことで、体の重心が安定して服の着脱が容易になります。またふいにつまずいた時に掴まれる手すりがあることで、転倒防止にも有効。

壁に手すりを取り付けるだけなので素人でも簡単にできそうな工事ですが、施工する場合には壁に下地が入っている場所を選ばなければなりません。また下地が入っていない場所では補強工事が必要になります。

さらに洗面台を使う時に手すりが邪魔にならないか?といった点を考慮しなければいけないため手すりの設置は自分でやろうとせず、バリアフリーリフォームに慣れている業者へ依頼するようにしましょう。

車いすでも使えるスペースを確保

車いすでも使いやすい洗面所では、ある程度のスペースを確保する必要があります。特に日本の住宅は出入口付近が狭くなっている場合が多いので、下記のような幅のスペースを取るようにしましょう。

リフォーム箇所詳細
出入口幅車いす:80~85㎝
洗面台前高齢者:60㎝以上
車いす:100㎝以上
洗面台幅車いす:90㎝以上
洗面台横車いす:60㎝以上

出入口の幅は車いすが出入りしやすい80~85㎝を確保しましょう。また洗面所内で車いすが切り返ししやすいように上記のスペースが必要になることを覚えておいてください。

もしお住いの洗面所が狭くてスペースを広げられない場合は、浴室・トイレ・洗面所といった水廻りを一つにまとめるリフォームがおすすめ。水廻りを一つの部屋にすることで、それぞれで必要だったスペースが一辺に確保できますし、移動のための動線も短くなります。

滑りにくい床材へ変更する

洗面所のバリアフリーリフォームには、滑りにくい材質の床材に変更する工事があります。特にお風呂上りや洗顔時に足元が濡れやすい洗面所では、転倒の危険が高まります。

そこで水にぬれても劣化しにくく滑りにくい、万が一転倒してもクッション性のある下記のような床材に張り替えましょう。

床材の種類特徴
コルク濡れても滑りにくく素足で歩いても冷たさを感じない。
クッション性が程よくあるので車いす・高齢者問わず使いやすい。
クッションフロア耐水性や耐汚性に優れているビニール素材の床材。
クッション性が高いのでバリアフリー化におすすめ。
磁器床凹凸の付いたタイルを貼った床。
冷たさを感じないタイプや掃除しやすい機能が付いたものがある。

特にクッション性の高い素材は車いすでも使いやすく、素足で歩いても心地が良いのでおすすめです。

他の場所との温度差を和らげる

家のリビングや居室との温度差をなくすのもバリアフリーリフォームとして必要。というのも住宅内の温度差による「ヒートショック現象」が、屋内で高齢者が亡くなる死因の1/4を占めているためです。

特に冬場、暖かい部屋から寒い洗面所に移動した際、体内の熱を奪われまいとして血管が収縮して血圧が急上昇します。その後再び暖かい場所に戻ったり熱い湯船に入ると、今度は血管が拡張して血圧が低下します。

そのような血圧の乱高下により、脳卒中や心筋梗塞を引き起こす原因となってしまうことをヒートショック現象と呼んでいます。高血圧や動脈硬化の傾向がある高齢者にとっては特に注意が必要となります。

このヒートショック現象を予防するには、住宅内の温度を一定にすることが大切です。特に洗面所は温かいお風呂に入るからと暖房設備を設けていないお宅が多いのでは?床暖房や浴室・洗面所暖房機で家の中の温度を保ちましょう。

洗面所のバリアフリーリフォームに必要な工事費用と日数とは?

では実際に洗面所をバリアフリーにする場合の費用相場を見ていきます。併せて工事日数の目安もご紹介しますので、予定を組む参考にしてください。

洗面台交換工事の費用相場・日数

洗面台をバリアフリー対応のものに交換する工事の費用相場は、洗面台のグレードや機能によって大きく変わってきます。オプションなどを追加していくと、相場よりもかなり高くなる場合がありますので、費用を抑えるには必要最低限の機能にすることが重要です。

工事内容費用相場工事日数
バリアフリー対応洗面台へ交換30万~50万円半日~1日

洗面台本体の価格が15万~35万前後として、既存の洗面台撤去費用と設置費用で15万前後かかります。トータルでは30万~50万円ほどが相場となります。

入口ドア変更工事の費用相場・日数

開き戸を引き戸にする場合は、扉の枠ごと交換する必要があります。それに伴い枠の周りの内装や床材の張り替えも必要となるため、費用はこのようになります。

工事内容費用相場工事日数
引き戸変更工事20万~40万円1日~2日

引き戸自体の価格は10万~30万円ほどですが、既存のドアの撤去・処分費用やドア枠設置工事や内装工事を含めると全体で20万~40万円ほどかかります。

段差解消工事の費用相場・日数

洗面所内や出入口の段差を解消する工事の相場は下記の通りです。

工事内容費用相場工事日数
床段差解消工事2万~15万円1日~2日

敷居の段差を解消するスロープを取り付ける工事は2万円から、床材を全て撤去して段差をなくす工事では15万円ほどかかります。

手すり設置工事の費用相場・日数

洗面所内に手すりを設置する工事は、比較的費用も掛からずできるのでおすすめです。掴み心地の良い太さや材質の手すりを使用すると、より使い勝手が良くなります。

工事内容費用相場工事日数
手すり設置工事(1箇所)3万~5万円半日~1日

手すり設置工事は一か所につき3万~5万円が相場です。

洗面所スペース拡張工事の費用相場・日数

洗面所スペースを拡張する工事にかかる費用は下記の通りです。

工事内容費用相場工事日数
洗面所スペース拡張工事25万~35万円3日~一週間
出入口拡張工事20万~25万円2日~3日

出入口の拡張工事は20万~25万円が相場、洗面所内のスペースを広げる工事は壁や床の工事も発生するため25万~35万円と高めになります。

床材変更工事の費用相場・日数

床材を滑りにくい材質へ変更する工事は、工事の仕方によって相場が変わってきます。

工事内容費用相場工事日数
床材変更工事5万~10万円半日~1日

既存の床材の上から新しい床材を重ね張りする工法では5万円前後から可能ですが、既存の床を撤去して新しいものへ張り替える工法は10万円以上かかる場合があります。

重ね張り工法は費用が抑えられますが、既存の床や下地の状況で工事ができないことがあります。業者に現場を見てもらった際に、どちらの工法で工事ができるのかをご確認ください。

ヒートショック対応工事の費用相場・日数

ヒートショック対応工事には、床暖房を設置する工事と暖房器具を設置する工事の二種類があります。予算や工事日数に応じて適切な工事を選びましょう。

工事内容費用相場工事日数
床暖房設置工事5万~8万円(1畳当たり)3日~1週間
暖房器具設置工事2万~5万円半日~1日

床暖房を設置する工事は1畳当たり5万~8万円ほどかかります。床材を張り替えるリフォームと一緒であればそれよりも安く収まります。

暖房器具はセラミックヒーターをホームセンターなどから数千円で購入して自分で設置することも可能ですが、浴室暖房機とセットになったものを設置すると2万~5万円ほどかかります。ただし浴室乾燥機や冷風が出る機能が付いていたり、人感センサーやリモコン付きの便利な種類もありますので、バリアフリーリフォームの機会に選んでみてはいかがでしょうか。

洗面所をバリアフリーにする際の注意点とは

洗面所をバリアフリーにする費用が分かったところで、注意点やポイントをいくつかご紹介します。洗面所をより使いやすくするためのヒントとして、参考にしてください。

家族全員が使いやすい洗面所にする

高齢者や車いす利用者と一緒に暮らす家族が居る場合は、その家族全員が使いやすい洗面所にする必要があります。洗面所は誰もが毎日使う場所。洗面所の高さを自由に変えられるものに変える、邪魔にならず使いやすい場所に手すりを設置するなどの工夫が必要になります。

そのためにもバリアフリーリフォームの実績が豊富で、福祉住環境コーディネーターなどの専門家がいる業者にリフォームを依頼することをおすすめします。

収納スペースもしっかり確保する

洗面台を車いす対応のものに変えた場合、洗面ボウル下のスペースは収納として使えなくなってしまいます。そこでほかの場所に洗剤やシャンプーのストック場所を確保しましょう。

特に洗面所はストック品やタオル類、着替えなど思いのほか多くの収納スペースが必要になります。洗面台とは独立したキャビネットを脇に設置したり、造りつけの棚を上部に新設することで、収納スペースを増やしてみましょう。

また洗面台がマグネット式なら、マグネットで収納出来る小物入れを採用するのもいいアイデア。ホームセンターや家具店などをチェックして、洗面所収納を増やすように心がけてください。

座って着替えられるベンチも有効

洗面所にイスやベンチを置くだけでもバリアフリー化には有効です。洗面所は歯磨きや服の脱ぎ着など立ったままで行う動作が多い場所。足腰の弱ったお年寄りには疲れやすい場所でもあります。

そこで腰を下ろして歯磨きや服の着替えができるベンチチェストがおすすめです。その付近に手すりを設置すると、立ったり座ったりの動作がさらに楽になるでしょう。もちろん子供や大人が一休みする場所としても便利なので、洗面所スペースに余裕があるお宅ではベンチを置いてみてはいかがでしょうか。

洗面所バリアフリーリフォームをお得にする3つの方法

バリアフリーリフォームには、お得にできるいくつかの制度があります。該当する方はこれからご紹介する制度を活用して、積極的に洗面所のバリアフリーリフォームを行いましょう。

介護保険の助成金制度を活用

介護保険制度で「要介護」や「要支援」の認定を受けているなど、下記の条件を満たしている場合は、住宅改修費の対象限度額20万円から自己負担額1割を差し引いた金額を助成してもらえます。

  • 要介護もしくは要支援の認定を受けている
  • 改修する住宅の住所が被保険者の住所と同一
  • 本人が所有し居住している住所であること

対象になるバリアフリー工事は以下の通りです。

  • 手すりの設置
  • 床の段差解消
  • 床材の変更
  • 扉の交換
  • 便器の取替(和式→洋式)
  • その他リフォームに付帯して必要となる住宅の改修

介護保険制度を利用する場合は、主に次のような流れで手続きを行います。

  1. 担当のケアマネジャーに相談し、ケアプランを作成してもらう
  2. 施工業者を選定し、見積もりや設計を依頼する
  3. 自治体役場の介護保険窓口へ事前申請する
  4. 契約後リフォーム施工
  5. 工事完了後、施工業者へ工事費を全額支払う
  6. 役場窓口へ支給申請書を提出
  7. 指定の口座へ住宅改修費が還付される

ここで注意すべき点は工事着工前と完了後の二度申請が必要になるということ。また工事が終わったら、一旦は工事費用の全額を業者におさめなければなりません。さらに申請時書類「住宅改修が必要な理由書」は担当のケアマネジャーに作成してもらう必要があります。

万が一ケアマネジャーがいない場合は作業療法士や福祉療法士、二級以上の福祉住環境コーディネーターの有資格者でもOKです。そこで施工を依頼する業者を選定する際には、介護保険申請時の書類作成が可能な従業員がいるかどうか確認するとスムーズに手続きが進むでしょう。

地方自治体の補助金制度を利用

国の介護保険制度の他にも、お住いの市区町村単位でバリアフリーリフォームの補助金制度を設けていることがあります。対象者や対象となる工事の種類は自治体によって異なりますので、詳しくは担当の窓口までお問い合わせください。

精度によっては介護保険と併用して使えるものもあります。よりお得にリフォームするためにも事前にしっかりと調べておきましょう。

減税制度で税金が控除される

リフォーム費用の何割かを負担してくれる助成金や補助金制度の他にも、税金を控除できる減税制度があります。主に所得税と固定資産税が対象となりますが、バリアフリーリフォームをはじめとする住宅改修工事を実施した場合、その年におさめる税金が還付金という形で控除されます。

こちらは所得税の減税の対象となる工事の一例です。

  • 通路幅の拡張
  • 階段勾配の緩和
  • 浴室・トイレの改良
  • 手すり取付
  • 段差の解消
  • 出入口戸の改良
  • 滑りにくい床材への変更

そして下記のような対象となる方が住んでいる住宅をリフォームする場合に減税の適用となります。

  • 65歳以上の方
  • 要介護又は要支援の認定を受けている
  • 障がい者の方

所得税の減税を受けるには確定申告の時期に必要な書類を準備して、期間内に所定の場所で申告手続きを行ってください。

また住所のある市区町村に工事完了後3か月以内に申告することで、工事が完了した翌年の固定資産税が減税されます。減額の限度は家屋面積が100㎡以内に対して1/3まで。こちらも申告時に必要書類がありますので、あらかじめ内容を確認しておきましょう。

助成金や補助金を上手に活用して使いやすい洗面所にリフォームしよう

洗面所のバリアフリーリフォームには介護保険や自治体の助成金、減税制度などが活用できます。ただし制度の種類によって対象となる工事が異なり、対象外の工事費用は助成されませんのでご注意ください。

高齢者や車いす利用者にとってだけでなく、同じ家に暮らす家族みんなが快適に使えるようにするには、洗面所の適切なバリアフリー工事が求められます。リフォームが成功するためにも、バリアフリーリフォームの経験や福祉の知識が豊富な業者に依頼しましょう。