窯業系サイディングは、外壁材として人気の材質です。その主な特徴や施工方法、費用相場や工事日数を見ていきましょう。住宅の外壁リフォームをお考えの方は、窯業系サイディングに変えてみてはいかがでしょうか?
窯業系サイディングとは人工の外壁材
窯業系は、住宅の外壁材として広く使われています。現在では新築住宅の70%以上にこの窯業系サイディングが使われているほど。こちらでは窯業系サイディングの特徴や施工方法などを解説していきます。
窯業系サイディングとは?
窯業は粘土や石灰岩などからガラスやセメントを造る際に、窯(かま)を使って処理する工業のこと。そしてサイディングとは板状の外壁材の総称です。窯業系サイディングとは、セメント質などを原料とした、板状に成形した外壁材のことです。そして原料の割合はセメント質80%と繊維質20%です。
窯業系サイディングは約20年ほど前から普及し始めた新しい建材です。外壁に合わせて切断したサイディングボードを一枚ずつ張り合わせていく工法で施工されます。それぞれのつなぎ目にはシーリングを注入し、雨漏りやボードのはがれを防ぐ役割があります。
窯業系サイディング6つの特徴
それでは窯業系サイディングの特徴やメンテナンスの注意点を見ていきましょう。よく確認して外壁材を選ぶ際の参考にしてください。
耐震性が高い
窯業系サイディングは、その製造方法から密度が高く硬質な特徴があります。にもかかわらずその重さはモルタルの半分以下ほど。そのため地震が発生しても建物にかかる負担が少ないというメリットがあります。
また金具留め工法と呼ばれるステンレス金具を使ってサイディングボードを固定する方法なら、さらに耐震性を高められます。サイディングボードは金具で固定されているだけなので地震で揺れても左右に伸縮でき、ひずみを逃がしてくれる役割も。自信が多い地方にお住まいなら、外壁材は窯業系サイディングがおすすめです。
耐火性に優れている
窯業系サイディングのもう一つの特徴は、耐火性に優れている点です。窯業系サイディングは「防火外壁材」として、住宅基準法に基づいた防火性能試験をクリアしています。
不燃建材や準不燃建材として認められ、炎や熱を遮る時間は45分から1時間ほどです。そのため隣家が火事になっても、被害を最小限に食い止めたり、逃げるまでの時間を確保できます。
豊富なデザインや色から選べる
窯業系サイディングは色やデザインが豊富にあるので、家の外観にこだわりたい方に特におすすめ。2000年代から広く普及されるようになった窯業系サイディングは市場のシェア率が高く、メーカーがこぞって新商品を開発しています。その結果として安価でおしゃれなデザインの商品から選べるようになりました。
洋風や和風といったテイストの違いはもちろん、色や柄も豊富に揃っています。主なサイディングのデザインはこちらです。
- 木目調
- レンガ調
- 石積柄
- タイル柄
- プレーン調
一見すると本物そっくりなレンガやタイルの柄などが人気。窯業系サイディングは「おしゃれな外観にしたい」というあなたの希望をきっとかなえてくれます。
工期が短く導入コストを抑えられる
窯業系サイディングの施工方法はそれほど難しくないため、工期を短縮できて本体価格が安いので導入コストを抑えられます。外壁サイディングの施工方法は、サイディングボードを適切な大きさにカットして壁に貼りつけるだけ。施工には難しい技術を持った専門の職人が必要なく人件費がかかりません。
特に既存の外壁の上からサイディングボードを施工する「カバー工法」なら三週間前後で工事を終えられます。さらにサイディングボード自体も工場で大量生産できることから、初期費用を抑えられるというメリットが。外壁材として普及しているのもこうした背景があるからなのです。
防水機能がなく蓄熱性が高い
一方で窯業系サイディングは防水性が低く熱を逃しにくいというデメリットがあります。原材料の8割がセメントで出来ているため、サイディング自体に防水性はほとんどありません。家の外壁として防水性を高めるには、表面にアクリル系塗料を塗布することで補っています。
また窯業系サイディングは蓄熱性が高いという特徴があります。特に黒などの濃い色のサイディングの場合、夏場の表面温度が60℃を超えてしまうことも。室内温度が上昇するだけでなく表面の塗膜にも悪影響を及ぼすことがあります。
10年ごとのメンテナンスが必要
窯業系サイディングには先にあげた特徴があるため、定期的なメンテナンスが必要となります。特に防水性を高める目的の塗料が剥がれてしまうと、サイディングボード自体に腐食が発生。アクリル系塗料の塗膜寿命は5~10年と言われている通り、防水性能を保つためにも少なくとも10年に一度の塗装が必要になるのです。
またサイディングの隙間を埋めるコーキングも10年程度でひび割れや凹みが生じます。そのため塗装と同じタイミングでメンテナンスすることをおすすめします。
塗料の剥がれやシーリングの劣化にはそれぞれサインがあります。 定期的にチェックして、そのサインを逃さないようにメンテナンスをしていきましょう。
窯業系サイディングと他の外壁材との比較
サイディングには窯業系の他にも金属系や木質系、樹脂系といった素材による種類があります。それぞれの特徴や価格を踏まえて、最適な外壁材を選ぶようにしましょう。
種類 | 窯業系 サイディング | 金属系 サイディング | 木質系 サイディング | 樹脂系 サイディング |
デザイン性 | ◎ | ○ | △ | △ |
耐久性 | ○ | ◎ | △ | ◎ |
耐震性 | ○ | ○ | ○ | ◎ |
耐火性 | ◎ | ○ | △ | ○ |
耐凍性 | △ | ◎ | △ | ◎ |
耐用年数 | 10年 | 15年 | 10年 | 30年 |
単価/㎡ | 3,000円~ 5,000円 | 4,000円~ 6,000円 | 6,000円~ 8,000円 | 7,000円~ 9,000円 |
メンテナンス頻度 | 7~10年 | 10~15年 | 7~10年 | 10~20年 |
上の表を見ると窯業系サイディングは機能面や価格から、総合的に優れていることが分かります。特に外壁材として重要な耐火性や価格の安さが抜きんでています。加えてデザインが豊富で施工がしやすいのも多くの住宅に取り入れられている理由となっています。
窯業系サイディングの施工方法は2×2種類
窯業系サイディングボードには留め方が二種類と、リフォーム方法が二種類あります。まずはサイディングボードの留め方について見ていきましょう。
施工方法 | 工事の内容や特徴 |
釘留め工法 | ・専用の釘を使用して下地にサイディングボードを留め付ける施工方法。 ・主に14mm厚のサイディングボードに使われる。 ・施工が簡単で費用が抑えられる。 ・釘の耐久性が低く、サビや凍害によるサイディングのひび割れが起こる |
金具留め工法 | ・ステンレス金具を下地に固定し、そこボードをひっかけて貼る工法。 ・厚みが15mm以上のボードに使われ、縦横に自由に伸縮が可能。 ・費用は高いが長い目で見るとコスパが良い。 |
既存の外壁を窯業系サイディングへリフォームする場合には、張り替え工法とカバー工法の二種類の方法があります。それぞれの特徴を踏まえて、適切なリフォーム法を選んでください。
施工方法 | 工事の内容や特徴 |
張り替え工法 | ・既存の外壁材を剥がして下地を補修後、サイディングを貼りつける。 ・外壁の軽量化が可能で建物への負担が少ない。 ・建物のメンテナンス頻度が下げられ、費用が抑えられる。 ・既存の外壁材の撤去費用がかかる。 |
カバー工法 | ・既存の外壁材を補修したのちその上からサイディングを重ね張りする。 ・張り替え工法より低価格で遮音性に優れている。 ・外壁が二重になることで断熱性が高くなる。 ・内部からの劣化に注意が必要で、地震時に揺れが大きくなる。 |
代表的なメーカー・商品の特徴やブランド
国内の建材メーカーでは、窯業系サイディングのブランドや新商品を次々と発売しています。特に機能性に優れた商品について見ていきます。
メーカー名 | 商品名 | 特徴 | 価格 |
ニチハ | 風光 | 空気中の水分を取り込み薄い膜を構成、 汚れの付着を予防する「マイクロガード」 | 10,152円/枚 |
ニチハ | Fu-geプレミアム | 長高耐候塗料「プラチナコート30」を塗装 メンテナンスコストを徹底的に安くする | 4,700円/枚 |
ケイミュー | 光セラ | セルフクリーニング機能に経年劣化を 防ぐセラミック加工を施し10年保証を実現 | 7,900円/枚 |
旭トステム | ガーディナル | シーリング材の代わりに専用施工部材 「カンシキくん」を使用 | 6,900円/枚 |
窯業系サイディングは定期的なメンテナンスが必要
これまでもご紹介してきましたが、窯業系サイディングは定期的なメンテナンスが必要な外壁材です。そこでメンテナンスのサインや日ごろのお手入れ方法について詳しく解説していきます。
このような症状が出たらメンテナンスのサイン
何気なく目にすることが多い家の外壁ですが、たまにはじっくりと観察してみましょう。サイディングが以下のような状態になったらメンテナンスのサインです。
メンテナンス方法 | サイディングの状態 |
シーリングの打ち換え | シーリングがひび割れている |
シーリングに凹みや痩せがある | |
シーリングに破断箇所がある | |
サイディングボードの塗装 | サイディングの色が褪せている |
触るとチョークのような粉が付く | |
カビやコケ、藻などが生えている | |
表面にひび割れや剥がれがある | |
重ね張り・張り替え | サイディングボードに大きな穴や亀裂がある |
ボードの一部が剥がれたり反りかえっている |
触るとチョークのような粉が付く状態を「チョーキング」とも呼びます。サイディング独特の劣化現象で、これをほおっておくとサイディングがさらに悪化してしまい、メンテナンス費用が余分にかかってしまうことも。
日頃のお手入れ方法とは?
業者にメンテナンスを依頼するほかにも、自分でできるお手入れをこまめに行うことでサイディングの寿命を延ばすことができます。少なくとも一か月に一度は外壁を点検して、迅速に手入れするなどしましょう。
サイディングの状態 | お手入れ方法や注意点 |
ホコリや土などの汚れ | ・ホースで水をかけたのちに雑巾を使って水洗いをする。 ・塗膜面に傷をつけないように高圧洗浄やスチーム洗浄は避ける。 ・デコボコしている場所は柔らかいブラシで軽くこする |
鳥のフンやカビ | ・壁全体を水で濡らし、水で薄めて泡立てた中性洗剤で洗う。 ・洗剤をしっかり水で洗い流したら、カビの発生を防ぐ薬剤を塗布。 |
雪の付着 | ・土台部分や入隅部などサイディングが雪で覆われる部分は、積雪をこまめに除去する。 |
特にホースを使ってサイディングに水をかける場合は、必ず上から下へ向けて散水しましょう。下から水をかけると水の圧力で表面の塗膜が剥がれる恐れがあります。
窯業系サイディングのメンテナンススケジュール
定期的なメンテナンスが必要な窯業系サイディングは、リフォーム後10年単位でこのような工事が必要になります。
施工内容 /年数 | コーキング打ち換え | 塗り替え | 張り替え・重ね張り |
10年後 | 15万~20万円 | 80万~100万円 | 15万~20万円 |
20年後 | 15万~20万円 | 80万~100万円 | – |
30年後 | – | – | 150万~250万円 |
コーキング打ち替えや塗料の塗り替えは10年ごとに、30年経つとサイディング自体に経年劣化が発生するため、外壁材を全て張り替える必要があります。
窯業系サイディングの施工日数や費用相場とは
それでは実際に窯業系サイディングボードのリフォーム工事をする場合には、どの位の費用や日数がかかるのでしょうか?工事内容別に見ていきましょう。
窯業系サイディングボードの価格
窯業系サイディングボードの本体価格は、ボードの厚さや塗料の機能によって㎡あたり3,000円~10,000円ほど。外壁の面積が150㎡の場合は材料費のみの価格で45万円~60万円位が相場となります。
さらに最近では高耐久や防汚機能をうたった商品も新たに発売されており、さらに価格帯が広がりつつあります。
張り替え工法による施工費・日数
既存の外壁材を撤去してサイディングボードを張る、張り替え工法では施工費の相場や工事内容はこのようになります。
工事内容(外壁面積150㎡) | 費用相場 |
既存外壁材の解体・撤去処分 | 40万円~ |
サイディングボード本体価格 | 60万円~ |
足場工事・養生費 | 20万円~ |
コーキング工事 | 20万円~ |
内部補修工事 | 50万円~ |
合計 | 190万円~ |
張り替え工法による外壁リフォームでは、既存壁の撤去などが発生するため費用がかかり、工期は2~3週間ほどになります。
カバー工法による施工費・日数
既存の壁の上からサイディングを張りつける工法では、既存壁の撤去が必要ないため費用は抑えられます。
工事内容(外壁面積150㎡) | 費用相場 |
サイディングボード本体価格 | 60万円~ |
足場工事・養生費 | 20万円~ |
コーキング工事 | 20万円~ |
内部補修工事 | 50万円~ |
合計 | 150万円~ |
カバー工法によるサイディングのリフォーム工事は、1~2週間程度で工事が完了します。
シーリング打ち換え費用・日数
10年ごとのメンテナンスに必要なシーリング工事では、劣化状況によって二種類の工法を用います。あらかじめ業者にチェックしてもらって、どちらの工法が適当なのか確認しましょう。
シーリングの工法 | 詳細 |
打ち増し工法 | シーリングの劣化が少ない場合、既存のシーリングの上から 新しいシーリング材を入れる工法 |
打ち換え工法 | 既存シーリングの割れや剥がれが目立つ場合、一度すべて取り外して 新しいシーリングを入れ直す工法 |
それぞれの工法ごとの㎡当たりの施工費用相場はこのようになっています。
工事内容 | ㎡当たりの単価相場 |
シーリング打ち増し工法 | 700円~900円 |
シーリング打ち換え工法 | 900円~1,200円 |
塗装塗り替え費用・日数
サイディングの防水性をキープするには、適切な時期での塗装塗り替え工事が必要になります。通常、窯業系サイディングへの塗装ではアクリル系塗料を使いますが、光触媒や遮熱機能を持つ塗料もおすすめです。
塗料の種類 | 塗料の特徴 | ㎡単価相場 |
アクリル系塗料 | 耐久性が弱く、数年したら剥がれる場合も 頻繁に外壁の色を変えたい場合におすすめ | 1,000円~1,200円 |
ウレタン系塗料 | 防錆などの機能を持つ種類もある 様々なシーンで使われ、価格も比較的安い | 1,600円~2,000円 |
シリコン系塗料 | 現在最も使われている塗料の一つ 耐久性が高くメンテナンスしやすい | 2,400円~3,400円 |
光触媒・無機塗料 | 防汚性が高く耐久年数が長い 費用は高めだが、費用対効果でおすすめ | 5,000円~5,600円 |
遮熱・断熱塗料 | 熱を反射することで表面温度の上昇を防ぐ 遮熱と断熱では性能が異なる | 5,000円~5,600円 |
サイディングの塗装工事では仮設足場を設置する必要があるため、シーリング工事と同じタイミングで行うと費用を抑えられます。
工事内容(外壁面積150㎡) | 費用相場 |
足場工事・養生費 | 20万円~ |
塗装工事 | 60万~ |
合計 | 80万円~ |
10年ごとのメンテナンスに必要な、塗装工事とシーリング工事をセットで行うと80万~120万円程の費用がかかります。工事日数は1~2週間程度です。
但し塗装工事に雨は大敵、天候状況によっては工事が伸びる場合もありますので、余裕をもって工事を依頼しましょう。
外壁の窯業系サイディングは定期的なメンテナンスが必要
窯業系サイディングは広く普及しているおかげで本体価格が安く、デザインが豊富なのがメリットです。また耐火性や耐震性に優れているのも外壁材におすすめなポイント。
ただしサイディング自体に防水性が無いため、防水効果のある塗料を10年ごとに塗るなどのメンテナンスが必要となります。いつもキレイで家を守ってくれる外壁を保つには、日ごろのお手入れと定期的なメンテナンスが大切になります。