屋根の修理方法として「葺き替え」というリフォームがあります。今回は屋根葺き替えの費用相場はもちろん、葺き替えができる屋根材の種類や適切なタイミングなどをご紹介。葺き替え以外の屋根修理の費用なども解説しますので、屋根を修理したいとお考えの方はぜひ参考にしてください。
屋根の葺き替えとは?重ね葺きとの違いや屋根の基礎知識を解説
屋根の大規模修理方法として、葺き替えの他に「重ね葺き」という工法があります。ここでは工事方法の違いや屋根葺き替えのタイミング、作業手順などの基礎知識を解説していきます。
屋根の葺き替えと重ね葺きの違い
屋根の葺き替えとはそもそも、既存の屋根材を剥がし下地ごと屋根全体を新しくするリフォーム工事のことです。屋根葺き替えのメリットやデメリットはこちらです。
メリット | デメリット |
・既存の屋根材と異なるものに変更が可能 ・軽い屋根材に葺き替えることで耐震性がアップ ・下地や野地板をあらわにして補修や補強ができる | ・一時的な出費がかさむ ・工期が長くかかる |
基本的には屋根全体に及ぶ工事を指しますが、建物の形状や屋根の状態によっては一部分だけを拭き替えるという工事で済む場合もあります。
一方の重ね葺きというのは今ある屋根材の上から新しい屋根材を重ねて乗せる方法です。重ね葺きの特徴は以下の通りです。
メリット | デメリット |
・工期が短縮できる ・費用が比較的安い ・工事中の騒音やホコリを軽減 ・防音性や断熱性がアップする | ・瓦屋根や下地の損傷が激しいと施工できない ・既存屋根と二重になるため耐震性が落ちる ・使用できる屋根材が限られる |
ただし現状の屋根材や下地の損傷が激しい場合は、重ね葺きすることができません。工期は一週間ほどと、10日前後かかる葺き替え工事よりも短期間で済みます。
特に今の屋根材がスレートや金属製といった素材で形が平ら、雨漏りや下地に損傷がない場合は重ね葺きがおすすめです。逆に瓦屋根などの重量があり凹凸のある屋根材は重ね葺きには向きません。自宅の屋根材の種類や状態に応じて、重ね葺きか葺き替えを選ぶようにしましょう。
葺き替え可能な屋根材の種類と特徴とは
では葺き替えができる屋根材にはどんな種類や特徴があるのでしょうか?自宅の屋根材の種類について確認しながら見ていきましょう。
屋根材の種類 | 特徴 |
瓦屋根 | 初期費用がかかるが耐久性・遮音性・耐熱性が高い。 メンテナンスは30年に1度程度。 重みがあるため地震で瓦の落下や破損することも。 |
ガルバリウム屋根 | アルミと亜鉛合金製で、トタン屋根よりさびにくい。 軽量で耐震性・耐久性に優れている。 定期的な塗装や部品交換などのメンテナンスが必要。 |
ハイブリッド屋根 | ガルバリウム鋼板に石の粒を加えた新しい屋根材。 軽量で耐久性があり、耐用年数は50年ほど。 |
トタン屋根 | 少し前に普及した安価な金属製の屋根材。 こまめな塗装で耐用年数を伸ばせる。 メンテナンス不足でサビが発生したら葺き替え時期。 |
実はほとんどの屋根材で屋根の葺き替えが可能です。しかしながら屋根材の種類によって耐用年数が異なるため、葺き替えに適した時期が違います。屋根材ごとの耐用年数やメンテナンスのタイミングはこちらです。
屋根材の種類 | 耐用年数 | メンテナンスのタイミング |
日本瓦(粘土瓦) | 70~100年 | 20年ごとに漆喰の詰め直し (塗装の必要はなし) |
セメント系瓦 | 30~50年 | 10~15年ごとに塗装 20年ごとに漆喰の詰め直し |
ガルバリウム屋根 | 20~40年 | 10~15年ごとに塗装 |
トタン屋根 | 10~20年 | 5年ごとに塗装 |
スレート屋根 | 15~30年 | 10年ごとに塗装 |
ハイブリッド屋根 | 20~30年 | 特になし |
このように屋根材に応じてメンテナンスの時期や耐用年数は異なります。一般的に耐用年数を過ぎた屋根には葺き替えをおすすめしています。
屋根葺き替えのタイミングとは?5つのポイントをご紹介
では具体的に屋根がどんな状態になったら屋根葺き替えすべきなのでしょうか?毎日風雨にさらされ家を守っている屋根には、以下のような症状が現れることがあります。
- 15年以上メンテナンスをしていない耐用年数を超えた屋根材
- 下地が腐って雨漏りがしている
- 天井にカビが生えている
- 風の強い日に屋根から異音がする
- 雨が降った次の日も家の中が湿っぽい
上記に当てはまる場合は、なるべく早めに専門の業者に相談してみてもらいましょう。特に雨漏りは屋根だけでなく家の構造全体に悪影響を及ぼす可能性が高いため、早急に手当てが必要です。
依頼を受けた専門の業者は実際に屋根に登ったり、屋根裏を点検することでどういったリフォーム方法が適しているか提案してくれます。場合によっては簡単な塗装や補修工事で済むことがありますので、億劫がらずに定期的に見てもらうことをおすすめします。
屋根の葺き替え工事の工程と工期の目安
実際に屋根の葺き替え工事はどんな手順でどの位の工期がかかるのでしょうか?こちらは主な葺き替え工事の流れになります。
- 仮設足場組立・養生
- 既存の屋根材を撤去
- 下地の状態を確認し、補修や補強を行う
- 下地に防水シート(ルーフィング)を貼りつける
- 新しい屋根材を取り付ける
- 雨水工事や棟板金取り付け工事を行う
- 足場撤去
通常、屋根葺き替え工事にかかる期間は1週間~10日前後です。ただし屋根の大きさや状態、工事期間の天候によっては日程が延びることがあります
特に屋根工事にとって大敵な雨の多い台風時期や梅雨時期には大幅に工事が中断する場合も。時には葺き替え途中に大雨が降って雨漏りが新しく発生することもありますので、工事期間には注意が必要です。
1月~3月 | 豪雪地帯は屋根工事不可 雪が積もらない地方でも霜が降りたり日が短いので向かない |
4月~6月 | 屋根工事のベストシーズン |
7月~9月 | 梅雨時期や台風時期は避ける 夏場の暑い時期も屋根工事には向かない |
10月~11月始め | 屋根工事のベストシーズン |
11月中旬~12月 | 霜が降り始め、雪が降ると屋根工事は危険 |
このように葺き替え工事をはじめとする屋根工事に適したシーズンは4~6月と9月末から1月始めということになります。この時期は屋根業者が最も忙しい時期でもありますので、屋根工事を希望する方はなるべく早めに依頼することをおすすめします。
屋根の葺き替え工事や屋根修理にかかる費用とは?
実際に屋根葺き替え工事を依頼する場合にかかる費用について解説していきます。その他のメンテナンスや工事にかかる費用もご紹介していきますので、予算を考える際の目安にしましょう。
葺き替え工事は屋根材の種類によって相場が変わる
葺き替え工事は新しく乗せる屋根材の種類によって費用が大きく変わってきます。こちらは屋根材の種類別の㎡当たりの価格になります。
屋根材の種類 | 価格相場 |
ガルバリウム鋼板 | 5,000円~6,500円/㎡ |
ハイブリッド屋根 | 8,000円~9,000円/㎡ |
スレート屋根 | 4,500円~6,000円/㎡ |
粘土瓦 | 10,000円~12,000円/㎡ |
ただし日本瓦への葺き替え工事は、元から日本瓦の家屋にしか乗せ換えることができません。というのも陶器瓦や粘土瓦は他の屋根材に比べて7~9倍ほどの重量があり、もともとその重さに耐えられるように住宅が設計されているからです。
屋根荷重に対応して設計されていない家に新しく日本瓦を乗せてしまうと、瓦の重みに耐えられなくなり耐震性が大きく低下する原因に。そのため日本瓦への葺き替えリフォームには注意が必要です。
そして葺き替え工事にかかる費用相場はこちらです。
工事内容 | 費用相場 |
既存屋根撤去工事 | 2,000円~3,000円/㎡ |
野地板下地補修工事 | 2,000円~3,000円/㎡ |
防水シート工事 | 800円~1,000円/㎡ |
棟板金工事 | 2,000円~3,000円/m |
仮設足場工事 | 500円~1,000円/㎡ |
元々の屋根材の下地にアスベストが含まれている場合は以下のような費用が追加で発生します。
- 撤去費用・・・3,000円~4,000円/㎡
- 処分費用・・・2,000円~3,000円/㎡
- 運搬費・・・30,000円~50,000円/一式
屋根葺き替え工事に付随して発生する追加工事の費用は、以下のような金額になります。
工事内容 | 費用相場 |
天窓・トップライト工事 | 16,000円~20,000円 |
アンテナ着脱工事 | 6,000円~10,000円 |
換気棟設置工事 | 10,000円/m~ |
ソーラーパネル着脱工事 | 20,000円~/枚 |
雨どい交換工事 | 2,500円~/m |
破風板取付工事 | 4,500円~/m |
雪止め取付工事 | 2,000円~/m |
重ね葺きは費用を抑えられる
既存の屋根材の上から新しい屋根材を乗せる重ね葺きは、葺き替え工事に比べて費用が安くなるのがメリットです。
工事内容 | 費用相場 | 工事日数 |
重ね葺き工事 | 80万~120万円 | 6~10日 |
ただし屋根や下地にひどい劣化が見られた時や瓦屋根には重ね葺きすることができません。自分の家の屋根が重ね葺きできるかについて、詳しくは専門の業者にお尋ね下さい。
葺き直しは既存の屋根材を使用するためお得
葺き直しとは瓦など既存の屋根材を一度屋根から外し、下地の補修や補強をした後に再び同じ瓦を敷き直す工事のこと。同時に瓦一枚一枚検査をして強度に問題がないかチェックができるので、見た目は重量はそのままに防水性などを大幅にアップすることが可能です。
工事内容 | 費用相場 | 工事日数 |
葺き直し工事 | 100万~180万円 | 8~12日 |
ただしスレート屋根やガルバリウム鋼板などの薄い屋根材は葺き直しができません。薄いコンクリート板や金属板は、剥がす際に変形してしまって再利用が難しいためです。
屋根塗装はメンテナンスが目的
粘土瓦以外のほとんどの屋根材には、定期的な塗装が必要です。これはメンテナンスの意味でも大切。上で説明したメンテナンスの時期が来たら定期的に屋根塗装をしましょう。
屋根塗装にかかる費用は、劣化の度合いや屋根材の種類、使う塗料の性能や周囲の住環境によって異なります。おおよその費用相場はこちらです。
工事内容 | 費用相場 | 工事日数 |
屋根塗装工事 | 40万~100万円 | 7~10日 |
ただし屋根材の表面にひびや塗料の剥がれが見られたら、時期が来る前でもなるべく早めに塗装することをおすすめします。屋根に塗られている塗料は防水機能を高める上でも重要で、そのままにしておくと雨漏りの原因となってしまうためです。
部分補修は異常個所のみを修繕する
葺き替えや重ね葺きするほどでもない部分的な異常には、部分補修で対応しましょう。主な部分補修の部位や工事内容はこちらです。
- 屋根材の破損
- 棟板金の釘打ち直し
- 谷樋板金交換
- コーキング打ち直し
- 漆喰の修理
- 棟の積み替え
- スレート材の交換
- 雨どいの詰まりや破損
屋根の異常範囲が限定的だと判断されれば部分補修が可能です。ただし修理部位や使う部材によって費用が変わってきます。
工事内容 | 費用相場 | 工事日数 |
部分補修工事 | 5万~50万円 | 1~4日 |
このように屋根の一部分だけの修理であれば、屋根全体の葺き替えと比べても安くできます。
雨漏り修理は事前の調査が必要
雨漏りと言ってもその原因は一つだけでなく、複雑に影響しあっている場合があります。そこで雨漏りの再発を防ぐためにも、まずは入念に調査をする必要があります。専門の業者に依頼する場合、このような調査費用がかかります。
調査内容 | 費用相場 |
散水調査 | 5万~30万円 |
発光液調査 | 5万~25万円 |
サーモグラフィー調査 | 10万~50万円 |
内部調査 | 5万~15万円 |
調査の結果次第では、瓦のズレを直す簡単な工事から大規模な葺き替え工事が必要となることも。雨漏り修理の場合はまず調査からと考えて、専門業者にしっかりと見てもらいましょう。
屋根の葺き替えリフォームをお得にするには?
大掛かりな工事となる屋根葺き替え工事の費用を少しでも安くするために、いくつかのコツがあります。それらのコツをおさえて、お得にリフォーム工事をしましょう。
自社で工事が可能な業者に依頼
業者を選ぶ際にも重要なのが、自社で屋根工事ができるところに依頼するということ。大手のリフォーム会社や住宅メーカーなどは、リフォーム工事を請け負うと下請けの業者に任せることがほとんどです。そこで余分な中間マージンが発生して、トータル費用が高くなってしまう原因となります。
なるべくなら自分のところで職人を抱え、屋根工事を専門にしている業者なら余分な費用が掛かりません。さらに広告をたくさん出している業者は広告費が、営業マンがたくさんいる会社は人件費が掛かっているため、工事費を抑えたいならそこもチェックすべきポイントとなります。
相見積もりを取って費用相場を確認
上記の条件をクリアした業者を2~3社ピックアップしたら、同じ条件で相見積もりを取りましょう。その際には自宅の屋根のおおよその広さを把握して、相場金額や見積内容をチェックすることが重要に。
見積書でチェックするのは金額だけではありません。見積書の書き方や説明の仕方で、より自分に合う業者を見つけてください。相見積もりは業者とのお見合いと考えて、自分の理想を形にしてくれそうな相手を見つけられることがリフォームの成功へと繋がります。
風災被害は火災保険を利用した部分補修がおすすめ
台風や大風で屋根の部分補修が必要となった場合、住宅の火災保険が使えることがあります。該当すると思ったら、自分が加入している保険の補償内容や請求方法などをチェックしてみましょう。
ただし屋根全体の経年劣化を改善する葺き替え工事は、基本的には適用されません。あくまで風災被害による原状回復のためとなりますのでご注意ください。
屋根の現状を確認して機能向上を目指した屋根葺き替えをしよう!
屋根葺き替え工事は屋根材を新しくして下地を補修することで、屋根機能の大幅なアップや住宅の寿命を伸ばす効果があります。そのためにも屋根の現状や屋根材の種類をしっかりと確認して、適切なリフォームを行ってください。
ご自分で屋根に登るのは危険が伴いますので必ず専門の業者にチェックしてもらい、写真や動画などで確認することをおすすめします。