浴槽を安心して使うには?浴槽のバリアフリー9つのポイント&費用相場を解説!

浴槽がある浴室は家庭の中でも特に危険な場所ということをご存知ですか?今回は浴室を安全に使うためのバリアフリーリフォームについて解説していきます。深くて危険な浴槽や、寒くて滑りやすい浴室は思い切ってリフォームしましょう。

浴槽のバリアフリーリフォームはなぜ必要なのか?

近年認知度が高まりつつあるバリアフリーリフォームですが、なぜ浴槽をバリアフリーにした方が良いのかご存知ですか?高齢者などの当事者と、介助する側両方の目線から浴槽のバリアフリーリフォームの必要性について解説していきます。

浴室内は危険がたくさん

実は浴槽のある浴室内は、家の中でも特に危険の多い場所になっています。家庭内で起こった事故のうち、三割以上が浴室内で発生しているというデータがあるほど。特に65歳以上の高齢者に限っていうと、毎年5,000人以上の方が入浴中に何らかのアクシデントにより溺れて死亡しています。

特に足の筋力が低下している高齢者は水に濡れた浴室内で転倒しやすく、急激な温度変化によるヒートショック現象が起こしやすいことが原因です。このような事故を予防するために浴室内のバリアフリーリフォームが必要となります。

さらにお風呂では必ずお湯に浸かりたいという高齢者が多いという理由から、安全で快適に入浴できる浴槽にリフォームすることがポイントになります。深すぎる浴槽は跨ぎにくく、お湯に体が沈み込んでしまう危険があります。また立ち座りの動作に関しても、足腰に負担がかかります。

浴槽をリフォームする場合は、なるべく上記のような障壁を排除できる設計や設備を検討しましょう。お風呂は体を清潔に保つためだけでなく、リラックス効果もあります。家族としては、高齢の家族がいつまでも安心して入浴できるような環境づくりをしていくことが求められます。

介助をする側からの必要性

もし高齢者が一人で入浴できなくなった場合、介助者がサポートすることが考えられます。そこで介助をする側からの視点も重要に。

介助をする人は相手の動きに合わせて力を入れたり、必要な体勢を取ったりしなければなりません。介助者に完全に体を預けることもあるため、転倒する恐れが多い浴室内では滑りにくい対策を施すようにしましょう。

また大きな動きを取れるよう、浴室や浴槽を広めにするというバリアフリーリフォームが有効です。自力で立ち上がることのできない高齢者には、設備や器具を使って浴槽に入れるリフォームがおすすめ。このように介助する人が介助しやすい浴室にすることもポイントになります。

浴槽をバリアフリーにするための9つのポイントと費用相場とは?

浴室の中でも特に事故が多い浴槽のバリアフリー化には、9つのポイントがあります。これらのポイントを詳しく見ていくとともに、リフォームにかかる費用の相場も解説していきます。

浴槽の高さは30~40㎝がベスト

浴槽の縁の高さは30~40㎝が理想的となっています。特に在来工法の古い浴槽には間口が狭く深いものが多いのですが、筋力が弱くなった高齢者や体の不自由な方にとっては跨ぎずらく、転倒するリスクが高くなります。

使用する人の体格や身長にもよりますが、浴槽の縁を30~40㎝に下げるというバリアフリーリフォームが必要になります。自宅の浴槽が深く跨ぎずらいと感じるようなら、なるべく早めに浴槽自体を浅いタイプに交換することをおすすめします。

また従来の浴槽を使いたいなら、浴槽の1/3ほどを埋め込んだ「半埋め込み式」という設置方法が良いでしょう。浴槽の縁が低くなるため出入りしやすく、安全性が高まります。浴槽交換にかかる費用相場はこちらです。

工事内容費用相場
浴槽交換工事50万~100万円

在来工法の浴室なら浴槽が交換しやすく、50万~100万前後で交換可能です。

滑って転倒しないように浴槽内に手すりを設置

浴槽をまたぐ際、バランスを崩して転倒しないように手すりを設置することをおすすめします。浴室ではこのほかにも洗い場内や出入口付近に手すりを設置するというバリアフリーリフォームがあります。人が立ち上がったり歩いたり、跨ぐという動作をする場面では姿勢保持のための手すりを設置しましょう。

体格や浴槽のまたぎ方は人それぞれ。そこで利用する人が使いやすい場所に手すりを設置することが求められます。また浴槽に入る時と出る時では、捕まりやすい場所が異なりますので、それぞれに対応できる位置に設置してください。

手すりの設置工事では壁や浴槽内に穴を開けて取り付けなければなりません。そこで漏水しないように防水処理をしっかりと施すことが求められます。ユニットバスでは手すりを後付けできるタイプもありますので、ユニットバスへリフォームする際にあらかじめそのような商品を選んでみてはいかがでしょうか。

工事内容費用相場
手すり設置工事(1か所)1万~3万円

浴槽の手すり設置費用に掛かる金額は1万~3万円が相場です。手すりを取り付ける際には設置位置や手すりの太さ、素材などを念入りに確認して、使用者が持ちやすい手すりを選びましょう。

座ったままでも浴槽に入れる昇降リフト

足腰が不自由な方でも自宅でお風呂に入れる昇降リフトという福祉用具があります。「バスリフト」という名前としても知られていますが、電動で浴槽に出入りできる機能があります。こちらは業者に依頼して設置するというよりは、自身で購入して使用するタイプになります。

この昇降リフトがあると、長時間の入浴で疲れていても立ち上がりやすく、介助する側の負担も大幅に軽減されます。

工事内容費用相場
昇降リフト設置工事20万~30万円

昇降リフト設置工事にかかる費用は20万~30万円が相場。利用者と介助者の両方が安全に使える昇降リフト、ぜひ浴室リフォームの際に採用してみてはいかがでしょうか。

ステップを浴槽の縁に設置する

もし浴槽自体に手を加えることが難しければ、ステップ等を浴槽のそばに置いて使用するだけでも跨ぐ動作が楽になります。

工事内容費用相場
ステップ設置工事5千~1万円

ステップ自体の価格は5千~1万円程度。こちらは購入して脇に置くだけなので手軽にバリアフリー化できます。ただしステップに足を掛けた状態で転倒しないよう、安定性のあるステップを選び、近くには手すりを設置するようにしましょう。

浴槽の縁を広めにして腰掛けられるようにする

浴槽の縁を広めのタイプに交換すれば、そこに腰かけて浴槽に入れるので便利です。また長時間の入浴で疲れた場合も、縁に座って休憩することができます。

工事内容費用相場
浴槽交換工事50万~100万円

こちらは縁が広い浴槽と交換することになるため、50万~100万円ほどかかります。

浴槽内に傾斜を付けると肩まで浸かれる

内側に緩い傾斜や段差が付いた浴槽なら、洗い場との段差を小さくするだけでなく、浴槽が浅くても肩まで湯に浸かることが可能。ただしこの場合もお尻が滑って体が沈み込まないように、浴槽の床に滑り止めを付けたり体勢保持の手すりを設置する対策を施しましょう。

工事内容費用相場
浴槽交換工事50万~100万円

浴槽交換にかかる費用は50万~100万円前後。縁が広い浴槽や浅い浴槽に交換する際に、内側に傾斜が付いた機能のものを選ぶとさらに安全性が高まります。

ヒートショック防止には浴室乾燥機がおすすめ

ヒートショック予防には浴室乾燥機で浴室内を温めましょう。高齢者が入浴中におぼれて死亡する原因の多くがヒートショック現象によるものです。ヒートショック現象とは気温の大きな変動により血圧が乱高下して、心筋梗塞や脳梗塞の原因となること。

寒い場所で上昇した血圧が、暖かい湯船につかると血管が広がり血圧が下がります。この血圧の変動で失神し、そのまま浴槽内で溺れてしまう危険も。

怖いヒートショック現象を予防するには、脱衣所や浴室内を暖かくすることが有効です。浴室暖房乾燥機は浴室内はもちろん脱衣所も効率的に温めてくれるのでおすすめ。夏は冷風で涼むことができ、雨の日は乾燥機で洗濯物を乾かせる機能が付いたタイプもあります。

工事内容費用相場
浴室暖房乾燥機設置工事10万~20万円

浴室暖房乾燥機の設置費用は10万~20万円前後です。人感センサーが搭載され人がいなくなると自動でスイッチオフになる種類もありますので、求める機能で選んでみてください。

いざという時に安心な浴室発信機

高齢者や要介護者が一人で入浴する場合には、浴室内に浴室発信機が付いていると安心です。浴室はトイレと並んでプライベートな空間。介護が必要な方でもできるだけ一人で入浴したいと考えるはずです。

そこでいざという緊急事態にすぐ駆けつけられるよう、浴室発信機や非常ブザーがおすすめです。このような発信機やブザーにはボタンを押すタイプやひもを引くタイプなどがありますので、利用する人が使いやすいものを選ぶようにしましょう。

工事内容費用相場
浴室発信機設置工事3万~5万円

浴室発信機の設置費用は3万~5万円が相場となっています。

使い勝手の悪い在来工法の浴槽はユニットバスへ

浴槽が深く滑りやすいタイル床など、在来工法の浴室は危険がたくさんあります。そこで思い切って浴室全体をユニットバスへ交換してはいかがでしょうか?

ユニットバスとは壁や天井、床や浴槽が一体となっている浴室のことです。規格が決まっており施工が簡単でバリエーションが豊富なため、新築建売住宅のほとんどでこのユニットバスが採用されています。

最近のユニットバスは、標準仕様が高齢者に配慮したバリアフリーになっています。さらに追加で手すりなどを設置できるタイプもありますので、使い勝手によって選んでください。

工事内容費用相場
ユニットバス交換工事120万~300万円

ユニットバス交換工事にかかる費用は120万~300万円が相場。ユニットバスのグレードや既存の浴室の状態によって価格が変動します。

大まかな内訳はユニットバス本体に100万円前後、既存の浴室撤去処分に5万~10万円、取付工事や給排水管工事に10万円程度かかります。

浴槽のバリアフリーリフォームをお得にする方法

浴槽のバリアフリーリフォームでは、介護保険や自治体の助成金制度が利用できることがあります。なるべくお得に工事するには、そのような制度を上手に活用しましょう。

介護保険を利用する

介護保険の「高齢者住宅改修費用助成制度」では、要介護・要支援認定を受けた家族が居る場合、リフォーム費用の支給が受けられます。対象となる工事の内容は以下の通りです。

  1. 手すりの取り付け
  2. 段差の解消
  3. 滑りの防止および移動の円滑化などのための床、または通路面の材料の変更
  4. 引き戸などへの扉の取替え
  5. 洋式便器などへの便器の取替え
  6. その他1から5までの住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

これらの工事の費用限度額を最高20万円までとして、1割の自己負担で18万円が支給されます。工事着工前と施工完了後に自治体の窓口へ申請が必要で、一旦は業者に費用を全額支払う必要があります。

工事前の申請には下記のような書類が必要になります。

  • 支給申込書
  • 住宅改修が必要な理由書
  • 工事見積書
  • 写真又は簡単な図など完成予定の状態が分かるもの

そして工事完了後には下記の書類を持参して申請します。

  • 工事費用の領収書
  • 工事内訳書
  • 完成後の状態を確認できる書類 (リフォーム箇所の工事前と工事後が分かる写真で撮影日が分かるもの)

ただし水栓金具の交換やパネルの変更など、バリアフリーリフォームと関係のない工事の費用は除外されます。原則としてこの支給が受けられるのは一度きりで20万円が限度ですが、要介護度が3以上あがったり、住宅を転居した場合は再びこの制度を利用できます。

自治体の助成金を活用

住宅のバリアフリーリフォームでは、介護保険の他に自治体独自に定めた補助金制度を利用できることがあります。この制度はお住いの自治体によって支給の条件や対象となる工事内容が異なります。

介護保険との併用が可能な制度もありますので、お住いの市区町村の担当窓口に問い合わせたり、ホームページを確認してみてください。こちらも工事着工前に申請が必要となる場合があります。浴槽のバリアフリーリフォームを計画している段階で、どんな工事が対象になるのか?申請方法は?などをチェックすることをおすすめします。

各種減税制度で控除を受ける

補助金や助成金が支給される制度の他にも、所得税や固定資産税が減税される制度があります。これらはバリアフリーリフォームや省エネリフォーム等、一定の要件を満たす場合に税金の控除がうけられます。

これらは工事費用をローンを組んで支払うか、自己資金で賄うかによって減税対象額が変わってきます。所得税減税の手続きは確定申告時、固定資産税減税の手続きは市区町村と異なりますので、事前に詳しく確認しておきましょう。

浴槽のバリアフリーリフォームを依頼する業者の探し方

浴槽のバリアフリーリフォームをお願いする業者はどのようにして見つければいいのでしょうか?いくつかのポイントがあるので解説していきます。

介護リフォームが強い業者を見つける

バリアフリーリフォームなどの介護リフォームは、住宅の構造や工事に関する知識だけでなく、高齢者や体の不自由な方が暮らしやすく介助しやすい住宅にする必要があります。そこで介護リフォームが得意な業者にお願いするのが一番。

業者のホームページで施工事例などを確認して、浴室のバリアフリーリフォームの実績が豊富かチェックしましょう。写真などが掲載されている場合は、仕上がりのイメージも沸きやすいのではないでしょうか?施主の要望を踏まえ、専門家としての知識や経験に基づいたアドバイスができる業者を選ぶようにしましょう。

相見積もりを取って相場をチェック

介護リフォームが得意な業者をいくつか見つけたら、同じ条件で相見積もりを取ることをおすすめします。工事費用は業者によって異なるため、リフォームの相場を知る上でも重要です。

さらに詳細な見積書を作成してくれるか?分からない点があったら丁寧に教えてくれるか?なども業者を選ぶ際のポイントになります。福祉住環境コーディネーターなどの有資格者がいれば、助成金申請時にも安心して任せられます。

浴槽をバリアフリーにリフォームして快適なバスタイムを!

浴槽は高齢者や体の不自由な方にとって危険な場所であると同時に、リラックスできる場所でもあります。なるべく長く快適なバスタイムを楽しめるように、状態に合わせたバリアフリーリフォームをしましょう。

介護リフォームにはお得になる助成金制度や減税制度が数多くあります。それらを上手に活用しながら、介護リフォームの実績がある業者にお願いすれば、浴槽のバリアフリーリフォームも間違いなく成功するでしょう。