浴室のバリアフリーがお得になるコツは?安全で快適な浴室にする7つの工事箇所

ご家族にお年寄りや体の不自由な方がいる場合、浴室をどうリフォームすれば使いやすくなるのでしょうか?転倒などの事故を防止するためには浴室のバリアフリーリフォームが必要。施工箇所や費用相場、お得になるポイントをご紹介しながら浴室のバリアフリーリフォームについて考えて行きましょう。

浴室のバリアフリーとは?施工箇所や特徴をご紹介!

バリアフリーリフォームとは障壁(バリア)を取り除く(フリー)ための工事です。お年寄りや体の不自由な方が生活を営む上での障壁を取り除く・支障のない範囲にすることを目的としています。

浴室をバリアフリーにするメリットとは

浴室をバリアフリーにするメリットの大きな部分は、浴室内での事故を回避することにあります。実は浴室というのはお年寄りや体の不自由な方にとって危険がたくさんある場所。お年寄りが住宅内で起こす事故で最も多いのが、入浴中やその前後です。

筋力が低下しているお年寄りには、水にぬれた床や石鹸などでツルツル滑る浴室は転倒のリスクが高い場所。また温かい湯船の中と寒い脱衣所の急激な温度変化に伴うヒートショック現象も注意しなければなりません。

特に高齢者は転倒して骨折などということになれば、寝たきりになるリスクが高まってしまいます。急激に健康状態が悪化しないためにも、浴室をバリアフリーにリフォームして快適で安全な環境にすることが求められます。

一方で介護や介助する側にとっても、浴室のバリアフリーリフォームは有効です。というのも入浴時の介助では、体を大きく動かして介助者を補助したり、浴室内で体勢を変える必要があります。そこでサポートがしやすい広さを持つ浴室や、手助けしてくれる設備があると介助しやすくなります。

例えば車いすに座ったままで入浴できるユニットバスや、電動で浴槽に入れるバスリフトなど。介助を受ける方の状況にもよりますが、介助する側の視点も大切にして浴室のバリアフリー化を考えましょう。

このように介護を受ける方やそのサポートをする方の両方にとって、転倒のリスクが高い浴室は安全でなければなりません。それを実現するにはバリアフリーリフォームが重要となります。

浴室で危険な場所5カ所&バリアフリー方法

浴室内でも特に危険な場所を知ることで、バリアフリーすべきポイントを明らかにできます。同時に危険を解消するためのバリアフリー方法を解説しますので、リフォームの参考にしてください。

出入口付近での転倒

段差がある浴室の出入り口付近では、つまずいて転倒するリスクが高くなります。これは年齢とともに筋力が衰えて足が上がりにくくなるため。水を使う浴室では、脱衣所側に水が流れ込まないようにするためという理由から若干段差を設けています。

特に昔ながらのタイル敷きの浴室では、段差が2㎝以上あると足が濡れた状態でつまずいて転倒する恐れが高まります。そこで段差をフラットにするか、2㎝以下にすることが有効です。そのほかにも手すりの設置などがおすすめです。

リフォーム方法詳細
出入口の段差解消段差を2センチ以下にすると転倒リスクが低減
脱衣所側への浸水を防ぐため排水機能を追加する
手すりの設置出入り口付近に設置して立ち上がりや移動の支えとする

扉を開けて浴室内に入る時には、開ける動作に集中していて足元への注意がおろそかになりがちです。段差が大きすぎると感じたり、何度か段差につまずいたことがあった方は出入口のバリアフリーリフォームを検討しましょう。

転倒時に開閉できないドア

浴室の出入口ドアが内開き戸の場合、浴室内で転倒してしまうと外から扉が開にくくなります。そこでドアを引き戸にする方法が浴室のバリアフリーリフォームではおすすめです。特に引き戸は広い開閉スペースを必要とせず、開け閉めの動作にも力が必要ありません。

その他にも出入口ドアのバリアフリー化には、このような工事が有効です。

リフォーム内容詳細
扉を引き戸にする出入口スペースを確保できるため車いすでも利用可。
開閉に力が必要ないので、転倒することも防げる。
扉を引き込むスペースが必要。
扉を折れ戸にする扉を引き込むスペースが不要。
浴室で転倒しても外から開けられる。
扉と扉の間に指を挟まないように注意が必要。
ガラスを割れにくいものに交換扉にぶつかっても割れないように、
強化ガラスやプラスチックに変更する。

高齢者の浴室内での事故では、初期の対応が遅れてしまうとその分重症化のリスクが高まります。さらに扉にぶつかった際にも危険がないように、割れにくいガラスやプラスチックに変えて安全性を高めましょう。

深くて転倒しやすい浴槽

古い浴槽は深さがあり、またぎずらく転倒する危険が高まります。特に高齢者は浴槽に入るだけでも体力を消耗し、転倒して溺れてしまうリスクも。一般的な浴槽でも深さは60㎝ほどですが、高齢者や体が不自由な方には40㎝ほどの深さが適しているとされます。

このような深くて転倒の恐れがある浴槽は、下記のようにリフォームすることをおすすめします。

リフォーム方法詳細
半埋め込み式に変更浴槽の1/3ほどが床に埋め込まれた設置方法。
浴槽の立ち上がりが低くなるため出入りしやすい。
縁の広い浴槽に変える腰を掛けられるほどの広い縁があることで、
座った状態で浴槽に出入りできる。
傾斜の付いた浴槽にする浴槽の深さに差が出るため、洗い場との段差を小さくできる。
一方で肩までお湯に浸かれてリラックスできる。
手すりの設置浴槽へのまたぎ動作へは手すりで危険を回避する。
バスリフトの設置電動で浴槽へ入れる福祉用具。
浴槽の中で立ち上がったりする動作が不要なため、
疲れやすい入浴中でも安全に出入りできる。
介助する側にとっても負担を軽減可能。

浴槽自体を交換したり、半埋め込み式にして深さを解消する方法の他にも、手すりやリフトを設置する方法があります。またあまり費用を掛けられないという方には、浴槽外側にステップを置くことでまたぎずらさを解消するという方法が良いでしょう。

濡れて滑りやすくなる床

浴槽の床がタイル張りの場合、水でぬれてしまうと滑りやすいというデメリットがあります。また床に残っている石鹸カスやシャンプー、リンスを踏んで転倒するという危険も考えられます。

そこで水はけがよく滑りにくい加工が施されている床へリフォームするのが望ましいでしょう。さらに転倒した時の衝撃を吸収してくれるクッション性のある床やヒートショックになりにくい冷たくない床ならなお良いです。

リフォーム方法詳細
滑りにくい床に変更水が残りにくく滑りにくい素材の床材で転倒のリスクを回避。
水はけがよく柔らかい床材がおすすめ。
手すりの設置出入り口付近やシャワー横などの動作をサポート。
シャワーキャリーの設置浴室用の車いすとして浴槽をまたぐ以外の移動が安全。
浴槽に並べて寄せ、座ったまま足を浴槽に入れられる。

床自体をリフォームするのが難しいという方は手すりやシャワーキャリーを設置することをおすすめします。高齢者のみならず、小さい子供や成人でも転倒して骨折や打ち所が悪いと最悪な事態に陥る場合がありますので、日常の危険を排除する上でも有効です。

ヒートショックの原因となる温度差

ヒートショックとは急激な温度の変化によって人体に引き起こされる現象のこと。冬の寒い脱衣所では服を脱ぐと血管が収縮して血圧が急上昇します。その状態のまま熱いお風呂に入ると、今度は血管が広がって血圧が急降下。

失神して浴槽内でおぼれてしまうリスクの他にも心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす危険性が。このようなヒートショックを予防するためには、冬場の脱衣所や浴室内の室温が10度以下にならないように注意しましょう。

リフォーム内容詳細
床材の変更断熱性の高い床材に変更することで、浴室内の気温を上げる。
浴室暖房機の設置お湯との温度差を小さくしてヒートショックを予防。
脱衣所も一緒に温められる機種ならさらに効果が上がる。
脱衣所壁に断熱材を入れる室内の熱を外に逃がさないよう、断熱リフォームを施す。

浴室や脱衣所に暖房を設置して室温を上げる他には、床材や壁に断熱性が優れたものを採用したり断熱材を入れるリフォームも有効です。気温が低下し始める10月から1月がヒートショックが発生するピークになりますので、なるべくなら秋までに工事を終わらせるようにしましょう。

浴室のバリアフリー工事の費用相場は?

ここまで浴室にある危険とその対策としてのバリアフリーリフォームについて見てきましたが、実際に工事をする場合の費用相場をご紹介していきます。現状の浴室によっては、希望するバリアフリーリフォームができない場合があります。専門業者に実際に浴室を見てもらって、希望するバリアフリーリフォームできるかを確認してもらいましょう。

浴槽のバリアフリー化

浴槽のバリアフリー化には主に3つの方法があります。これらの費用相場はこちらです。

工事内容費用相場
浴槽交換工事10万~150万円
浴槽内手すり設置工事~1万円
バスリフト設置工事20万~30万円

浴槽内に手すりを設置する工事では、古い浴槽では水漏れが発生することがあります。もし現状の浴槽が設置してから20年以上経っている時は、浴槽自体の交換を考えた方が良さそうです。

また浴槽に入った状態で手の届かない場所に手すりを設置しようとしていないか?底が滑りにくい浴槽になっているか?についてもあらかじめ確認しておきましょう。

転倒防止の手すりを設置

浴室内に手すりを設置するリフォームは、比較的費用が安くできます。浴室内にあると便利な手すりの位置はこのようになっています。

  • 出入口横の壁
  • シャワーの横
  • 浴槽内
  • 浴槽から出る時につかめる位置

ただし浴室内に手すりを後付けするということは、浴室の壁や浴槽に穴を開けて工事をすることになります。水が入らないように防水処理をキチンとしないと、水漏れや建物基礎部分の腐食に繋がりますのでご注意ください。

工事内容費用相場
壁手すり設置工事3万~5万円

扉を引き戸や折れ戸に変更

お年寄りや体の不自由な方が一人で入浴中に万が一転倒事故があった場合、内開きの扉では体が邪魔になって開閉が思うようにいきません。浴室で倒れてしまった家族を素早く救助するには、引き戸や折れ戸へ変更するリフォームをおすすめします。

工事内容費用相場
浴室ドア変更工事5万~10万円

出入口の段差を低くする

脱衣所から浴室に出入りする段差を低くする工事では、シャワーからのお湯や浴槽からあふれたお湯が脱衣所側に逆流しないか、排水溝の位置などを十分に確認しましょう。

工事内容費用相場
段差解消工事4万~7万円

特に在来工法の浴室では、段差の解消を想定した構造になっていません。思うように排水ができない場合は、浴室全体を思い切ってユニットバスへ交換するのも一つの方法です。

滑りにくい床材に変える

床材を滑りにくい素材に変えるだけでも、浴室内の転倒事故が大幅に減ります。また滑り止め加工だけでなく水はけや転倒時の衝撃吸収、断熱性などがある素材なら、さらにバリアフリーリフォームとして有効です。

工事内容費用相場
床材変更工事10万~15万円

浴室暖房を設置する

ヒートショックを予防するには入浴前の浴室や脱衣所を暖めるのが効果的。性能のよい浴室暖房機は、約15分で浴室を35度まで暖めることが可能で、安全で快適なバスタイムを楽しめます。

工事内容費用相場
浴室暖房機設置工事15万~30万円

さらに乾燥機能や換気機能付きの浴室暖房機なら、洗濯物を浴室内に干して乾燥させたり、夏のじめじめした湿気や入浴後の水蒸気もスッキリと取り除いてくれます。

緊急コールボタンの設置

一人で入浴中に急に気分が悪くなった時には、緊急コールボタンがあれば心配ありません。浴室は最もプライベートな空間の一つ。普段介護が必要とされている方でも、可能なら見守りなしで一人での入浴を楽しみたいでしょう。

工事内容費用相場
緊急コールボタン設置工事3万~5万円

紐を引いて音を出すタイプや押しボタン式など、操作方法が異なる種類がありますので利用者が自分で試してみて操作しやすい商品を選びましょう。

出来ればコンパクトタイプなら置き場所を選ばず浴槽の縁やちょっとしたスペースに設置できるので、不調を感じた時でもすぐに操作できるでしょう。

バリアフリータイプのユニットバスへ変更

ご自宅の浴室が在来工法で手すりを設置する、浴槽を交換するなど一部分のみのバリアフリーリフォームが難しい場合は、浴室丸ごとバリアフリー対応のユニットバスへ変更するという方法があります。

工事内容費用相場
ユニットバスからユニットバスへ50万~200万円
在来工法からユニットバスへ80万~300万円

近頃のユニットバスは、高齢者にも優しいバリアフリー仕様が標準となっています。また専用のバリアフリー部材を追加で取り付けられるようにも設計されているので、使いやすさを実感できるでしょう。

ミドルクラスのユニットバスに下記のようなバリアフリー部材を追加した場合、費用相場は140万円前後となります。

  • 浴槽内手すり
  • 段差なしタイプ
  • 幅広引き戸
  • つかまり棒兼シャワーヘッド

浴室のバリアフリーリフォームをお得にする方法

浴室に限らず住居のバリアフリーリフォームをする際には、国や自治体の助成金制度を活用できます。こちらでは代表的な助成金・補助金制度をご紹介していきます。

複数を組み合わせて申請できる制度もありますので、ご自分でもよく調べてからリフォームするようにしましょう。

国の制度「ライフサポート推進事業」を利用

国が行っている補助金制度「ライフサポート推進事業」では、手すり設置や床の段差解消などのバリアフリーリフォームに対して補助金が出ます。いくつかの要件に当てはまることが必要ですが、これらを満たしていれば工事費用総額の1/3の金額を最大100万円まで補助してくれます。

  • 既存の住宅であること
  • リフォーム後の広さが戸建てで55㎡・集合住宅で40㎡以上であること
  • 補助対象となる工事費の合計が30万円以上であること

介護保険による助成金制度でお得に

介護保険の「高齢者住宅改修費用助成制度」では、要介護認定で「要介護」または「要支援」と判定されている要介護者の自宅を改修する場合、住宅改修費の上限20万円の9割、つまり18万円まで受け取れます。

給付の対象となるリフォーム工事は下のような工事です。これら6項目のいずれかに当てはまれば支給されます。

1 手すりの取り付け
2 段差の解消
3 滑りの防止および移動の円滑化などのための床又は通路面の材料の変更
4 引き戸等への扉の取替え
5 洋式便器などへの便器の取替え
6 その他、1から5までの住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

上記の条件は浴室以外のトイレや廊下、玄関などのバリアフリーリフォームにも当てはまります。ただし壁紙の交換や水栓金具の変更など、バリアフリーと関係がないリフォーム工事の費用は計算に含まれませんのでご注意ください。

申請の手順は、まず工事前に下記の必要書類を市区町村役場の介護保険課へ提出します。

  • 支給申込書
  • リフォームが必要な理由書
  • 見積書
  • 写真や図で示した完成予定が分かる書類

リフォーム工事が完了したら一度業者へ費用の全額を支払い、再度必要書類を窓口へ提出します。

  • 工事代金を支払った領収書
  • 工事内訳
  • 完成後の状態と撮影日が分かる写真(工事前と工事後の二枚)

無事に申請が通れば、バリアフリー化工事費用の90%の金額が指定の口座へ振り込まれます。ただしリフォーム工事を行った住宅の所有者が、要介護認定等を受けている方ではない場合、工事完了後に承諾書を追加で提出する必要があります。

詳しくはお住いの市区町村役場の介護保険課か、担当のケアマネジャーにお問い合わせください。

自治体独自の補助金制度を活用

介護保険など国が行っている助成金制度の他にも、自治体単位で住宅のバリアフリー化工事を対象とした補助金制度を利用できることがあります。

例えば東京都千代田区では「高齢者福祉住環境整備」という名目で、工事費用の一部給付を行っています。この給付は要介護認定を受けていない方を対象に、区独自の基準から介護予防や自立支援の観点で改修が必要と認められた方に給付されます。浴槽の交換工事では379,000円を上限として、工事内容によって金額が変わります。

東京都千代田区のようにお住いの市区町村でも給付金制度や補助金制度を設けている自治体が多くありますので、ホームページや窓口へ問い合わせてみてはいかがでしょうか?

浴室のバリアフリー工事は介護リフォームが得意な業者に依頼

高齢者や体の不自由な方が毎日を快適に人間らしく過ごすうえで、浴室のバリアフリーリフォームは欠かせません。また今は元気でも将来歳を取った時のことを考えて、浴室のバリアフリー工事は有効です。

バリアフリー工事は通常のリフォーム工事とは違い、介護する人とされる人の両方の視点から見る必要があります。そのため「福祉住環境コーディネーター」の有資格者やバリアフリーリフォームが得意な設計者がいる業者に依頼することをおすすめします。

もし近くにそのような業者が見つけられないという方は、ケアマネジャーや介護施設の担当者などに相談してみましょう。バリアフリーリフォーム適切にを行って、家族や自分が快適に過ごせる浴室に改修してください。