廊下をバリアフリーにする6つのポイント&お得にする3つのコツを解説!

廊下は毎日通る場所にもかかわらず、リビングなどに比べると広さや明るさはあまり考慮されていません。高齢者や体の不自由な方が家族にいるお宅では、事故が起こりやすい危険な場所になっている場合も。今回は廊下を安全な場所へとバリアフリーリフォームするポイントを中心にご紹介していきます。

廊下をバリアフリーにするポイントとは?

バリアフリーリフォームとは、高齢者や体の不自由な方が感じる家の中のバリア(障壁)をフリー(取り除く)ことを目的とした工事です。特に廊下は明るさや広さをあまり考慮されていないことが多いため、バリアフリー化すべきところがたくさんあります。

ある程度身体機能が衰えても安心・安全に移動できるような廊下にするためには、これから解説するようなバリアフリーリフォームを行ってください。

廊下幅は78㎝以上・車いすなら85㎝以上必要

まずリフォームが必要なのは幅の狭い廊下です。壁の手すりを持った伝い歩きの場合、廊下幅は78㎝以上確保しましょう。車いすを使用するなら最低でも85㎝以上の廊下幅が必要です。

特に車いすは廊下の角を直角に曲がることは難しいため、さらにゆとりを持った廊下幅にしましょう。また介護する方とされる方が並んで歩ける廊下幅にするということも重要。これらのことを考えれば廊下は80~90㎝ほどの幅を確保することをおすすめします。

トイレや浴室、寝室への移動で必ず通る場所なので、廊下幅を広げるバリアフリーリフォームは、居室の広さを多少犠牲にしても行った方が良いでしょう。

部屋との段差をなくしてつまづきにくくする

廊下に段差がある家や居室との間の敷居に段差がある場合はつまずいて転倒する恐れがあるため、段差を全て解消しましょう。特に和室と接している昔の造りの住宅の場合、和室との段差は3.5㎝程度あります。若い人にとってはあまり気が付かないことですが、このような段差は高齢者にとって不自由さを感じるポイントです。

現在車いすや歩行器を使っている方にとっては、部屋に入れないなどの不都合が生じるバリアですので至急改善が必要です。さらには床面だけでなく壁も一緒にリフォームしましょう。うっかり転倒した時にぶつかっても壊れにくく痛くない素材にすれば、さらに安全性が高まります。

廊下の段差を解消するためのリフォームは、主に次のような方法があります。それぞれ予算が異なりますので、バリアフリーリフォームの工事範囲によって工事内容を決めてください。

  • 廊下の床をかさ上げする
  • 敷居や戸枠の交換や撤去
  • 段差解消スロープを設置

床材には滑りにくく転倒しても安全な素材を使用

段差を解消した廊下には滑りにくく転倒しても安全な素材を張ってください。こうした条件を満たす床材には次のような種類があります

  • コルク
  • カーペット
  • ビニル系の床材

いずれも足を滑らせにくく、万が一転倒してもクッション性があるのでケガがしにくいのが特徴です。ただし将来車いすや歩行器を使うようになった時のことを考えて、車いすでも往来しやすい素材にリフォームするのもおすすめです。

移動や部屋への出入りに便利な手すりを設置

廊下の移動や部屋の出入りがしやすいよう、手すりを設置する工事もバリアフリーリフォームでは有効です。この手すりは移動をしやすくするだけでなく、体のバランスを確保する上でも重要です。

設置方法は床面から75~80㎝ほどの高さを原則として、その家に住む人が使いやすい位置に設置しましょう。また手や指にフィットする素材を選び、体重をかけてもグラつかないように壁にしっかりと固定してください。

廊下の移動に沿って横手すりを並べるか、連続手すりを設置。部屋の前に来たら扉の開け閉めができるように縦手すりを付けましょう。現在手すりが必要ない場合でも将来のことを考えて、リフォームの際には内壁に手すり設置用の下地を入れておくと良いでしょう。

夜間の足元を明るく照らす足元照明を採用

夜間にトイレへ行く際、足元が暗くならないような足元照明を取り付けるバリアフリーリフォームが増えています。これは高齢者だけでなく家族全員にとって便利なリフォームです。

床から30㎝ほどの位置に明るすぎない優しい色の照明がおすすめ。日中は目立たないデザインで、壁から突出しないように設置すれば歩く際の邪魔になりません。JISでは階段や廊下に付ける照明の推奨照度を50ルクスとしているので、バリアフリーリフォームではこれよりも明るい照明が良いでしょう。

この足元照明はスイッチで点灯するタイプよりも、人の動きで感知する人感センサーがおすすめです。廊下に出たら点灯するように出入り口付近に1カ所と、廊下の長さが2m以上ある場合はそこに1カ所、トイレ扉の付近にもう1カ所設置すると安全です。

出入口の開き戸を引き戸にする

部屋の出入口ドアが開き戸の場合、引き戸にすることをおすすめします。部屋の内や外に開く開き戸は開閉時に体のバランスを崩す恐れがあります。また筋力が低下した高齢者にとっては、ドアが重く感じて開閉する行動が負担に感じる場合も。

そのような筋力が低下した高齢者や車いす利用者にとっては、軽い力で開け閉めできる引き戸にリフォームが有効です。予算や現状の関係でドアをリフォームできない場合でも、丸いノブをレバー式に変えるだけでも開ける力が少なくて済みます。

ヒートショック予防のためには床下暖房がおすすめ

冬場のヒートショック予防には、床下暖房や断熱リフォームがおすすめです。

ヒートショックとは冬場、暖房の付いた暖かい部屋から寒い廊下に出た際に、その急激な温度変化で血圧が急上昇して心拍数に影響を与える現象のこと。特に持病のある方や体温調節機能が衰えた高齢者に怖い現象で、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾患につながる恐れがあります。

ヒートショックを予防するためには居室と廊下の温度差をなくすことが大切。建物全体の断熱性が低い場合は断熱材を床や壁に入れるリフォームがおすすめです。さらにフロア全体に床暖房を設置すれば、どこに行っても同じ室温が保てます。

床下暖房には熱源の違いで次のような特徴があります。

熱源特徴
電気ヒーター式電熱線が入ったパネルを床下に設置するため狭い場所におすすめ。
熱源は電気でランニングコストがかかる場合がある。
熱源機を別で設置しなくても良いので初期費用が掛からない。
メンテナンスがほぼ必要ないが暖かくなるまで時間がかかる。
温水式屋外に設置した熱源機で温めた温水を床下に這わせたパイプに通す。
深夜電力を使用すればランニングコストがかからない。
熱源機の定期的なメンテナンスが必要で、屋外に場所を取る。
温かくなるまでが早く、長時間の使用におすすめ。

さらに施工方法には「分離型」と「一体型」の2種類があります。それぞれの仕上げ材の特徴を見ていきましょう。

種類特徴
分離型床材とパネルがバラバラなのでカーペット敷きにも対応可能。
床板張り替えリフォームにおすすめだが暖まるまで時間がかかる。
一体型床材とパネルが一体化しているため、すぐ暖まる。
既存の床に重ね張りできるなど施工がスムーズで施工費が安い。

既存の床や下地の劣化状況やランニングコスト、施工後の床の高さをどうするかなどを総合的に考えて適切な床下暖房を選びましょう。

廊下をバリアフリーにリフォームする費用相場を解説!

実際に上記のようなバリアフリーリフォームをする場合、費用はどの位かかるのでしょうか?相場の価格を解説していきます。

廊下幅拡張工事の費用相場

廊下幅を広げるリフォームでは、左右の部屋を狭くすることにも繋がるため大規模な工事となります。

工事内容費用相場
廊下幅拡張工事30万円~100万円

廊下幅の拡張工事の平均価格は30万~100万円程。周囲の居室の変更箇所や廊下の長さによって多少の変動があります。

ただし廊下の壁が筋交いの入った耐力壁の場合、家の構造上撤去することはできません。木造在来工法で建築された戸建て住宅では廊下幅の拡張リフォームを行えないことがあるためご注意ください。

段差解消工事の費用相場

廊下の段差を解消する工事には、段差解消スロープを設置する比較的軽微なリフォームから、廊下の床をかさ上げする大規模なリフォームまであります。そのためリフォーム費用の相場はこのようになります。

工事内容費用相場
段差解消工事2万円~15万円(箇所)

スロープを設置するのみの工事は2万円から可能です。敷居などの段差を取り除く工事は1カ所4万~8万円ほど、廊下の床自体をかさ上げするには15万程度かかります。

床材変更工事の費用相場

廊下で足を滑らせて転倒しないように床材を滑らないクッション性がある物に交換するリフォーム工事では、既存の床の上から重ね張りする方法と床材を撤去して新しい物に交換する張り替えの2種類があります。

工事内容費用相場
床材張り替え工事(張り替え)6万円~10万円
床材張り替え工事(重ね張り)5万円~8万円

カーペットは滑りにくく柔らかい素材なので廊下の床材に向いています。また既存の廊下に重ねて張れるので費用も5万~8万円程で済みます。既存のフローリングなどを撤去してコルクなどを張り替える工事では、撤去費が余分にかかるため6万~10万円程の費用となります。

手すり設置工事の費用相場

手すり設置工事では、手すりの費用3千円~2万円/mと取付施工費が1万~3万円程かかります。

工事内容費用相場
手すり設置工事1.5万円~2万円/箇所

ただし手すりに人感センサー付き照明が内蔵されているタイプや滑り止めが付いているものは相場よりも高めになります。

また手すりを取り付ける壁は、大人の体重以上の力が一か所にかかるため、下地がしっかりしていなければなりません。下地が入っていない壁の場合には下地補強工事が別途必要となります。

手すり工事は素人でも簡単にできそうに見えますが、設置後の事故を予防するためにも福祉リフォームの実績が豊富な業者にお任せすることをおすすめします。

足元照明設置工事の費用相場

足元照明設置のリフォームは、ホームセンターなどで商品を購入して自分で取り付けることも可能ですが、壁に埋め込むような工事の場合はプロに依頼しましょう。業者に取り付けてもらう場合の費用はこちらです。

工事内容費用相場
足元照明設置工事1万円~(箇所)

簡単なタイプの足元照明なら、材料代と施工費込みで1万円前後で設置が可能です。

引き戸変更工事の費用相場

開き戸から引き戸へ変更するバリアフリーリフォームの場合、引き戸本体の価格に大きく左右されます。サイズの大きさや厚さ、断熱性や機能などに応じて下記のような費用となります。

工事内容費用相場
引き戸変更工事10万円~30万円

通常の引き戸への交換なら10万~30万円前後が平均価格です。ただしバリアフリーに特化した専用の引き戸への交換では20万~50万円程かかります。このような引き戸は高齢者でも力を入れずに開け閉めでき、ゆっくり閉まるストッパー付きなど機能が充実しています。

床下暖房工事の費用相場

床下暖房工事は、熱源の種類や施工方法によって大きく費用が変わってきます。

床暖房の種類施工方法費用相場(1畳)
電気式床暖房重ね張り
張り替え
4万~7万円
6万~10万円
温水式床暖房重ね張り
張り替え
6万~8万円
8万~12万円

電気式床暖房の場合は重ね張りで4万~7万円、張り替えで6万~10万円が相場です。一方の温水式床暖房は重ね張りが6万~8万円、張り替えが8万~12万円ほどとなります。

廊下のバリアフリー化をお得にするには?

廊下のバリアフリーリフォームをお得にするには、介護保険や自治体の助成制度を利用しましょう。代表的な支給制度をご紹介しますので、該当する場合は積極的に活用してください。

介護保険の住宅改修費制度を利用

要介護・要支援認定を受けた方が、自分で所有している住居をバリアフリーリフォームする場合、介護保険を利用して工事費の一部を支給してもらえます。支給限度額は20万円で、実際のリフォーム代金の9割が支給されます。

これは上限額に到達するまで何度工事をしてもOKですが、支給の対象となる工事には以下のような条件があります。

  1. 手すりの取付け
  2. 段差の解消
  3. 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
  4. 引き戸等への扉の取替え
  5. 洋式便器等への便器の取替え
  6. その他、上記の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

介護保険の住宅改修費制度を利用する手順は以下の通りです。

  1. 要介護認定を受ける
  2. 担当のケアマネジャーに相談
  3. リフォーム業者を決定して見積もり・工事プランを作成
  4. 自治体に事前申請を行う
  5. 承認が出たら工事着工
  6. 工事が完了したら代金を全額業者へ支払う
  7. 完了後の申請を行う
  8. 申請が通ると補助金が支給される

4.の事前申請で必要な書類はこのようになっています。

  • 支給申請書
  • 住宅改修が必要な理由書
  • 工事費見積書
  • リフォーム前の現状が分かる写真
  • リフォーム後の予定間取りを示した図面

7.の事後申請で必要な書類はこちらです。

  • 領収書
  • 工事費内訳書
  • リフォーム後の状態が分かる写真

こちらの制度では工事前の計画段階と工事後の代金を全額業者におさめた後の2段階で申請が必要となります。申請に関して質問や不明な点がある場合は、お住いの役場の介護保険担当部署やケアマネジャーに相談してください。

市区町村の助成金制度を活用

市区町村単位でもバリアフリーリフォームの助成金制度があります。利用条件や支給額、申請時期などはそれぞれの自治体によって異なります。

中には介護保険と併用して利用できるものや、着工前に申請が必要なものもあります。少しでも助けになる制度ですので、改修が必要な住宅がある自治体のホームページや窓口でお問い合わせください。

バリアフリーリフォーム減税を申請

該当するバリアフリーリフォームを行うと、所得税が減税される国の制度があります。詳細は次のようになっています。

  • 控除期間・・・1年間(改修後に住み始めた年の分のみ適用される)
  • 控除限度額・・・200万円
  • 控除率・・・控除対象額の10%
  • 控除対象者・・・要介護者自身とそれらの人と同居する人

毎年の確定申告の時に必要書類を持参します。のちに還付金という名目で所得税が減税されます。

廊下のバリアフリーは介護リフォームが得意な業者に依頼

バリアフリーリフォームは通常のリフォームとは異なった配慮が必要です。使う人が高齢者か体の不自由な方か、介助する人がいるかによってもリフォーム方法が変わってくるためです。

そこで介護リフォームを専門に行っている業者や工事実績が豊富な会社に依頼しましょう。福祉住環境コーディネーターの有資格者や介護リフォーム専門の設計者がいる会社なら、現状に即したバリアフリーリフォームが可能です。

さらに介護保険を利用した補助金制度や減税制度も申請手続きや必要書類をそろえるのが大変で、すべて自分たちだけで行うのは難しい場合があります。そうした点でもバリアフリーリフォームの実績がある業者は頼りになるはず。プロの手を上手に借りながら、スムーズで適切な廊下のバリアフリーリフォームをしましょう。