お風呂でバリアフリーできる7か所の費用相場を解説!お得になる補助金制度も

お年寄りや障害のある方が家の中でも快適に暮らせるためには住宅のバリアフリー化が必要です。特に毎日入るお風呂は、最もバリアフリーをしなければいけない場所の一つ。お風呂のバリアフリー化にはどのようなリフォーム方法があるのか、リフォームにはどの位の費用がかかるのかについて解説していきます。

お風呂のバリアフリーはどうして必要?

そもそもお風呂のバリアフリーリフォームはどうして必要なのでしょうか?お年寄りと介助する側の両方の視点で見ていきましょう。

お風呂はお年寄りが事故を起こしやすい場所

実はお風呂というのは家の中でも特にお年寄りが事故を起こしやすい場所。統計によると家の中で起こった事故のうち、何と30%以上がお風呂内で発生しています。そして65歳以上の高齢者に限ると、毎年5,000人以上もの方が何らかのアクシデントでお風呂で溺れて死亡しています。

特に足の筋力や運動機能が低下しているお年寄りは水で濡れたお風呂では転倒しやすく、打ち所が悪いと骨折によって寝たきりになる場合も。またシャンプーや石鹸なども足元を滑りやすくする大きな原因になります。

さらに冬場の入浴では、寒いお風呂場から熱い湯船に入った時に血圧の乱高下により失神してしまったり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な症状に見舞われることも。これは「ヒートショック現象」と呼ばれ、こうした症状が起きやすいのもお風呂場の特徴です。

このようにお風呂はお年寄りにとって決して安全とは言えません。少しでも長く一人で快適に入浴してもらうためにはお風呂のバリアフリーリフォームが必要となります。

介助や介護する人にとってもメリットが

入浴するお年寄りだけでなく、お年寄りを介助や介護をする人にとってもお風呂のバリアフリーリフォームには大きなメリットがあります。

介助をする方はお年寄りを入浴させるために、体の動きに合わせて様々な体勢を取ったり、要介助者の体重を受け止めなければなりません。そこで介助者にとっても滑りにくく安全なリフォームが有効となります。

また入浴中の介助では体を大きく動かして補助したり、体勢を変える必要も。体が動かしやすいようにお風呂を広くリフォームする工事も有効です。さらには車いすのままで入浴できるバスタブや電動で体を持ち上げられるバスリフトなどを設置すると、介助する方の大きな手助けになります。

介助される側の身体状態にもよりますが、介助する方の目線も重要視しながらお風呂のバリアフリーリフォームを進めましょう。

お風呂のバリアフリーリフォームにかかる箇所別費用とは

では実際にお風呂のバリアフリーリフォームにかかる費用の相場はどの位なのでしょうか?リフォーム箇所ごとに詳しく解説していきます。

浴槽のバリアフリーリフォーム

浴槽のバリアフリーリフォームには次のような方法があります。

  • 縁の高さが低くまたぎやすい浴槽にする
  • 腰掛けて入れるように浴槽の縁を広くする
  • 浴槽の内側に段差やスロープを設けて入りやすく肩まで浸かれるようにする
  • 浴槽の床に滑り止めを付けて体が沈み込まないようにする
  • 浴槽をまたぐ際に掴まれる手すりを設置
  • 自力で浴槽に入れない方にはバスリフトを設置
  • 楽に入れるステップを浴槽脇に置く

特に在来工法の浴槽は幅が狭く浴槽の底が深いのが特徴。足腰の筋力が弱くなったお年寄りにはとても入りずらく、転倒のリスクが高くなります。同時に浴槽を出入りする際にしっかりと体を支えられる手すりを設置するのもおすすめ。その場合には壁の内側に水が漏れださないようにしっかりと壁や浴槽に防水処理を施しましょう。

もし既存の浴槽をそのまま活用したいなら、浴槽の1/3を床に埋め込んだ「半埋め込み式」の施工方法がおすすめ。浴槽の縁が低くなるので、お年寄りでも楽に出入りができるようになります。

自分の力で浴槽に入れない方には電動で入浴できる昇降リフトを設置してみては?自分で体を動かす必要がなく、介助する方の労力もかなり省くことができます。

もし浴槽自体に手を加えられないなら、浴槽の脇に階段状のステップを置くだけでも楽に出入りできます。安定性の高いステップを選び、付近には掴まれる手すりを設置するとより安心して使えるでしょう。

工事内容費用相場
浴槽交換工事50万~100万円
浴槽手すり設置工事(1か所)1万~3万円
昇降リフト設置工事20万~40万円
ステップ設置工事1万円前後

浴槽をバリアフリー対応の物に交換するには50万~100万円ほどかかります。手すりは一か所に付き1万~3万円、昇降リフトは20万~40万円で設置が可能です。

出入口の段差解消リフォーム

足腰の弱ったお年寄りは、脱衣所からお風呂場に入る際のほんの少しの段差でもつまづいて転倒することがあるので、適切な段差解消リフォームが必要です。在来工法のお風呂場に段差がある場合は、段差を解消してフラットにするか2㎝以内の段差にリフォームしましょう。

その場合、シャワーや浴槽からあふれたお湯が脱衣所側に逆流しないよう、床になだらかな傾斜を付けたり、排水機能を適切に追加してください。

特にドアを開けてお風呂場に入る際には足元がおろそかになりがちです。段差につまづいたことがある、段差が気になると感じた場合は、出入り口の段差解消リフォームを検討してみましょう。

工事内容費用相場
段差解消工事3万~7万円

お風呂の段差解消工事にかかる費用は3万~7万円が相場です。

滑りにくい床材へリフォーム

ただでさえ水やシャンプーなどで滑りやすいお風呂の床材は、滑りにくく水はけのよいものへリフォームしましょう。加えて万が一転倒しても衝撃を吸収してくれるような床材ならさらに安全です。

ヒートショック現象を予防するには断熱性の高い床材にすることも有効。様々な機能を備えた床材にリフォームして、家族全員が快適にお風呂に入れるようにしてみては?

工事内容費用相場
床材変更工事10万~15万円

お風呂の床材変更工事にかかる費用は10万~15万円ほどです。

扉を引き戸に変更

出入口ドアがお風呂場側に開く開き戸の場合、中で転倒してしまうと体が邪魔になって外からドアが開けにくくなります。そこで開き戸を引き戸へ変更するリフォームがおすすめ。引き戸は少しの力で開閉でき、ドアの奥や手前に広いスペースを必要としないので、バリアフリーリフォームにピッタリです。

他にも外から開けやすい折れ戸に変更したり、扉にガラスがはめ込まれている場合は割れにくい強化ガラスやプラスチックに変えることもおすすめ。

特に高齢者の浴室内の事故というのは、初期対応が遅れると症状が重篤化しやすい傾向にあります。なるべく早めに処置ができるよう、扉を外から開けやすいタイプに変更するリフォームが大切になります。

工事内容費用相場
引き戸変更工事5万~10万円

お風呂の引き戸変更工事にかかるのは5万~10万円前後です。

転倒防止用の手すりを設置

手すりを設置するのは浴槽付近ばかりではありません。次のような場所に設置すると、お年寄りもより安全にお風呂に入れるでしょう。

  • 出入口横の壁
  • シャワーの横
  • 浴槽内
  • 浴槽から出る時につかめる位置

人が立ち上がったり戸を開け閉めしたり、またぐ動作をするような場面では、体のバランスを崩しがちです。転倒を予防するにはこれらの動作をする場所に手すりを設置するのがおすすめ。

使う人の体格や身長、体の動かし方によって手を掛けやすい場所が変わります。したがって手すりを設置する際には、実際に使用する方が最も使いやすい場所に取り付けることが重要になります。

工事内容費用相場
手すり設置工事(1か所)3万~5万円

お風呂の手すり設置工事にかかる金額は、一か所に付き3万~5万円前後です。比較的手軽にリフォームできるので、必要な場所には忘れずに設置しましょう。

ヒートショック対策の浴室暖房

お風呂のヒートショック対策には浴室暖房の設置がおすすめ。ヒートショックは熱い湯船と寒い浴室との急激な温度変化が原因となりますので、浴室の温度を上げて気温差をなくすことが有効です。

浴室暖房の中には脱衣所も一緒に温めてくれるタイプがあります。また人感センサー搭載型なら人がいなくなると自動でスイッチが切れ、消し忘れを防いでくれます。他にも乾燥機能付きの商品などもありますので、希望に応じた機能を選んでみては?

工事内容費用相場
浴室暖房設置工事5万~15万円

浴室暖房の設置工事の相場は5万~15万円前後です。

緊急通報ボタンを付ける

お年寄りや体の不自由な方が一人でお風呂に入る時には、いざという時に外部にお知らせできる緊急通報ボタンがあると安心です。お風呂はトイレと同じくらいプライベートな場所。なるべくなら見守りなしで一人でお風呂に入りたいと考えるお年寄りも多いと思います。

緊急通報ボタンにはひもを引くタイプや押しボタンを押すタイプなどがあります。利用する方が使いやすいものを選ぶことが大切です。

工事内容費用相場
緊急通報ボタン設置工事3万~5万円

緊急通報ボタン設置工事にかかる費用の相場は3万~5万円ほどです。

お風呂のバリアフリーリフォームをお得にするには?

お風呂のバリアフリーリフォームには様々な補助金制度や助成金制度を活用できます。お金のことを気にせずにリフォームするには、このような制度をぜひ活用しましょう。

介護保険の助成金制度を活用

介護保険制度で要介護・要支援の認定を受けているなら、「高齢者住宅改修費用助成制度」が利用できます。これは主に以下の工事を対象としています。

  1. 手すりの取り付け
  2. 段差の解消
  3. 滑りの防止および移動の円滑化などのための床、または通路面の材料の変更
  4. 引き戸などへの扉の取替え
  5. 洋式便器などへの便器の取替え
  6. その他1から5までの住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

上記の工事にかかった金額の上限を20万円までとして、1割の自己負担で最高18万円までが介護保険から支給されます。この制度を利用するにはリフォーム工事着工前と施工完了後の申請が必要で、お住いの市区町村の介護保険窓口へ必要書類を提出します。

工事着工前にはこのような書類を提出します。

  • 支給申込書
  • 住宅改修が必要な理由書
  • 工事見積書
  • 写真又は簡単な図など完成予定の状態が分かるもの

工事完了後にはこちらの書類が必要となります。

  • 工事費用の領収書
  • 工事内訳書
  • 完成後の状態を確認できる書類 (リフォーム箇所の工事前と工事後が分かる写真で撮影日が分かるもの)

必要書類を見ると分かる通り、一度施工業者に工事費の全額を支払わなければなりません。申請が通った後で9割相当分の金額が振り込まれるという仕組みです。

国の「ライフサポート推進事業」補助金を利用

国の機関・国土交通省が進めている「ライフサポート推進事業」という制度があります。これは面積が55㎡以上の戸建て住宅か、40㎡以上の共同住宅が対象です。バリアフリー工事のみならず住宅の性能を向上させるリフォーム工事に対して支給されます。

補助の金額は、対象となる工事費用の合計が30万円以上で、かかった費用の1/3または100万円までを限度額とします。詳しくは国土交通省のホームページをご確認ください。

自治体独自のリフォーム補助金を使う

国の補助金制度や介護保険を使った助成金制度の他にも、お住いの地方自治体独自が打ち出しているリフォーム補助金制度があります。

自治体独自のリフォーム補助金には、介護認定されていなくても対象となるものがあります。また介護保険との併用ができる制度もありますので、積極的に調べてみてはいかがでしょうか?詳しくはお住いの自治体の担当窓口や公式ホームページをご確認ください。

お風呂のバリアフリーリフォームは補助金制度を利用してお得にしよう!

お風呂にはお年寄りが快適に入浴するため、介助者が安全に介助できるバリアフリーリフォームがあります。身体の状態や掛けられる予算に応じて、最適なリフォームを行ってください。

お風呂のバリアフリーリフォームには介護保険や国の制度を利用した補助金制度があります。また介護保険と併用できる自治体独自の制度などもありますので、上手に活用してお得にリフォームを進めましょう。