外壁材としてよく使われているサイディングに、樹脂製があるのをご存知ですか?今回は日本でこれから普及するであろう樹脂サイディングについてご紹介。「メンテナンスいらず」として知られている樹脂サイディングの特徴や、費用を抑えるポイントについて詳しく解説していきます。
樹脂サイディングとは?

樹脂サイディングとはどのような素材で、どんな特徴があるのでしょうか?樹脂サイディングの基礎知識について見ていきましょう。
樹脂サイディングは塩化ビニル樹脂が原料
そもそも「サイディング」というのは、板状になっている外壁材のこと。モルタルのような塗り壁に比べて技術がそれほど必要なく施工できることから、新築の戸建て住宅を中心にトップシェアを誇る外壁材です。
そして樹脂サイディング(Vinyl Siding)とは、塩化ビニール樹脂製のサイディングボードのこと。塩化ビニール樹脂は、原料の60%が天然塩・40%が石油のプラスチックの一種です。
樹脂サイディングは1965年にアメリカで初めて製造されると、1990年代にはカナダや北米を中心に一気にシェアが拡大しました。日本には1990年代の後半ごろに紹介され、外壁材の凍害に悩まされている北海道をはじめとする寒冷地で普及し始めています。
とはいえ日本国内では外壁材全体のわずか1~2%ほどの普及率です。日本ではあまり認知されていない外壁材ですが、多くメリットがある外壁材として大いに期待が持てる新素材です。
樹脂サイディングの特徴
では実際に樹脂サイディングの特徴を見ていきましょう。樹脂サイディングにはメリット・デメリットや施工方法には他のサイディングと異なる特徴があります。
樹脂サイディングのメリット
塩化ビニール樹脂で出来た樹脂サイディングならではのメリットはこちらです。
メリット | 詳細 |
耐用年数が長い | 商品によっては耐用年数が30年ほどと長期。 シーリングが不要でメンテナンス頻度が少なくても劣化しにくい。 |
軽量である | 重量は窯業系サイディングの1/10ほど。 建物への負担が少なく耐震性が高い。 重ね張りにも対応可能で、費用を抑えられる。 |
変色しにくい | 素材自体に顔料が含まれているため変色しにくい。 |
耐凍結性が高い | 撥水性が高く水や湿気を吸わない素材のため凍結しにくい。 凍結して割れることが無いため寒冷地でおすすめの外壁材。 |
塩害に強い | 潮風に含まれる塩分でサビることが無い。 海岸沿いに立つ住宅の外壁にもおすすめ。 |
防火性に優れている | 450度になるまで燃えないため、簡単に火が付かない。 他に燃えている物と接していない限り火は消える。 |
防水性が高い | 撥水性が高いため雨水の侵入を防ぐ。 オープンジョイント工法ならさらに雨水が入りにくい。 |
割れのリスクが低い | 独特の弾力性を持っているため衝撃により割れる心配がない。 強風で硬い物がぶつかっても凹みや割れが発生しにくい。 |
樹脂サイディングのデメリット
メリットがあればデメリットもあるのは当然のこと。ただしこれからご紹介するデメリットは日本での普及がもっと進めば、解消されるだろうと期待がもてます。
デメリット | 詳細 |
色・デザインの 種類が少ない | 他のサイディングと比べるとデザインや色のバリエーションが少ない。 ただし木目模様など立体感のある見た目にすることができる。 |
施工業者が少ない | 日本での取り扱いが少ないため、施工業者が限られている。 |
施工費が高額 | サイディング材の生産数が少なく施工業者がいないため、施工費が高くなる。 |
温度差で伸縮する | 原料の性質上、気温が高いと膨張し、低いと収縮する。 夏と冬では隙間の間隔を変え、下地との隙間を開ける必要がある。 |
樹脂サイディングはシーリングが不要
樹脂サイディングの大きな特徴に、他のサイディングで必要なシーリング(コーキング)がいらないという点があります。通常サイディングを施工する場合、板状のサイディング同士の隙間をシーリング材を充填して埋めます。これはサイディングの隙間から雨水の侵入を防ぐために必要な工程です。
しかし樹脂サイディングは裏打ち材がなく、ボード同士を重ね合わせる「オープンジョイント工法」で施工するため、シーリングを使う必要がありません。シーリングの耐用年数は10年前後のため時期が来たらシーリングの補修をしなければいけませんが、樹脂サイディングではその手間が省けるのです。
樹脂サイディングは採用率が低く施工業者が限られる
メリットがとても多い樹脂サイディングですが、日本の住宅外壁にはほとんど使われていないのが現状です。その理由として樹脂サイディングを製造したり販売するメーカーの数が少ないことと、施工できる業者が限られてしまうことが挙げられます。
そのため樹脂サイディングのデザインバリエーションが乏しかったり、施工費用が高額になるというデメリットが生じます。もちろん今後普及すればこれらの問題点は解消するでしょう。
樹脂サイディングと他のサイディング材との違いを比較
サイディングには樹脂サイディングの他に、材質の違いで窯業系・金属系・木質系の3種類があります。全部で4種類あるサイディングそれぞれの特徴を比較してみましょう。
種類 | 樹脂系 サイディング | 窯業系 サイディング | 金属系 サイディング | 木質系 サイディング |
耐久性 | ◎ | ○ | ◎ | △ |
耐震性 | ◎ | ○ | ○ | ○ |
耐凍結性 | ◎ | △ | ◎ | △ |
耐火性 | ○ | ◎ | ○ | △ |
デザイン性 | △ | ◎ | ○ | ○ |
耐用年数 | 30年 | 10年 | 15年 | 10年 |
樹脂サイディングは高額でデザイン性では他のサイディングに劣りますが、耐久性や耐凍結性、耐震性では圧倒的にリードしています。ここからも樹脂サイディングの実用性が分かるのではないでしょうか。
主な樹脂サイディングのメーカー・主要商品
取り扱うメーカーが日本ではまだ少ないとはいえ、メーカー各社それぞれに独自の技術やデザインを開発して、新たな樹脂サイディングを発売しています。ここでは樹脂サイディングの主要メーカーと主なブランドをご紹介していきます。
メーカー名・主要商品 | 特徴 |
LIXIL・WALL-J | メーカー保証30年が付いた樹脂サイディングのシリーズ。 淡色と落ち着いた配色の2種類があり上品なデザインに定評。 |
プライジェム・Mastic | 樹脂建材を取り扱うアメリカのメーカー。 日本の輸入住宅業者で施工実績があり、カラーバリエーションが豊富。 |
ゼオン化成・ゼオンサイディング | 樹脂加工技術を得意とするメーカーの樹脂サイディング。 横張り・縦張りに対応する商品ラインナップが特徴。 |
エポックス・永久美人 | メーカー保証30年が付いた高耐久のサイディング。 最高級の酸化チタンを配合して、施工もメーカー自らが行っているのが特徴。 |
LIXILとエポックス社の二社で、メーカー保証30年が付いています。これは樹脂サイディングの耐久性が高く、「メンテナンスフリー」と言われる理由の一つです。
樹脂サイディングのリフォームにかかる費用とは?

実際に樹脂サイディングを住宅の外壁に張る場合、どの位の費用がかかるのでしょうか?外壁のリフォームに樹脂サイディングを検討されている方は参考にしてください。
樹脂サイディングと他のサイディング材との価格の違い
外壁のリフォーム工事にかかる費用は、外壁材本体価格+施工費で計算されます。ここでは樹脂サイディングを含むサイディング4種類の費用相場を比較してみましょう。
サイディングの種類 | 単価/㎡ |
窯業系サイディング | 3,000円~5,000円 |
金属系サイディング | 4,000円~6,000円 |
木質系サイディング | 6,000円~8,000円 |
樹脂系サイディング | 7,000円~9,000円 |
日本でサイディングの8割以上のシェアがある窯業系サイディングの価格は、30坪の建坪で100万円~200万円程です。樹脂サイディングはこれに比べると高くなり210万~270万円が平均となります。
ただ窯業系サイディングはメンテナンスとして10~15年ごとの外壁塗装とシーリング補修をしなければなりません。しかし樹脂サイディングはこのメンテナンスがほぼ必要ありませんので、ランニングコストはかなりお得になります。
樹脂サイディングの施工にかかる費用
サイディングの施工方法は、既存の外壁材を撤去して新しく外壁を張る「張り替え工法」と既存の外壁の上から張る「重ね張り工法」の二種類。それぞれの施工費の相場を解説していきます。
張り替え工法による費用相場
既存の外壁の劣化状況がひどい場合や、土台の補修が必要な場合には張り替え工法で外壁を施工します。この工事では古い外壁を撤去する費用や手間がかかるため、重ね張りに比べて高くなります。
工事内容 | 費用相場 |
張り替え工法 | 2,700円~4,000円/㎡ |
張り替え工法の施工費は㎡当たり2,700円~4,000円が平均となります。また工事日数は10日~20日程度と長め。ただ外壁材自体が軽量な樹脂サイディングは、ひどい外壁の劣化が無ければほとんどの場合で重ね張り工法が可能です。
重ね張り工法による費用相場
「カバー工法」とも呼ばれている重ね張り工法は、外壁を撤去せずそのまま新しい外壁材を張れることから施工費用を抑えられます。
工事内容 | 費用相場 |
重ね張り工法 | 2,500円~3,300円/㎡ |
重ね張り工法の平均価格は㎡当たり2,500円~3,300円と張り替え工法よりも安め。とはいえある程度の補修や足場工事などが発生するため、工期は1週間~2週間ほどです。
樹脂サイディングの施工費用を抑える3つのポイント
取り扱うメーカーや施工できる業者が少ないため施工費が高額になってしまう樹脂サイディングですが、少しでも安くするにはいくつかのポイントがあります。
屋根工事と同じタイミングで行う
屋根工事と同じタイミングでリフォームすると、費用が節約できます。というのも屋根工事も外壁工事のどちらも仮設足場を設置しなければいけないため。それぞれに必要な足場の費用を、同時にすることで費用を抑えられるという訳です。
このような作業工程を工夫してコストダウンを狙う方法は、材料や施工方法を変えないため仕上がりの満足度や安全性に満足できるので良いでしょう。
オープンジョイント工法で施工する
先ほども解説した通り、樹脂サイディングはシーリングを使わないオープンジョイント工法で施工できます。これは施工時の手間や費用を安くできるだけでなく、数年に一度のメンテナンスの費用も抑えられます。
またオープンジョイント工法は壁の外側と内側の気圧の差を少なくできる構造のため、雨水の侵入を防ぐことができます。さらにサイディングボード裏面の放湿性が良いため、変形や湿気による劣化も防げます。
自社施工の業者を見つける
樹脂サイディングの施工費を安くするには、自社で施工できる業者を見つけることです。特に樹脂サイディングは、もともと施工できる業者が少ないため施工費用に差が出やすくなる傾向があります。
大手のリフォーム会社では、実際の工事は下請け業者に依頼することが多いため、余分な中間マージンや紹介料が発生します。費用をなるべく抑えたいなら、自社で樹脂サイディングの施工実績がある専門職人を雇っている会社に依頼しましょう。
また樹脂サイディングの施工には、他のサイディングとは異なるコツがあるので慣れた業者に依頼しないとトラブルの元に。樹脂サイディングは温度差で伸縮するため、施工するシーズンによって隙間の間隔を変える必要があります。また使用する役物は種類が限られているため、自分の手で加工しなければなりません。
このように樹脂の特徴を良く理解して適切に施工できる職人がいる業者なら、施工費も抑えられ、工事後のトラブルも少なくなるでしょう。
樹脂サイディングの施工手順や日数を解説

樹脂サイディングの施工手順を簡単にご説明していきます。
- 下地に透湿防湿シートを貼る
- (場合によって胴縁を取り付ける)
- 入隅・出隅の役物を設置
- スターターという役物を設置
- 窓廻りや軒天に専用役物を設置
- 端部にクリアランス(隙間)を設けながらボードを設置
- ボードは重ねてはめ込み、ビス留めしていく
重ね張り工法の場合は新たに下地を作ってその上から同じような手順で施工していきます。一般の方にはなじみのない施工方法のため、各工程の作業写真を見せてくれる業者なら、工程を省略されることなく安心して任せられるでしょう。
工事にかかる日数は以下のようになっています。
- 張り替え工法・・・10日~20日
- 重ね張り工法・・・1週間~2週間
樹脂サイディングの日ごろのお手入れ方法
いくらメンテナンスがほとんどいらない樹脂サイディングといえ、まったく手入れがいらないという訳ではありません。外壁表面に汚れが付いたままだと、建物の美観を損ねるだけでなく、外壁材の劣化にも繋がります。
ただ樹脂サイディングの場合、表面に塗装をしていないため簡単に水洗いができます。樹脂サイディングを水洗いする場合の手順や注意点は以下の通りです。
- ホースの水で表面のホコリや泥などを洗い流す
- その後はブラシやスポンジなどを使うとさらにキレイになる
- ホースで水をかける際には窓サッシや換気口に水がかからないようにする
- 汚れがひどい場合は水で薄めた中性洗剤を使用する
- 酸性洗剤・アルカリ性洗浄液・有機溶剤(シンナーなど)は使用しない
高性能な樹脂サイディングはほぼメンテナンスいらず!
樹脂サイディングは他のサイディングと比べて、耐用年数が30年と圧倒的に長いのが大きな魅力。しかしアメリカ等で広く普及しているのに対して、日本ではまだまだ知名度や普及率が低いのが現状です。
北海道や東北地方などの寒冷地では積極的に外壁に取り入れているリフォーム業者も増えていますので、今後広まることを期待しましょう。もし樹脂サイディングで外壁リフォームをしたいなら、自社で施工経験のある業者を選びましょう。