冬暖かく、夏涼しい家にするには住宅の断熱リフォームがおすすめ。今回は断熱リフォームの種類や施工費の相場、予算別の工事内容をご紹介していきます。どんな断熱リフォームがあるか知りたい方や、断熱リフォームをお得にしたい方はぜひ参考にしてください。
断熱リフォームとはどんな工事?
まずは断熱リフォームにはどんな工事があるかについて見ていきましょう。家のどんな部分に施工できるのか?どんな材料を使うのか?という疑問についてお答えしていきます。
断熱リフォームには「内断熱」と「外断熱」がある
断熱リフォームは建物のどちら側から施工するかによって「内断熱」と「外断熱」とに分けられます。内断熱とは部屋の壁を剥がして柱と梁の内側へ断熱材を入れたり、窓を交換する工事のこと。一方の外断熱は外壁や屋根へ断熱性のある塗料を塗布したり、断熱材を重ね張りする工法です。
人間で例えると内断熱はヒートテックなどの下着を着ることで暖かくすること。外断熱はダウンジャケットなどを着て寒さを解消するということになります。
断熱リフォームの注意点として、内断熱は使うグラスウールなどの断熱材の種類によって断熱性が変わることがあります。外断熱ではもともとの外壁材の上に断熱材を張るため、建物の強度が十分にあることが求められます。
断熱リフォームをする箇所やその効果とは?
断熱リフォームには内断熱と外断熱の二種類があることが分かったところで、詳しくその箇所を見ていきましょう。
【内断熱】
施工箇所 | 断熱リフォーム方法 |
建物内部の壁 | 壁紙やパネルを剥がして柱やはりの間に断熱材を敷き詰める |
天井 | 天井骨組みの間に断熱材を敷き詰めたり、綿状の断熱材を吹き付ける |
床下 | 床板を剥がしたり、床下から断熱材を敷き詰める |
窓 | 内窓をプラスして二重窓にしたり、複層グラスへ交換する |
【外断熱】
施工箇所 | 断熱リフォーム方法 |
外壁 | 断熱性のある塗料を塗る |
外壁 | 既存の外壁材の上に断熱材を張る |
屋根 | 断熱性のある塗料を塗る |
断熱リフォームの主な材料
断熱リフォームには様々な種類の断熱材を使用します。断熱材は内部に空気をため込むことで建物の外と中の空気をシャットダウンします。ここでは素材別に「繊維系」と「発泡樹脂系」とに分けてその特徴を見ていきましょう。
【繊維系断熱材】
断熱材の種類 | 特徴 |
グラスウール | ガラスを繊維状にした一般的な断熱材 繊維が細いものは高性能グラスウールと呼ばれ断熱性能が高い |
ロックウール | 玄武岩や鉄炉スラグが原料の人工鉱物繊維 グラスウールよりも耐熱性に優れ防火材としても使われる |
セルロースファイバー・ 羊毛・ポリエステル | 古新聞や羊毛の古着、ペットボトルから再生されるリサイクル断熱材 グラスウールやロックウールと比べると価格が2~4倍ほど上がる |
【発泡樹脂系断熱材】
断熱材の種類 | 特徴 |
ポリエチレンフォーム | 水や湿気に強く床や外断熱に使われる |
フェノールフォーム | ポリエチレンフォームよりも性能が良く、価格が高い |
ウレタンフォーム吹付 | 吹き付けると発砲するタイプの断熱材 隙間ができにくく劣化にも強い |
場所別断熱リフォーム工事の価格相場・工事内容・工期

では実際に断熱リフォームをする際の費用相場や工事日数について見ていきましょう。費用相場は㎡当たりの単価を表しています。実際の住宅の面積を掛けることでおおよその相場が算出できます。
内壁に断熱材を入れる
壁の内側へ断熱材を入れるには、大がかりな大工工事が必要となります。主な工程はこちらです。
- 既存壁の解体・撤去
- 補修工事
- 断熱材の敷き込み
- 下地張り
- 仕上げ材の施工
部屋によっては配管設備工事やキッチンの移動、コンセントなどの電気工事が必要になることも。こうした大工工事以外の工事が発生する場合は費用相場が高くなります。
工事の範囲 | 費用相場 | 工事日数 |
大工工事のみ | 5,000円~11,000円/㎡ | 2~3週間 |
大工工事+専門工事 | 10,000円~16,000円/㎡ | 2週間~1か月 |
工期は工事範囲によって2週間から1か月ほどの幅があります。詳しくは施工業者へお尋ねください。
外壁へ断熱材を貼る・断熱塗料を塗る
外壁への断熱リフォームは断熱効果のある塗料を塗る方法と、既存の外壁材に断熱材を張る方法の二種類となります。
工事の範囲 | 費用相場 | 工事日数 |
断熱塗料を塗る | 4,000円~8,000円/㎡ | 2~4日 |
断熱材を張る | 23,000円~45,000円/㎡ | 1週間~1か月 |
断熱塗料を外壁へ塗布する断熱リフォームは既存の外壁を解体するなどの作業は伴いませんが、足場を組んで高圧洗浄で外壁の汚れを落とすという作業が発生します。また断熱材を張る工事では、外壁に断熱材の重みに耐えられるだけの強度がないとリフォームできないことがあります。
天井に断熱材を入れる
屋根からの熱気が直に感じられる場合や、天井から冷たい風が吹き込んでくる時には天井の断熱リフォームがおすすめ。天井裏に隙間なく断熱材を敷きこむことで、快適な室温を保てます。
天井の断熱リフォームの施工方法は主に二種類あります。
工法 | 詳細 |
敷き込み工法 | 断熱材を天井骨組みの間に敷いていく 費用は抑えられるが隙間なく敷き詰めないと断熱効果が下がる |
吹き込み工法 | 綿状の断熱材を吹き込んでいく工法 梁などの障害物が多くてもリフォームしやすい |
実際に天井裏を見てもらって、どちらの工法が適当かを業者に判断してもらいましょう。天井裏に人が入れ、作業をしても大丈夫な強度があれば天井裏からの作業となります。一方で天井に人が入れない場合は、天井を剥がして工事をすることになります。
工事の範囲 | 費用相場 | 工事日数 |
天井裏に潜って施工 | 2,000円~7,500円/㎡ | 2~4日 |
天井を剥がして施工 | 6,000円~14,000円/㎡ | 3~5日 |
天井を剥がして工事をする場合は、解体費用や施工費用が余分にかかるため高額になります。
屋根に断熱塗装を施す
屋根材に断熱塗料を塗布することで、断熱リフォームになります。ただしこちらは塗料を塗れる屋根材であることが条件となります。粘土素材の瓦屋根の場合は塗料を塗れない場合があるのでご注意ください。
工事の範囲 | 費用相場 | 工事日数 |
断熱塗料を塗る | 3,000円~6,000円/㎡ | 1週間~4週間 |
床下に断熱材を施工
冷たい空気は下にたまるため、床下の断熱リフォームが有効です。またフローリングなどのヒヤッとした感覚が苦手な方や、冷え性の女性にもおすすめ。
一戸建てでは床材を剥がさず、床下から断熱材を入れられるケースが多いため、費用が抑えられます。床材を剥がすリフォームが必要な場合は、同時に床暖房を設置することで足元から温められます。
工事の範囲 | 費用相場 | 工事日数 |
床下から断熱材を追加 | 3,000円~4,500円/㎡ | 1~2日 |
床下断熱+床材張り替え | 10,000円~18,000円/㎡ | 3~6日 |
既存窓へ内窓を追加・断熱ガラスを入れる
今ある窓ガラスに新しくもう一枚窓ガラスをプラスすることで、断熱リフォームするという方法もあります。実は部屋の暖かい空気は、外気に触れている窓で冷やされていたり窓の隙間から逃げていくことがあります。そこで内窓を設置することで、気密性を高めたり断熱性を向上させられるのです。
このとき使用するガラスは一枚だけの単層ガラスよりも、ガラス部分が2~3枚になった複層ガラスのほうがより断熱性が上がります。ガラスの種類による費用相場はこちらです。
ガラスの種類 | 費用相場 |
単層ガラス | 40,000円~70,000円 |
複層ガラス | 60,000円~100,000円 |
断熱複層ガラス | 80,000円~150,000円 |
またサッシ部分もアルミサッシなどの金属製よりも樹脂製の方が断熱性が高いので、この機会に取り入れてみてはいかがでしょうか?主な窓の断熱工事にかかる費用相場や日数はこちらです。
工事の範囲 | 費用相場 | 工事日数 |
複層ガラス窓へ交換 | 10,000円~30,000円 | 1~2日 |
内窓の取り付け | 50,000円~120,000円 | 1~2日 |
アルミサッシ→樹脂サッシに交換 | 30,000円~100,000円 | 1~2日 |
予算別!断熱リフォームの施工範囲やおすすめ箇所

断熱リフォームに無尽蔵にお金を掛けられる方以外は、あらかじめ大体の予算を決めていることでしょう。その予算の範囲内で、断熱リフォームの方法やどの部屋に施工するかなどを決めていきましょう。
10万円程度なら窓の断熱リフォームがおすすめ
最も手軽で費用がかからない断熱リフォームは、窓を二重窓にしたりガラスを複層ガラスへ交換する方法です。内窓を追加するリフォームは既存の窓を外すことなく、比較的簡単に内窓を取り付けられます。
窓のリフォームは断熱性がアップするだけでなく、結露を予防したり防音性が高まるなどのメリットがあります。手軽に費用を掛けずに断熱リフォームをしたい方は、窓のリフォームから始めてみては?
30万円の予算では天井裏の断熱リフォームが可
天井を剥がすことなく天井裏へ断熱材を敷き詰める工事なら、30万程度の予算でも可能です。床面積が60~100㎡の一般的な一戸建てで断熱材の種類によって費用は異なりますが、施工費用は10~35万程度。天井裏の補修などがなければ一日で工事自体は終了します。
施工方法は難しくありませんが、断熱材を敷きこむ際には隙間を作らないようにすることがポイント。隙間ができてしまうとそこから暖かい空気が逃げてしまうためです。また天井裏は誰でも登れる場所ではないため、施工後の写真などで確認することをおすすめします。
壁全体を断熱するなら50~100万円
内壁を解体して断熱材を敷き詰める断熱リフォームは100万程度の予算が必要です。こちらは施工面積125㎡の壁断熱リフォームの費用相場です。
工事内容 | 費用相場 |
既存壁解体工事 | 130,000円 |
断熱材敷き込み(グラスウール) | 200,000円 |
石こうボード張り | 200,000円 |
クロス貼り | 200,000円 |
諸経費 | 130,000円 |
合 計 | 860,000円 |
壁の断熱リフォームのデメリットとして、施工費を抑えるために壁の一面のみに施工しても断熱効果をほとんど得られないことがあります。壁の断熱リフォームをするなら、壁四面にくまなく断熱材を敷き込みましょう。
天井+外壁+内窓の断熱リフォームなら150万以上
マンションや戸建て住宅の丸ごと断熱リフォームには、150万円以上の費用がかかることがあります。特にあらゆる場所の断熱リフォームが可能な戸建て住宅は、300万~500万以上の費用がかかる場合も。
マンションでは外壁や屋根などは共有部分となるため、リフォームすることはできません。マンションで行える断熱リフォームの箇所はこちらです。
- 室内壁断熱
- 床下断熱
- 内窓の取り付け
- 天井断熱
マンションで可能な断熱リフォームの費用は120万~400万円程となります。お住いのマンションによっては窓も共有部分とみなされることがあります。断熱リフォームの前には必ず管理組合などに相談して、届け出を出してから工事に入りましょう。
断熱リフォーム費用を安くする秘訣とは?

家全体を工事しようとすると100万円以上はかかってしまう断熱リフォーム。少しでも費用を抑えるためのコツをご紹介していきます。
他のリフォーム工事と一緒にする
内壁を剥がしたり、床板を取り外す断熱リフォームをする際には、他のリフォーム工事と一緒に行うことで費用を抑えられます。
- 床板を取り外すついでに床暖房を設置・床板を新しくする
- 内壁を剥がすついでにクロス貼り替え
- 洗面所断熱リフォームの時に洗面台を交換
- 外壁工事の足場を利用して屋根のメンテナンスをする
無理に他のリフォームをする必要はありませんが、そのうち工事しようかと考えているなら、同じタイミングでリフォームすることをおすすめします。
リビングや廊下などゾーンで断熱リフォームする
リビングや水廻り、そこへ行くまでの廊下などを一つのゾーンとして断熱する工法があります。この工法で施工した場合、家全体を断熱リフォームするよりもかなり費用が安くなります。
普段の生活で毎日使う場所を重点的に断熱する「ゾーン断熱」は、寒暖差からくるヒートショックの発生を抑えられます。家族が健康的に快適に過ごせるようにするためにも、ゾーン断熱をしてみては?
断熱リフォーム補助金制度を利用する
お得に断熱リフォームをしたいなら、補助金制度を利用することをおすすめします。国や地方自治体では断熱リフォームが対象の補助金制度がいくつかあります。工事を行う前に国のリフォーム補助金HPや役所のお知らせなどを調べ、申し込み可能な補助金がないかを確認しておきましょう。
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)支援事業
高効率な設備システムや再生可能エネルギーを導入することで、年間のエネルギー消費量ゼロを目指す住宅を「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH・ゼッチ)」と呼び、これを支援する事業の一環として補助金制度があります。
対象は持ち家の戸建て住宅やマンションで、断熱リフォームでは「断熱パネル」や「潜熱蓄熱建材」を導入した場合に補助金が出ます。こちらは物件を所有している個人や賃貸物件を所有している方も利用可能。詳細は以下の通りです。
住宅の種類 | 補助金額の詳細 |
一戸建て | 200万円を上限とし、費用の1/2以内を補助 |
集合住宅 | 125万円を上限とし、費用の1/2以内を補助 |
高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業(断熱リノベ)
「断熱リノベ」とはエネルギー消費効率の改善を目指すため、高性能建材を用いた断熱リフォームを支援する事業。対象となっている建材を使用することで、上限の範囲内で補助を受けられます。
対象となっているのは断熱材・断熱窓・断熱ガラスなど、15%以上の省エネ効果が見込まれる建材です。一戸建てやマンションにかかわらず、管理組合の代表の方も申請ができます。
住宅の種類 | 補助金額の詳細 |
一戸建て | 120万円(窓のみの場合は40万円)を上限とし、 費用の1/3以内を補助 |
集合住宅 | 15万円を上限とし、費用の1/3以内を補助 |
この補助金を受けるには工事前に申し込みを行い、交付が決定されてから工事を開始しなければいけません。審査に時間がかかる場合がありますので、余裕をもって申し込みをしてください。
ご紹介した二つのの他にも、各市町村で行っているリフォーム補助金制度があります。このような補助金を上手に活用して、お得に断熱リフォームを進めましょう。
断熱リフォームを成功させるには経験豊富な業者に依頼しよう
断熱リフォームは施工箇所が多く、細部にまで気を配って工事を進める必要があります。十分な断熱効果を得るためにも、断熱リフォームの実績が豊富で断熱材の取り扱いや工事に関する知識がある業者に依頼しましょう。