屋根葺き替えを考えている方必見!基本を押さえて費用を抑えるコツを解説

住宅を長持ちさせるには、定期的な屋根のメンテナンスが必要です。塗り替えや重ね葺きなどの修理方法がある中で、今回は屋根葺き替えに関するおすすめの屋根材や費用相場をご紹介。屋根葺き替えを考えている方はぜひ参考にしてください。

屋根についての基本を知ろう!屋根の形状・屋根材の種類・屋根面積の出し方

屋根の葺き替えを考える前に、まず屋根について詳しく知りましょう。ここでは屋根の形状や主な屋根材、屋根面積の出し方について解説してきます。

屋根の形状は主に10種類

住宅街を見渡すと分かるように、屋根の形は実に様々です。また住宅のデザインや土地柄によっても屋根の形が異なります。ここでは主な屋根の形状10種類について、メリットやデメリットを見ていきましょう。

屋根名称形や特徴
切妻(きりづま)屋根本を開いて逆さに置いたような三角屋根。単純な造りで雨漏りが発生しにくく、メンテナンスも簡単。
寄棟(よせむね)屋根最上部の「大棟(おおむね)」から四方に面をおろす構造。耐風性が強く日本の気候に合った屋根の一つ。
片流れ屋根一方向にのみ傾斜がある屋根。ソーラーパネルを設置するのに向いていてデザイン性が高い一方、耐風性が低い。
方形(ほうぎょう)屋根四角錘(すい)の形をした屋根形状で四方に雨や雪を分散できる。正方形の住宅にしか乗せられず、ソーラーパネルの設置には不向き。
入母屋(いりもや)屋根和風の日本家屋にある屋根で瓦を乗せることが多い。寄棟屋根と切妻屋根を組み合わせた形で耐風性や断熱性が高いがメンテナンスに費用が掛かる。
陸屋根地面と平行な屋根形状でメンテナンスが楽でモダンに見える。傾きがないため水がたまり雨漏りすることも。定期的な防水メンテナンスが必要。
差しかけ屋根左右の屋根が段違いに付いたデザインで、施工費が安く通気性や断熱性も良い。隙間の外壁との境目の雨仕舞をしないと、雨漏りが発生することも。
越(こし)屋根切妻屋根の上に採光や風通しのための小さな切妻屋根を乗せた形状。断熱性や通気性が高い一方で、つなぎ目が多いため雨漏りのリスクが発生する。
バタフライ屋根二面ある屋根の中央部分がくぼんでおり、端に行くにしたがって高くなる形状。雪下ろしの必要がなくモダンな印象だが、排水処理をする必要がある。
はかま腰屋根切妻屋根の端を斜めにカットして屋根面を付けた形状。「半切妻屋根」とも呼ばれ周辺の日当たりや風通しを目的とする。

屋根材の種類やおすすめの屋根材

最近は屋根材の種類も多くなってきました。四季のある日本では夏涼しく、冬暖かく過ごすには屋根材の選び方も大切。一般的にはどのような屋根材があるのかご紹介していきます。

スレート日本の屋根材として広く普及しており、セメントに繊維質を混ぜて作る屋根材で種類も豊富。塗り替えや葺き替えなどのメンテナンスが必要。
粘土瓦粘土を板状にして高温で焼き固めた屋根材。耐久性が高くメンテナンスが不要だが工事費用が高く家屋部分に重量がかかる。
ガルバリウム鋼板アルミニウムと亜鉛の合金製。トタンよりも耐久性が高く軽くてさびにくいのが利点だが、夏は暑くなるため断熱対策が必要で防音性が低い。
トタン亜鉛メッキ鋼板製で、軽量で雨漏りしにくく安価で設置できる。ただし雨音がうるさく夏暑くなる傾向があり、塗装や葺き替えによる手入れが必要。
セメント瓦セメントと土が原料で耐火性や遮音性に優れているが、重いため耐震性のある家での使用が必要。塗装や破損瓦の交換により40年程度もつ。
アスファルトシングルグラスファイバーにアスファルトを塗装したシート状の屋根材。軽量で加工しやすい反面、コケやカビが生じやすく定期的なメンテナンスが必要。日本では一般的に普及していないため、施工できる業者が少ない。
ステンレスさびにくいため塩害地域におすすめの屋根材。ガルバリウム鋼板に比べて耐久性が高く手入れも不要だが、価格が非常の高くなる。
寺院などの純和風建築の屋根材として使われており、耐久性が高く緑青(ろくしょう)による色の変化が楽しめる。断熱性や防音性が低いため対策が必要。

屋根面積の出し方は図面をチェック

屋根面積の出し方は家の立面図や平面図があれば簡単に求められます。屋根の葺き替え工事の費用は、屋根の面積によって変わってきます。そこで自宅の屋根面積はどの位になるのか把握しておきましょう。屋根面積の求め方は下の式で求められます。

屋根面積=屋根投影平面積×勾配伸び率

屋根投影平面積は「床の面積+軒の出」によって算出します。建物を上から見た時の平面図から、床面積と軒出面積を調べてそれらを足すことで屋根の平面積が出ます。屋根の面積は軒部分が出ているため、床面積よりも大きくなります。またこの軒の出が長いほど屋根の平面積も大きくなることを覚えておきましょう。

勾配伸び率とは、水平寸法に対しての斜辺の長さを求める倍率のことを指します。立面図を見ると分かるのですが、屋根の付近に4/10や5/10と書かれているこの分数勾配をチェックします。これは10mに対して4mや5mの勾配が付いていることを表しています。肝心の勾配伸び率を調べるには、インターネットので「勾配伸び率一覧」と検索して、4/10や5/10と書かれている勾配伸び率を探しましょう。

このように平面図から屋根投影平面積を、立面図から勾配伸び率を求めたら掛けることで屋根面積を出せます。屋根は床面積よりも大きく、勾配が付いているため屋根の平面積の計算式はこのような求め方になります。

どんな時に屋根の葺き替えが必要?重ね葺きとの違いとは

それではどのような時に屋根の葺き替えが必要になるのでしょうか?重ね葺きや塗り替えのタイミングについても解説していきます。

葺き替えした方がいい屋根の判断基準や交換時期は?

屋根工事でよく聞く「葺き替え」とは、現状の屋根材をすべて取り払って新しい屋根材と交換するリフォーム工事のことです。屋根工事には葺き替えの他にも、このような修理方法があります。

  • 葺き直し…下地の修理を目的として、土台を再工事したのち同じ瓦を敷き直す
  • 重ね葺き…既存の屋根はそのままに、新しい下地や屋根材を重ねる工法
  • 塗り替え…瓦や金属屋根を再塗装するリフォーム工事
  • 部分補修…不具合のある土台や瓦の部分のみを補修、交換する工事

瓦など屋根材の一部のみを取り外しできるものは葺き直しや部分補修が可能ですが、スレートやガルバリウム鋼板などの金属屋根は部分的な修理や葺き直しができないため、塗装の塗り替えか葺き替え工事のみとなります。

そして葺き替えが必要になるのはこのような状態の屋根です。

瓦屋根全体が劣化している

瓦屋根は塗装や重ね葺きができないため、全体的な劣化が発生している場合は葺き替えする必要があります。

屋根にコケやカビ、色褪せやサビが発生している

屋根を近くで見た時に表面にコケやカビが生えていたり、屋根材の色褪せやサビが発生している時は屋根全体が劣化している証拠です。また屋根材にひび割れがある場合や、棟板金が剥がれて中の木材が腐食している時も葺き替えが必要です。

雨漏りが発生して下地が腐っている恐れがある

すでに家の中に雨漏りが発生しているということは、屋根の下地が雨水に浸食されて腐っていることも考えられます。家の構造全体に悪影響を及ぼす恐れがあるため、早急に屋根の葺き替えを行いましょう。

耐用年数を大幅に超過している

屋根材にはそれぞれ耐用年数があります。その耐用年数を大幅に超えていると、防水シートなどの下地が劣化していて効果を発揮しないことも。屋根材別の耐久年数はこちらの表の通りです。

屋根材の種類耐用年数
スレート25~30年
粘土瓦 40~50年
ガルバリウム鋼板塩害地域:~15年 それ以外の地域:~30年
トタン10~20年
セメント瓦30~40年
アスファルトシングル20~30年
ステンレス50年
60年以上

メンテナンスを怠っている場合や、海の近くなど塩害の恐れのある場所は上記の耐用年数よりも短くなることもあります。

重ね葺きがおすすめな場合とは

では屋根のカバー工法とも呼ばれる重ね葺きは、どのような場合に適しているのでしょうか?まず重ね葺きができるのは金属製の屋根材のみということを覚えておきましょう。屋根材自体に重量がある瓦などは重ね葺きに向いていません。

  • 屋根リフォームの価格を抑えたい
  • 屋根材の劣化があまり激しくない
  • リフォーム工事の工期を短縮したい
  • 断熱性や防音性を今より高めたい
  • 下地が傷んでいない

あくまでも下地や屋根材の劣化が激しくない場合に、工期や費用を抑える目的で重ね葺きを行います。ただし重ね葺きをする前に、専門業者に屋根や下地の状態をキチンとチェックしてもらい、適切な屋根材を選ぶようにしましょう。

葺き替え工事のメリット・デメリット

屋根の葺き替え工事にはどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?工事をお願いする前に、葺き替え工事の特徴について勉強しておきましょう。

葺き替え工事のメリット

外観を新しくできる

面積が大きい屋根を新しくすることで、建物全体の印象が変わります。また瓦からスレートやガルバリウム鋼板などへ屋根材を変えることができるので、違った印象にもできます。

屋根が軽くなる

重い瓦屋根から軽い金属屋根にすることで屋根自体の重量が軽減され、地震対策にもなります。また地震の揺れで瓦が落ちてくることも防げます。

屋根全体をリフレッシュできる

表面の屋根材を剥がして下地をくまなくチェックできるので、防水シートや野地板などの下地部分も新しくできます。これにより屋根だけでなく建物の寿命も伸ばせます。

葺き替え工事のデメリット

費用や日数が他の補修工事と比べてかかる

屋根材をすべて取り替える葺き替え工事は、塗装や部分補修に比べてどうしても費用が高くなり、工事日数も長くなります。また古い屋根材の処分費用や野地板工事などが発生するため重ね葺きと比べても費用がかかります。

廃材による近隣への影響

古い屋根材を撤去する際に細かいホコリやごみが周囲に舞うことで、近隣とのトラブルが発生する恐れがあります。あらかじめ隣近所へ工事の挨拶をするなどの対策が必要です。

屋根葺き替えの費用相場は?重ね葺きや別途工事の費用もご紹介!

それでは屋根葺き替え工事に伴う費用相場を見ていきます。新しく葺く予定の屋根材別の費用や工事の流れなども解説していきますので、参考にしてください。

屋根材別の費用相場一覧

従来の屋根材とは別のものに変えられるのが、葺き替え工事のメリットです。屋根材別の工事費用はこのようになっています。

屋根材の種類材料・施工費(㎡当たり)
スレート4,500円~8,000円
粘土瓦 8,000円~12,000円
ガルバリウム鋼板6,000円~9,000円
トタン5,000円~6,000円
セメント瓦6,000円~8,000円
アスファルトシングル6,000円~8,000円
ステンレス10,000円~14,000円
18,000円~20,000円

別途工事の費用はどのくらい?

葺き替え工事には屋根材や施工費とは別にこのような費用がかかります。

工事名称および工程平均単価
屋根足場仮設および撤去費用700円~1,500円/㎡
シート養生費(飛散防止ネット)200円~300円/㎡
屋根材撤去費1,500円~3,000円/㎡
廃材処分費50,000円~80,000円/一式
下地補修費
2,000円~3,500円/㎡
防水シート施工費500円~1,500円/㎡
屋根材運送費20,000円~40,000円/一式
現場管理費20,000円~40,000円/一式
アスベスト処分費(スレート等で含有する場合)20,000円~80,000円/㎡

2004年以前に製造されたスレート材には、吸い込むと人体に悪影響を及ぼす石綿(アスベスト)が含まれていることがあります。その場合はアスベスト処理の資格を持つ業者が飛散防止対策を十分に行い、役所に届け出をしなければ工事ができません。さらに産廃処分費用が割高になるため、工事費用が高額になるでしょう。

また周囲に駐車場や作業スペースがない場合、作業効率の悪化から工事費用が割高になる場合もあります。また屋根が急こう配の場合、屋根全体に足場が必要になります。

上記の費用は屋根の大きさや形状、既存屋根の種類やお住いの地域によって変動します。また雨どい工事や雪止め金具設置工事などの追加工事が発生することもあります。詳しくは専門業者に現地調査をお願いし、見積もりを取ることをおすすめします。

屋根工事にかかる日数や工事の流れとは

屋根工事はどの位の期間がかかり、どんな工事の流れで進んでいくのでしょうか?瓦屋根の葺き替え工事を例に見ていきましょう。

  1. 足場組立・シート養生・・・1日
  2. 既存瓦・残土の撤去・・・1日
  3. 新しい野地板の設置・・・1日
  4. 防水シート設置・・・半日
  5. 新しい瓦の設置・・・2日
  6. 雨仕舞・軒先水切り・・・1日
  7. シート・足場の撤去・・・・半日

屋根の葺き替え工事はとにかく雨が大敵。転落事故を防ぐためにも、小雨でも雨が確認されたら工事が中断します。その際にはブルーシートなどで応急処置を行い、屋根から降ります。

そのため雨の多い梅雨時期などでは通常一週間程度で終わる葺き替え工事が二週間以上かかることも。屋根工事はなるべく天気の良い季節を選んで行いましょう。おすすめのシーズンは3~5月、梅雨明けした7月や10~12月です。

重ね葺きの費用相場は?

それでは重ね葺きの費用相場はどの位になるのでしょうか?ちなみに重ね葺きの工事日数は5日前後になります。既存の屋根材を全て剥がす葺き替え工事と比べると短期間で工事が終わります。

工事内容平均単価
屋根材設置費用
  トタン5,000円~6,000円/㎡
  ガルバリウム鋼板8,000円~9,000円/㎡
足場設置・撤去費用700円~1,500円
断熱材設置工事1,000円~3,000円/㎡
防音シート設置工事700円~1,000円/㎡
屋根材運搬費10,000円~30,000円/一式
現場管理費20,000円~50,000円/一式

断熱性や防音性を高める目的でも行われる屋根の重ね葺き工事では、屋根裏に断熱シートを設置したり、下地として防音シートを敷きこむことがあります。

屋根葺き替えの費用を抑えるコツや業者選びのポイント

では高額になりがちな屋根の葺き替えリフォーム費用を少しでも抑えるためのコツをご紹介していきます。ぜひ取り入れて、リフォーム費用を安くしましょう。

耐震リフォーム補助金制度が使えることもある

国や都道府県、市区町村ではリフォームによる補助金制度が受けられることがあります。屋根工事に関しては耐震リフォームや省エネリフォームの補助金が対象となります。

主に瓦屋根からガルバリウム鋼板への葺き替え工事をした場合、耐震対策として屋根の軽量化を行ったとみなし、耐震リフォーム補助金がもらえることも。また葺き替えによって建物の断熱性がアップする工事には、省エネリフォーム補助金が適用となる場合もあります。

このような補助金制度を利用する際には、必ず工事前の申請が必要となります。お住いの地域にどんなリフォーム補助金制度があるかあらかじめチェックしておいて、工事前に手続きしましょう。リフォーム会社によってはその手続きを代行してくれることもあるので、業者に確認してみては?

直接屋根修理業者に依頼した方が安くなる

実は直接屋根修理業者に工事を依頼した方が、リフォーム費用は安くなります。一口に屋根葺き替え工事といっても瓦やスレート、金属などの屋根材は様々な種類があります。そして使う材料によって得意とする業者が変わります。瓦葺きなら瓦屋さんへ、ガルバリウム鋼板なら板金店など。

もし葺き替えたい屋根材が決まっているのであれば、その屋根材での葺き替えの経験が豊富な業者がおすすめ。たくさんの件数を取り扱っているため材料を安く仕入れられ、自社職人の手で工事をすることで余計な費用がかからないことが理由です。

そして飛び込みでやってくる屋根工事のセールスマンには注意が必要。葺き替えの必要がないにも関わらず、契約に持ち込もうと強引な勧誘をすることが多いためです。見積もりを取ってみて細かい㎡数などではなくすべて一式で金額を表示している場合や、契約を急かすようなそぶりがあったら契約は避けるようにしましょう。

相見積もりを取って工事内容や費用を比べる

屋根工事のみならずリフォーム工事の前には、複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」をおすすめします。その場合は葺き替える屋根材の種類を同じ物にして見積もりを取るようにしましょう。工事内容や適正価格が分かるだけでなく、自宅の屋根の状況も分かるようになります。

まとめ

屋根の葺き替えをする際には、リフォーム補助金制度などを上手に活用して、なるべく費用を抑えられるようにすることが大切ですね。また屋根は住人ですら確認しずらいため、5年ごとに点検することが必要です。そう考えるとリフォーム費用だけを見て業者を選ぶのではなく、後々のメンテナンスまでしっかりと行ってくれる業者を選ぶようにしましょう。