施工費が安いトタン屋根は一昔前の住宅の屋根材として主流でした。そんなトタン屋根から雨漏りがしたら、どのように対処すればいいのでしょうか?室内からできる雨漏りの応急処置から業者に修理を依頼する際の相場費用までしっかり解説。悪徳業者に騙されないコツなどもご紹介していきます。
トタン屋根から雨漏りがしたら…どうすればいいの?
梅雨や台風シーズンに天井や窓枠付近から雨漏りすることがあります。特に年数が経ったトタン屋根は雨漏りがしやすくなるため、いざという時に困らないように対処方法をしっかりと覚えておきましょう。
雨漏りは天井や床を濡らしてしまうだけでなく、放っておくと建物の構造部分に悪影響を及ぼします。また水分を適切にふき取らないとカビが生えて健康にも悪いので、なるべく早めに対処しましょう。
雨漏りの応急処置法には、室内からできるものと屋根の上からの二種類があります。
室内からの応急処置をする
室内からの応急処置は自分でもでき、その後の被害を最小限に抑えられるので雨漏りを見つけたらなるべく早めに対処しましょう。天井からの雨漏りにはこのような方法を取ってください。
- 水滴が落ちてくる場所一帯に新聞紙やブルーシートを敷く
- 雨漏りはバケツで受け止める
- 中に丸めた新聞紙や雑巾を入れると水はねしにくい
- バケツの水はあふれる前にこまめに捨てる
窓枠やアルミサッシ周辺から雨水がしみだしてくることもあります。これも雨漏りの一種なので適切に対処しましょう。
- 近くにカーテンがある場合は外す
- 濡れている部分に乾いたぞうきんを当てる
- 濡れている窓枠の下にビニールシートを敷く
窓枠からの雨漏りでは、濡れている窓枠の下にビニールシートを敷くことで水濡れの広がりを最小限に抑えられます。カーテンは濡れたままにしておくとカビが生える原因となりますので、なるべく早めに取り外しましょう。
もし室内側から屋根裏に入れるのであれば、天井にしみだして室内に雨漏れするのを防ぐことができます。天井裏からの応急処置には次のような方法があります。
- 雨漏り箇所に糸を結んだ釘を刺して糸の端をバケツに垂らす
- ビニール袋を雨漏りする部分の下に固定、袋の下に穴を開けてバケツに垂らす
屋根裏での応急処置では、糸の付いた釘やビニール袋を使って雨水をバケツに貯める方法が適切です。
トタン屋根の上での応急処置はプロに依頼
降っていた雨が止んだら、屋根に登っての応急処置となります。しかし高所での作業に慣れていない素人では、屋根からの落下の危険やけがなどのトラブルが起こることも。屋根の上での点検や応急処置はプロに依頼した方が賢明です。
屋根の上での作業は必ず二人以上で命綱を付けることが必要ですが、高所に慣れているプロの作業員でさえ年間数十件もの転落事故を起こしています。最悪の場合には命を落としてしまうことも考えられますので、慣れていない方は絶対に屋根に登らないようにしましょう。
こちらは屋根の上で行う応急処置法です。屋根の傷み具合をチェックしてもらい、本格的な修理まで雨漏りが再び発生しないように処置しましょう。
応急処置法 | 詳細 |
防水テープで雨漏り箇所をふさぐ | トタンに穴が開いていたり、雨漏り箇所が一目で分かる場合は、防水テープで応急処置をする。 屋根の汚れを拭きとり防水テープを貼る。 |
ブルーシートで覆う | 雨漏り箇所が分からない場合、広範囲の屋根にブルーシートをかぶせる。 ブルーシートの隅には土嚢袋を置き、風で飛ばされないように固定する。 |
コーキング剤を使用 | 雨漏りしている箇所が特定できている場合に有効。 雑巾できれいにしてからプライマーを塗布。 乾いたらコーキング剤を雨漏り箇所に塗る。 |
コーキング剤は誤った箇所に塗ると雨水の通り道が変わって雨漏りを悪化させたり、別の場所から雨漏りが発生することがあります。素人が修理しようとせず、必ず雨漏り修理に慣れた業者に依頼しましょう。
トタン屋根の雨漏りを修理するにはいくらかかる?症状別費用相場
応急処置はあくまでも応急処置と考え、なるべく早めに雨漏りの修理を行ってください。トタン屋根の劣化具合に応じた修理内容とその費用相場はこちらです。
サビや穴あきには研磨と塗装で対応
トタン屋根というのは軽くて施工しやすい反面、耐久性が低いというデメリットがあります。強風や経年劣化で屋根の一部分がサビたり穴が開くと雨漏りが発生。穴あきが軽度だったり雨漏りがそれほど広くない場合は部分的な補修で済むことがありますので、屋根の状態をしっかりとチェックしましょう。
トタン屋根の表面がサビている時は、サビた箇所を良く磨いてサビを取り除きます。その後サビ止め剤を塗り、専用塗料で上塗りしていきます。
工事内容 | 費用相場 |
サビ部分の研磨塗装工事 | 4,000円~6,000円/㎡ |
部分補修(一か所) | 2万~4万円 |
サビの研磨塗装修理にかかる費用は㎡当たり4,000円~6,000円が相場です。その他の部分補修では一か所当たり2万~4万円ほどかかります。
ただし研磨と塗装で対処できるのはあくまで軽微なサビに限ります。サビが広範囲に及んでいる場合は、大規模な修理が必要となります。
塗膜が剥がれていたら全面塗装
トタン屋根表面に塗った塗料というのは紫外線や雨風によって色褪せ、塗膜自体が自然に剥がれていきます。この塗膜が剥がれてくると金属部分が露出してサビやすくなってしまいます。
屋根塗装は色を塗り直して見た目を美しくする効果と同時に、表面に塗膜を張ってサビなどの劣化を防ぐ役割も。そのためトタン屋根は最低でも10年に一度は、屋根全面を塗装しなければなりません。使用する塗料の種類によって、その後の耐用年数が変わってきますので慎重に選びましょう。
塗料の種類 | 耐用年数 | 費用相場(㎡当たり) |
ウレタン塗料 | 8年~10年 | 1,800円~2,000円 |
シリコン塗料 | 10年~15年 | 2,000円~2,500円 |
フッ素塗料 | 15年~20年 | 3,000円~4,000円 |
遮熱・断熱塗料 | 15年~20年 | 3,000円~5,000円 |
次に屋根の広さに応じて、それぞれの塗料を塗った場合の費用相場を見ていきましょう。
屋根の広さ | ウレタン塗料 | シリコン塗料 | フッ素塗料 |
30坪 | 25万~30万円 | 29万~34万円 | 50万~60万円 |
40坪 | 35万~40万円 | 39万~44万円 | 65万~90万円 |
50坪 | 45万~50万円 | 49万~54万円 | 80万~110万円 |
30坪の屋根ではウレタン塗料で25万~30万円、シリコン塗料で29万~34万円、フッ素塗料では50万~60万円ほどかかります。ただしこちらはあくまでも参考の価格となります。屋根の傷み具合や家の立地に応じて費用が異なりますので、詳しくは見積もりを取って確認してください。
部分的な破損にはトタンを張替えを検討
1枚づつトタンをはめ込んでいくトタン瓦棒タイプの屋根材なら、新しいトタンへの交換も簡単。サビて穴が開いているトタンは部分的に張り替えることも可能です。
工事内容 | 費用相場 |
トタン部分張り替え | 2万~6万円 |
棟板金の交換 | 3万~10万円 |
トタンの部分張り替えにかかる費用は2万~6万円ほど、棟板金の交換では3万~10万円が相場となります。ただし波板タイプのトタン屋根は一部を切り抜いたり広範囲で交換しなければならないため、費用が高額になる場合があります。
全体的な屋根材の劣化にはカバー工法や葺き替えを
トタン屋根は20年以上経つと全体が劣化して雨漏りが広範囲で起こる場合があります。そこで必要となるのがカバー工法による重ね張りや葺き替えです。
カバー工法というのは既存のトタン屋根の上から防水シートを敷き、新しい屋根材をかぶせる施工方法です。カバー工法のメリット・デメリットはこちらです。
【カバー工法のメリット】
- 葺き替えよりも費用を抑えられる
- 工事期間が比較的短い
- 古い屋根材の処分料がかからない
- 遮熱や防音効果が期待できる
【カバー工法のデメリット】
- 屋根重量が増して耐震性が下がる
- ジョイント部分の防水が不完全になりやすい
- 屋根の形状や下地の劣化状況では施工できない
- 使用できるのはガルバリウム鋼板がほとんどで他の屋根材は使えない
場合によっては葺き替えと同じ位の費用がかかったり、傷み具合がひどいとカバー工法で対応しきれないこともあります。
一方の葺き替えは、古い屋根材を全て撤去して新しい屋根材を乗せ換える方法。下地をしっかり確認できるので傷んでいる箇所を補修することができます。また屋根材も比較的自由に選べ、見た目も一新できるのがメリットです。
【葺き替えのメリット】
- 屋根の下地や防水部分をチェック出来る
- 別の屋根材にすることで機能や耐久性をアップできる
- 屋根が新品になり見た目が良くなる
【葺き替えのデメリット】
- 施工期間が長く費用もかかる
- 建物の構造によっては選べる屋根材に制限がある
- 音やホコリで工事期間中は住めないことがある
葺き替えで使用できる屋根材は主にスレートとガルバリウム鋼板です。それぞれの特徴はこちらになります。
屋根材の種類 | 特徴 |
天然スレート | 天然石を使用したスレート屋根。 見た目に高級感があるが、重量があり運搬に注意が必要。 施工費用や材料代が高額なため、あまり市場に出回っていない。 |
化粧スレート | セメントと繊維を混ぜ合わせて5mmほどの厚さに成形した屋根材。 軽量で耐久性があるとして人気の屋根材。 |
ガルバリウム鋼板 | アルミニウムに亜鉛やシリコンを混ぜた合金のこと。 薄くて丈夫、費用もそれほど高くないので多くの住宅に採用されている。 |
一般的なガルバリウム鋼板で拭き替えた場合とカバー工法で施工した場合の費用相場は以下の通りです。
工事内容 | 費用相場 |
カバー工法(ガルバリウム鋼板) | 70万~90万円 |
葺き替え(ガルバリウム鋼板) | 80万~100万円 |
カバー工法では70万~90万円ほどかかるのに対し、葺き替えでは80万~100万円と高めになります。
トタン屋根の雨漏り修理を依頼する際の注意点
トタン屋根の雨漏り修理を依頼する際には、これからご紹介するポイントに注意しましょう。
修理内容に応じた業者を選ぶ
屋根修理というのは使用している屋根材によって施工方法が異なるため、必ず専門の業者に依頼するようにしましょう。例えば瓦屋根なら瓦を専門に取り扱う工事店になりますし、トタン屋根なら金属屋根専門の修理業者や板金業者です。
大手の住宅リフォーム業者やハウスメーカーなどでも対応可能ですが、修理は下請けに依頼することになるため費用は割高です。修理費用をなるべく安くしたいなら、金属屋根の専門業者に修理を依頼するのが鉄則です。
トタン屋根の修理は悪質業者に狙われやすい
トタン屋根はパッと見ただけでサビや傷みが見つけやすいため、飛び込みの悪徳訪問業者に狙われやすくなります。時には100万円以上の高額な契約を強引に進めてくるため、注意が必要です。悪徳業者には次のような特徴があります。
- 地元でない業者が突然訪問してくる
- 見積内容が「一式」などで分かりにくい
- 見積もり時に屋根に登って調査しない
- 大幅な値引きをする
- 契約を急かす
こうした悪徳業者に引っかからないためには、とにかくその場で契約をしないことが重要。他の家族と相談しますなどと伝え、決して一人だけで判断しないようにしましょう。
複数の業者に見積もりを依頼して相場をチェック
トタン屋根の雨漏り修理業者を選ぶ際には、悪徳業者に引っかからないことはもちろんですが、必ず相見積もりを取って相場をチェックするようにしましょう。その場合は金属屋根専門でトタン屋根の雨漏り修理実績が豊富な業者がおすすめ。
そのような業者を3社前後ピックアップして、同じ修理内容で相見積もりを取ってください。業者によって単価や工事内容の違いを明らかにできますし、相場を知って不当に高額な業者に誤って依頼することも防げます。
トタン屋根からの雨漏りは応急処置をしたらプロに連絡しよう
トタン屋根から雨漏りが発生したら室内側からできる応急処置を行って、屋根に上がる応急処置や修理はプロに依頼しましょう。雨漏りを修理するには部分的な補修から全面的な塗装や葺き替えまでありますので、屋根の劣化具合や雨漏りの程度に応じた適切な施工方法を選んでください。