洗濯物を干す場所がない!庭がないけど家庭菜園を楽しみたい!という方はベランダ増設リフォームをしてみてはいかがでしょうか。最近は後付け可能なベランダユニット商品も多く販売されています。増設する際の注意点を踏まえて、快適に使えるベランダをリフォームしましょう。
ベランダを増設する前に…リフォーム時のポイントを解説

ベランダ増設に当たって、ベランダにおすすめの床材やメンテナンス方法などを知る必要があります。ベランダ増設のイメージを膨らませる参考にしてください。
ベランダとバルコニーはどう違う?
ベランダと似た意味の言葉に「バルコニー」があります。それぞれの違いはご存知ですか?また「テラス」や「ルーフバルコニー」などもベランダと間違えやすい言葉です。
業者との打ち合わせなどで間違わないためにも、これらの言葉の定義について覚えておきましょう。
名称 | 定義 |
ベランダ | 住宅の外に張り出たスペースで屋根が付いている。 |
バルコニー | 住宅の外に貼り出したスペースで屋根が付いていない。 一般的に2階以上にある部分を指す。 |
テラス | リビングやダイニングと続き間のように床の高さを同じにして 外や庭に張りだした部分。屋根がないことが多い。 |
ルーフバルコニー | 2階以上にある住宅の外に張り出たスペースで、 1階の屋根の上に設置されたもの。 |
ベランダとバルコニーの違いは、屋根が付いているかいないかで判断するのがポイント。今回は屋根付きのベランダについて解説していきます。
ベランダ本体におすすめの材質
金属製のベランダには主にスチール製とアルミ製の二種類があります。それぞれに特徴が異なりますので、どちらを選ぶべきか検討しましょう。
ベランダの材質 | 特徴 |
スチール製 | 安価だがサビが発生しやすい。 5年おきにサビ止めを塗り替える必要がある。 |
アルミ製 | 価格は高めだが軽量で耐久性が高い。 サビも発生しにくいためサビ止め塗装が必要なし。 |
上記のように増築するベランダの材質によって価格や耐久性が異なります。初期費用の安さだけでなく、長期的なコストも考えて選ぶようにしましょう。
ベランダを増設した場合のメンテナンス方法とは
ベランダを増設した際には、定期的なメンテナンスが必要。ベランダやバルコニーは屋外にあるため絶えず風雨にさらされています。材質によってはサビたり腐食することがあるため、安全性を保つうえでも適切なメンテナンスをしましょう。
ベランダの床面が防水加工されているものは、定期的に防水工事が必要になります。この防水がきちんと効いていないと雨漏りが発生する原因となることも。さらにベランダ本体が腐食することにも繋がりますので、ベランダ床の防水工事は忘れずにしましょう。
ベランダ防水の種類はおもに4つ。それぞれ㎡当たりの単価を記載しますので、ベランダ床の広さに応じて相場を見積もってみてください。
防水の種類 | 特徴 |
ウレタン防水 | ウレタン塗料を床に塗る防水方法。 5年ごとにトップコートを塗装する。 ㎡当たりの単価は3,000円~7,000円。 |
FRP防水 | 耐熱性や耐久性が高い防水用のプラスチック繊維を敷き詰める。 5年ごとにトップコートを再塗装する。 ㎡当たりの単価は4,000円~8,000円。 |
シート防水 | 塩化ビニルやゴム製といった伸縮性のあるシートを床に張る。 複雑な形のベランダ床には向いていない。 ㎡当たりの単価は2,500円~7,000円。 |
アスファルト防水 | アスファルトを入れた合繊繊維を床に張る工法。 20年はメンテナンスの必要がないほど耐久性がある。 ㎡当たりの単価は8,000円~10,000円。 |
床防水工事の次に大切なメンテナンスは手すり部分のサビ止めです。アルミ製の手すりにはこのメンテナンスが必要ありませんが、スチール製では短いものでは5年ごとのサビ止め塗装が必要。
手すりにサビ止め塗装をきちんと行っていないと、ボロボロになって破損することもあります。手すりに寄り掛かった際に転落するなんてことがないよう、スチール製の手すりにはキチンとサビ止め塗装をしましょう。
塗料の種類によっては再塗装までの期間が長いものもあります。種類ごとの特徴はこちらです。
塗料の種類 | 特徴 |
鉛系塗料 | 価格は安めだが、サビを落とすケレン作業が発生する。 |
エポキシ系塗料 | サビ止め効果が高い一方でケレン作業が必要になる。 |
サビ固め塗料 | サビ自体を固めるためケレン作業が不要。 価格は高めだが再塗装までの期間が長い。 |
ベランダの床に適した素材
ベランダの床の見た目や踏み心地を良くするには、ウッドデッキにするという方法があります。そのようなベランダの床に適したウッドデッキの素材について見ていきましょう。
ウッドデッキの材質には大きく分けて天然木と人工木の二種類があります。それぞれの特徴や木の種類はこちらです。
材質の種類 | 使用する材質 | 特徴 |
天然木 | レッドシダー レッドウッド イプレス | 自由な加工ができる 天然木の風合いが楽しめる 防腐対策、シロアリ対策が必要 |
人工樹脂 | 木の粉とポリプロピレン樹脂を混ぜたもの 合成木材・人工木と呼ばれる | サイズやカラーバリエーションが豊富 腐食せず耐久性が高い メンテナンスフリー 質感や見た目が安っぽくなる |
ベランダに使用する床には、やはり水に強く耐久性の高さが求められます。メンテナンスがほぼ必要ない人工樹脂のウッドデッキであれば安価で設置できますが、見た目や質感は本物の天然木に及びません。
価格は気にしないから本物の木を使いたいという方には、腐りにくい木材のレッドシダーやイプレスなどがおすすめです。
ベランダを安全に使うための柵の高さは?
ベランダは2階以上の場所に増設されることがほとんどなため、転落防止ための柵の高さや幅について考える必要があります。ベランダの柵の高さは、大人も子供も安全な、110㎝以上にしましょう。また柵の幅は子供の頭が間違って入らないよう、広すぎないデザインを選ぶことをおすすめします。
また手すりの近くには、子供がよじ登れるような空き箱やエアコンの室外機を置かないように注意してください。万が一設計上足掛かりになるようなものがある場合は、手すりの高さを高くするなど対策が必要です。
また子供が外を見られるようなデザインにするのも、ベランダからの転落防止策の一つ。先ほどもご説明しましたが、手すりが劣化していると寄り掛かった時に危険ですので手すりのメンテナンスは忘れずに行ってください。
ベランダ増設リフォームの費用相場は?

実際にベランダを設置するにはどの位の費用がかかるのでしょうか?さまざまな増設シチュエーションに応じた相場をご紹介していきます。
後付けベランダを設置
後付け可能なベランダを設置する場合は、ベランダのサイズや設置場所に応じて費用が変わります。ベランダを乗せる屋根などがない場合は、壁にしっかりと取り付けることでベランダを支えます。ただし重さに制限がかかる時は、地面に柱を立てて、地上からバルコニーを支える形になります。
工事内容 | 費用相場 |
小型タイプ(180×90㎝)のベランダを増設 | 35万~50万円 |
普通タイプ(180×180㎝)ベランダを増設 | 50万~80万円 |
1階にベランダを増設 | 20万~30万円 |
後付けベランダの増設費用相場は小型タイプで35万~50万円、普通タイプでは50万~80万円ほどかかります。ただし1階にベランダを増設する場合は、ベランダを支える補強工事が必要ないため20万~30万円と安く抑えられます。
1階の屋根部分にベランダを増築
1階の屋根の上にベランダを設置できる場合は、屋根を土台としてベランダを増設できます。ただし万が一のため屋根部分の補強は忘れずに行いましょう。また屋根の形状によってはベランダを設置できないこともありますので、施工業者に確認が必要です。
工事内容 | 費用相場 |
1階屋根部分にベランダを設置 | 25万~40万円 |
1階の屋根部分にベランダを増築する際の費用は25万~40万円前後。屋根が支えとなっているため、ベランダの床下に柱を入れなくても強度に問題がありません。もしベランダを乗せられるような屋根がある場合は、このような屋根置き式のベランダを設置することで費用を抑えられます。
駐車場の上にベランダを作る
自宅の前や横が駐車場になっているなら、駐車場の上を一面ベランダにすることで広々とした空間ができます。ベランダ下部が駐車場の屋根になりますので、車を雨や紫外線から守るれるのもメリットです。
ただし広い面積が必要になるため、1階の居室部分に日の光が入らなくなる可能性もありますのでご注意ください。
工事内容 | 費用相場 |
駐車場上にベランダを設置 | 100万~150万円 |
駐車場上にベランダを設置するには100万~150万円ほどかかります。広いベランダの床を支える頑丈な柱や、防水工事が必要になりますので金額は高めです。
ウッドデッキを設置
ベランダをウッドデッキにしたいという場合は、ウッドデッキの材質によって費用が変わってきます。
工事内容 | 費用相場(㎡当たり) |
人工木のウッドデッキを設置 | 8,000円~10,000円 |
天然木のウッドデッキを設置 | 6,000円~10,000円 |
ハードウッドのウッドデッキを設置 | 15,000円~20,000円 |
人工木のウッドデッキなら㎡当たりの単価が25,000円~3,000円ほどです。通常の天然木は6,000円~10,000円程と安いのですが耐久性や耐水性が低いのが難点。
そこでずっしりと重量感があり、耐久性抜群のハードウッドがおすすめです。㎡当たりの単価が15,000~20,000円と高いのですが、メンテナンスのことを考えるとそれほど高くありません。
1階部分を増築してその上にベランダを増築
部屋そのものを増やしたい、二世帯住宅にリフォームしたいという場合は、1階部分を増築してその上にベランダを設置する方法をおすすめします。居室を増築するということでコストはかかりますが、好みの広さやデザインを自由に選べるのがメリット。また屋根の上にベランダを乗せるリフォームなら、強度的にも安心できるのではないでしょうか?
工事内容 | 費用相場 |
1階を増築してベランダを設置 | 200万~300万円 |
1階を増築してベランダを設置する際の費用相場は200万~300万円前後。こちらは1階の増築費用も含みます。家族が増えて部屋を増やしたい、1階部分を広げたいという時には同時にベランダも設置してみては?
増築工事と一緒に外壁リフォームも行えば、増築部分やベランダの後付け感がなく、建物全体に統一感が出せそうです。
ベランダ増設オプション工事
これまでベランダ本体の増築工事にかかる費用を解説してきましたが、ベランダに付随する工事やオプション工事の費用についても見ていきましょう。ベランダの使用目的によって、以下のようなオプションを希望する方が多いようです。
工事内容 | 費用相場 |
ベランダ床の防水工事 | 3万~5万円 |
物干し設置費用 | 2万~5万円 |
ベランダの水はけが心配という方は3万~5万円程度で、床の防水工事をおすすめします。またベランダを洗濯物干しの場所として使いたい場合は物干しを忘れずに設置しましょう。物干しを設置する費用は2万~5万円前後です。
ベランダを増設する際に注意すべき点とは?

ベランダを後付けするという工事は、建築基準法では「増築工事」に当たります。そこで気を付けなければいけないポイントが発生しますのでベランダを増設する際はご注意ください。
建ぺい率や容積率の関係で確認申請が必要になることも
バルコニーを増設すると建物の建ぺい率や容積率が上がります。場合によっては確認申請が必要になることがあるので気を付けましょう。
確認申請には専門的な知識を要する書類を準備しなければいけないため、設計事務所やリフォーム業者に依頼するのがほとんど。一般的に10万~20万ほどの費用が手続きにかかることになります。
建物の建ぺい率と容積率は都市計画によって地域ごとに細かく決められています。その基準に応じて確認申請が必要となり、基準をオーバーしたままの状態では建築基準法違反に当たります。
建ぺい率と容積率については下記で詳しく説明しています。計算方法やベランダを増設する場合の注意点をご確認ください。
建ぺい率 | 容積率 | |
意味 | 敷地に対して建物の投影面積(建築面積) が占める割合のこと | 全ての階の床面積を合計した延べ床面積を 敷地面積で割ったもの |
計算 方法 | 建ぺい率(%)= 投影面積÷敷地面積 | 容積率(%)= 延べ床面積÷敷地面積 |
注意点 | ベランダが1m以上突き出していると 1mより先の部分が投影面積に入る | ベランダが2m以上突き出していると 2mより先の部分が延べ床面積に入る |
先ほどもご説明した通り、建ぺい率と容積率は建物が建っている場所によって異なります。確認申請が必要かどうかの判断が付かない場合は施工業者にお問い合せ下さい。
尚、ベランダ増設にあたり以下の条件を全て満たしている場合は確認申請は必要ありません。
- 増築面積が10㎡以下である
- 建物の所在地が防火地域・準防火地域に指定されていない
自分の住んでいる場所はたぶん大丈夫だろうと思っていても、念のため施工業者に確認することをおすすめします。
斜線制限を確認する
斜線制限とは周りの住宅への採光や風の通りといった環境を確保するためのもので、隣地や北側の境界線から発生する斜めの勾配のこと。建築基準法ではこの斜線制限を超えて建築してはいけないことになっています。とはいえ前出の建ぺい率や容積率に問題が無ければ、法的には斜線制限を気にする必要がありません。
しかしながらベランダを増設したことで、隣家への日当たりが悪くなった等のトラブルに発展する可能性も否定できません。なるべくなら隣家への日当たりに影響しない場所に設置するか、前もってベランダ増設の説明が必要なのではないでしょうか。
材質によってはこまめなメンテナンスが必要
ベランダの材質によっては、マメにメンテナンスをする必要があります。これまで解説した通り、スチール製のベランダはサビやすいという特徴上、5年に一度のサビ止め塗装が必要。また床や手すりをウッドデッキにした場合、天然木への防腐処理や防虫処理も欠かせません。
さらにべてのベランダ床に対しては防水対策が必須となります。この防水処理を適切に行わないと雨漏りや床のコンクリートひび割れなどが発生する恐れが。雨漏りを放っておくと、建物の構造自体に重大な劣化を及ぼすこともあるため、防水工事が欠かせません。
ベランダは少なくとも10年に一度はメンテナンスや修理が必要とされています。このメンテナンス周期を早めるか遅らせるかはあなたのメンテナンス次第。なるべく長くベランダを安全できれいな状態を保つためには状態に合わせたメンテナンスをしましょう。
ベランダ柵は風通しや目隠しのことも考えて選ぶ
ベランダの柵は落下防止といった安全上の観点からだけでなく、風通しのよさや目隠しになるか?ということも考えて選びましょう。ベランダは家の外に設置するため、特に外を通る人の目にさらされやすい部分。洗濯物を見られたくない、ベランダでくつろぐのに視線を感じたくないという方は、目隠しにもなる手すりがおすすめです。
またベランダは洗濯物を乾かす場所として使用している人も多いため、日光や風を通す必要があります。ベランダの柵には適度に目隠ししながら、日の光や風を通してくれるデザインがたくさんあります。そういった柵を選ぶと、防犯上安心かつ使い勝手の良いベランダにリフォームできるでしょう。
使用用途を考えたベランダを作る
ベランダをどのように使いたいかを考えておくと、その目的に合ったベランダを増設できます。というのも使用用途によってベランダをどう作るかが変わってくるため。こちらはベランダの使用用途に応じた注意点です。
ベランダの使用目的 | 注意点 |
洗濯物を干す | 屋根があり日の当たる場所におすすめ。 物干しなどを設置すると使い勝手が良くなる。 |
園芸を楽しむ | ベランダの向きによって並べ方を工夫する。 土を入れたプランターは重いためベランダの重量制限を確認。 雨や水やりで土が流れるため排水溝を掃除しやすくする。 |
収納を増やす | 荷物を置きすぎると乱雑になる。 小型物置などを活用して通路を確保。 |
ペットの遊び場 | 鳴き声が近隣に響かないか? 直射日光や風通しはあるか? エアコンの室外機は置かないようにする。 |
くつろぎの場所 | 日当たりをやプライバシー保護を重視する。 エクステリア用のイスやテーブルを設置する。 |
ベランダをどんな目的で使いたいかで、重要視するポイントが変わってきます。また業者に依頼する際も、目的がはっきりしている方が良いでしょう。使い勝手の良いベランダは使用頻度が増えてその分メンテナンスもしっかりできるのではないでしょうか。
構造上安定性に問題がないかをチェック
ベランダを設置するのは2階以上になることが多いため、安定性や強度に問題がないかをキチンとチェックしましょう。特に1階の屋根にベランダを増設する場合は建物の構造に影響を及ぼすことも考えられるため、なるべくなら自宅を設計施工した業者と相談することが望ましいです。
外壁デザインとのバランスを考える
後付けのベランダを増設する場合は、外壁の色やデザインとの相性が大切。選び方によっては外壁や屋根とのバランスが悪くなることも考えられるため、使い勝手や機能の他にもデザインや外壁とのバランスも考慮に入れましょう。
バランスの悪さを解消するためには、外壁塗装や外壁張り替えのタイミングと同じ時期にベランダを設置する方法があります。同じ色で塗装をしてもらえれば、見た目のバランスが良く統一感も出るでしょう。
マンションでの増設は禁止の場合がある
マンションでベランダを増設・リフォームする場合は、そもそも工事が禁止されていることがあるので注意が必要です。マンションではベランダやバルコニーは共有部分として扱われているため、リフォーム出来ない物件があります。
ベランダやバルコニーがないマンションで新しく設置したいという方は、マンションの管理規を確認するか管理組合に問い合わせてみましょう。もしベランダ増設にOKが出ても、隣や上下階の住人に工事音で迷惑をかけないよう、あらかじめ挨拶しておくと騒音トラブルを回避できます。
注意するポイントを踏まえてベランダ増設リフォームを成功させよう
洗濯物を干したりガーデニングができるベランダは、増設リフォームをするととても便利になります。メンテナンスしやすい材質を選び、防犯性が高く風通しの良い柵を取り付ければ使い勝手も良くなるはず。建築確認や近隣への日当たりなどの注意点に配慮しながら使用目的に応じたベランダを増設しましょう。